『リボルバー』スペシャル・エディション
ビートルズ『リボルバー』スペシャル・エディションが遂に発売!
[CD 4] オリジナル・モノ・マスター
1968年の2枚組アルバム『ザ・ビートルズ』まではステレオ版とモノ版の2種類のLPがリリースされていた。
ビートルズとジョージ・マーティンはモノ・ミックスを優先しており、モノのミキシング時には4人のメンバーも立ち会う事が多かったという。
それぞれ別々に行われたモノとステレオの作成により、曲によっては著しい違いが生じる事もあった。
『リボルバー』スペシャル・エディション「CD4」に収録されているモノ・ミックスは、オリジナル・アナログ・マスター・テープから新たにマスタリングされている。
1. タックスマン [2:41]
レコーディングは66年4月21日と22日。リンゴのドラム、ポールのベース、ジョージのリズム・ギターのベーシック・トラックに、リンゴのタンバリン、ポールのリード・ギター・ソロ、ジョージのリード・ギター・リフをオーバーダビング。
その後、ジョージのリード・ボーカルとポールのハーモニーをダブル・トラックで追加してリダクションし、リンゴのカウベル、ジョンとポールのバックコーラスをダビングして完成した(CD3-2)。
後日、エンディングをポールのギター・ソロのフェイドアウトにする事が決まったため、5月16日にジョージによる最後の「me」のボーカルを追加レコーディングしている。
ミキシングはモノとステレオ共に6月21日に行われた。
ステレオ・ミックスではカウベルが2回目のヴァースの終わり頃に登場するが、モノ・ミックスはカウベルが2回目のヴァースの途中から登場する。
2. エリナー・リグビー [2:09]
66年4月28日にチェロ2本、ヴィオラ2本、ヴァイオリン4本の編成でバッキングのレコーディングが行われ、翌日にポール、ジョン、ジョージによるボーカルを録音している。
この時、ポールはサビのボーカルをダブル・トラックで歌っていたが、結局2つ目のボーカルは納得いくものが録れなかったためボツになりADT処理を施す事になった。
最後のポールのバック・コーラスは6月22に追加でレコーディングされ、その日のうちにモノとテレオのミキシングが行われている。
モノ・ミックスはステレオ・ミックスと比べるとサビのボーカルのADT効果が強い、というか少し遠くから聴こえる感じ。
3. アイム・オンリー・スリーピング [3:02]
66年4月27日と29日にリンゴのドラム、ポールのベース、ジョンのアコースティックギターのベーシック・トラックをレコーディング後に、ジョンのリード・ボーカル、ポールとジョージのハーモニーをオーバーダビングしている。
その後、ガイドとなるジョージのリード・ギターを普通に録音してリダクション。
5月5日にジョージによってガイド・ギターと同じメロディをテープを逆向きにして録音された。この逆再生ギターを2度録音して完成。
ステレオ・ミックスは5月20日、モノ・ミックスは6月6日にミキシングされた。
モノ・ミックスには1分24秒あたりにステレオ・ミックスには無い逆再生リード・ギターが入っている。
それとモノ・ミックスの方が逆再生リード・ギター・ソロの音色がADTのような丸みがある。
4. ラヴ・ユー・トゥー [3:07]
66年4月11日にジョージのシタール、ポールのタンプーラ、アニル・パグワットのタブラという編成でベーシック・トラックが作成され、そこにジョージによるリード・ボーカルとアコースティックギターのダブル・トラックをオーバーダビングしている。 4月13日にリダクションしてジョージのファズギターとリンゴのタンバリンを追加(CD2-8)、最後にジョージのオープニングのシタールのイントロを入れて完成。 その日のうちにモノ・ミックスが作成された。ステレオ・ミックスが作られたのは2ヶ月以上あとの6月21日。
5. ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア [2:25]
66年6月16日、ベーシック・トラックがリンゴのドラム、ポールのリズム・ギター、ジョージのリード・ギターの編成でレコーディング後、ポールのベースと、ジョン、ポール、ジョージのハーモニーのダブル・トラックをオーバーダビングする。
翌日、リダクションしてポールのダブルトラックのリード・ボーカルを追加レコーディング。その際、ジョージの2本目のリード・ギターも入れられて完成。
6月21日にモノとステレオのミキシングが行われた。
ステレオ・ミックスに比べモノ・ミックスは楽器の演奏がやや大きめで、エンディングの指パッチンが殆ど聴こえない。
6. イエロー・サブマリン [2:41]
レコーディングは66年5月26日にリンゴのドラム、ポールのベース、ジョンのアコースティックギター、ジョージのタンバリンという編成で録られ、そこにリンゴのリード・ボーカルと、ジョン、ポール、ジョージによるダブル・トラックのサビのハーモニーがオーバーダビングされた(CD3-12)。
リダクション後、6月1日に様々な効果音を追加、6月3日にモノ・ミックスが作られた。
ステレオ・ミックスは6月22日に作られている。
モノ・ミックスは冒頭のアコースティックギターの1音が入っているのと、ジョンのオウム返しがステレオ・ミックスより1小節早く登場する。モノはエンディングがほんの少し長い。
7. シー・セッド・シー・セッド [2:38]
世界ツアーが始まる3日前の66年6月21日にレコーディングされ、翌日にモノとステレオがミックスされている。
ベーシック・トラックは、リンゴのドラム、ポールのベース、ジョンのリズム・ギター、ジョージのリード・ギターという編成(CD3-17)。
そこにジョンのリード・ボーカルとジョージのハーモニーをダブル・トラックでオーバーダビングする。
リダクション後、2本目のジョージのリード・ギターとジョンのハモンドオルガンを追加して完成。
ステレオ・ミックスでは殆ど聴こえない2本目のリード・ギターとオルガンが大きめに聴こえる。
8. グッド・デイ・サンシャイン [2:12]
66年6月8日と9日の2日間でレコーディングされ、6月22日にモノとステレオがミキシングされている。
ポールのピアノ、ジョージのベース、リンゴのドラム、ジョンのタンバリンのベーシックトラックが録音され、ポールのリード・ボーカルと、ジョン、ポール、ジョージによるサビのハーモニーがオーバーダビングされた。
さらにジョージ・マーティンのピアノ・ソロとリンゴによるシンバル、バスドラ、スネア、ポールのピアノを追加、エンディングの3人のコーラスもダブル・トラックでダビングされて完成する。
モノ・ミックスはエンディングにステレオには無いバスドラが4音程入っている。
9. アンド・ユア・バード・キャン・シング [2:02]
66年4月26日にレコーディングされ、5月12日に米国編集アルバム『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』用にミキシングされている。
『リボルバー』用のステレオ・ミックスは5月20日、モノ・ミックスは6月8日に行われた。
バッキングはリンゴのドラム、ジョンのリズム・ギター、ジョージとポールのリード・ギター・リフが演奏され、ジョンのリード・ボーカル、ポールのハーモニー、ジョージのコーラスをオーバーダビング。
最後にポールのベースとリンゴのタンバリン、シンバル、ハイハットを追加して完成。
モノ・ミックスは追加のパーカッションが小さ目に聴こえ、エンディングが自然終止っぽい感じ。
10. フォー・ノー・ワン [2:02]
レコーディングは66年5月9日、ポールのピアノとリンゴのドラムの演奏が録られたベーシック・トラックに、ポールのクラヴィコードとリンゴのマラカスをオーバーダビングした(CD3-9)。 5月16日にポールのリード・ボーカルをオーバーダビング後にリダクション、ポールのベースとリンゴのタンバリンが追加された。 5月19日にアラン・シヴィルのフレンチ・ホルンが追加され、6月21日にモノとステレオのミキシングが行われている。
11. ドクター・ロバート [2:16]
レコーディングは66年4月17日にジョンのリズム・ギター、リンゴのドラム、ジョージのマラカスという編成でベーシック・トラックが録られ、そこにポールのベースとジョンのハーモニウムをオーバーダビング。
4月19日にジョンのリード・ボーカル、ポールのハーモニー、ジョージのリード・ギター、ジョン、ポール、ジョージによるミドルのコーラスを追加して完成(CD2-12)。
ミドルのコーラスはダブル・トラックで録られた。
5月12日に米国編集アルバム『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』用にミキシングされている。
『リボルバー』用のステレオ・ミックスは5月20日、モノ・ミックスは6月21日に作成されている。
モノ・ミックスはボーカルが少し小さめ(リード・ギター以外の演奏が大きめ)にミックスされている。
12. アイ・ウォント・テル・ユー [2:31]
レコーディングは66年6月2日 リンゴのドラム、ジョージのリード・ギター、ポールのピアノ、ジョンのタンバリンという編成のベーシックトラックに、ジョージのリード・ボーカルと、ジョンとポールのハーモニーがダブル・トラックでオーバーダビングされている。
翌日リダクションし、ポールのベースとリンゴのマラカス、最後の4人の手拍子を追加して完成。
その日のうちにモノ・ミックスが作られた。ステレオ・ミックスが作られたのは6月21日。
モノ・ミックスはベースやバスドラなど重低音が目立つ。
13. ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ [2:38]
レコーディングは66年4月8日と11日にリンゴのドラム、ポールのベース、ジョンのリズム・ギター、ジョージのリード・ギターのベーシック・トラックがレコーディングされ、そこにポールのリード・ボーカルとジョージのファズ・ギターをオーバーダビングしている。
1ヶ月以上たった5月18日に3本のトランペットと2本のテナー・サックスをオーバーダビングした。その際、ポールのボーカルとジョージのファズ・ギターは消去されている(CD2-5)。
その後リダクションし、ポールのダブル・トラックのリード・ボーカルとジョージのタンバリンが録音された。
エンディングにはジョージとポールのリード・ギターとジョンのオルガンが追加されたため、その部分ではボーカルはシングルになり、タンバリンも聴こえない。
モノ・ミックスは6月20日、ステレオ・ミックスは6月22日に作成された。
モノ・ミックスはエンディングが長く、ステレオには無いポールのアドリブを聴くことができる。
14. トゥモロー・ネバー・ノウズ [2:57]
66年4月6日にリンゴのドラム、ポールのベースのベーシック・トラックが録られ、ジョンのレスリー・スピーカーを通したリード・ボーカルとリンゴのタンバリンを追加している(ボーカルとタンバリンは後に削除)。
翌日、4人が自宅で作ってきた様々なテープ・ループをジョージ・マーティンとジョフ・エメリックが選んでオーバーダビングする。
4月22日にジョンのレスリーを通したリード・ボーカルをジョージのタンプーラと一緒に再録音。
それとジョンがオルガンを弾きながら歌った通常ボーカルとリンゴのタンバリン、ジョージの逆再生ギター・ソロが追加された。
モノ・ミックスは4月27日、ステレオ・ミックスは6月22日に作成された。
モノ・ミックスは逆再生ギターがADTのダブルトラックになっていて、フィードバック音はカットされている。
[CD 5] リボルバー EP
66年6月10日にアルバム『リボルバー』の先行シングルとしてリリースされた「ペイパー・バック・ライター」と「レイン」。
最新デミックス技術も使われているニュー・ステレオ・ミックスとオリジナル・モノ・ミックスを収録。
モノ・ミックスはオリジナル・アナログ・マスター・テープから新たにマスタリングされている。
1. ペイパー・バック・ライター(ニュー・ステレオ・ミックス) [2:18]
従来のステレオ・ミックスではポールのリード・ボーカルと、ジョンとジョージのコーラスは中央、ポールのベースと、ジョンとジョージのビーチ・ボーイズ風裏声コーラス、サビの最後に微かに聴こえるジョージのギターは右、リンゴのドラム、ポールとジョンのギター、ジョージのタンバリンが左という配置。
新ミックスでは、ダブルトラックのリード・ボーカルとコーラスは中央寄りの左右から聴こえる。ビーチ・ボーイズ風コーラスは右。
ドラムとタンバリンが中央やや左、ベースが中央、ポールとジョンのギターが中央やや右、サビの終わりのジョージのギターが左から聴こえる。
ボーカルが鮮明になり、バスドラとスネアがすごく迫力を増している。
2016年の『1』では従来のステレオ・ミックスを中央よりにした新・ミックスを聴けるが、ここまで激変していないかった。
デミックス技術によりリンゴのドラムとジョージのタンバリンが中央やや左、ポールとジョンのギターが中央やや右に分離されている。 また、ポールのベースは中央、ジョンとジョージのビーチ・ボーイズ風コーラスが右、サビの最後に小さく聴こえるジョージのギターは左に分離されている。
2. レイン(ニュー・ステレオ・ミックス) [2:59]
オリジナル・ステレオ・ミックスは、ジョンのリード・ボーカルは左、ジョン、ポール、ジョージのバックコーラスとサビのポールの高音ハーモニーは右、タンバリンも右、ドラム、ギター、ベースは中央という配置だった。
新ステレオ・ミックスは、これまで以上にボーカル、バッキングが鮮明になった。
ジョンのリード・ボーカルは中央で生々しく聴こえる。3人のバックコーラスは左、サビのジョンのボーカルとポールの高音ハーモニーは中央やや左から聴こえる。
ポールのベースが中央、迫力あるリンゴのドラムが中央やや左、ポールとジョンのギターが中央やや右、リンゴのタンバリンは右から聴こえる。
エンディングのジョンの逆再生のボーカルは左に配置された。
これまでは銅鑼のように響いていたサビのギターが鮮明に聴こえるようになっている。
最新技術によりドラムを中央やや左、ギターを中央やや右に分離、バックコーラス/ハーモニーをやや左、タンバリンを右に分離している。
因みに2016年の『1+』ではヴァースのボーカルを中央よりにした初のリミックスが聴ける。
3. ペイパー・バック・ライター(オリジナル・モノ・マスター) [2:26]
レコーディングは66年4月13日にリンゴのドラム、ジョンとポールのギター、ジョージのタンバリンのベーシック・トラック(CD2-9)が録られ、ポールのリード・ボーカルと、ジョンとジョージのサビのコーラスをダブル・トラックでダビングしている。
4月14日にポールのベースと、ジョンとジョージの裏声のコーラスを追加している。この時ジョージはサビの終わりのギターも追加で弾いている。
その日のうちにモノ・ミックスが作成された。
ステレオ・ミックスはクリスマス用の編集アルバム『オールディーズ』に収録するため、66年10月31日に作成された。
モノ・ミックスはステレオ・ミックスと比べると4月14日に録音されたベースとバックコーラスのトラックが大きめなのと、途中2回登場するフェイドアウトのエコーの掛け方が違う。
4. レイン(オリジナル・モノ・マスター) [2:59]
レコーディングは66年4月14日、テープ速度を早く回しながらリンゴのドラム、ジョンとポールのギターのベーシック・トラックを録音し、同じテンポでポールのベースをオーバーダビングしている(CD2-10)。
その後、通常のテープ速度でジョンのリード・ボーカルをダビングしリダクション。
16日にジョン、ポール、ジョージによるコーラスと、リンゴのタンバリンを追加。エンディングにジョンの逆再生ボーカルも追加して完成する。
同日にモノ・ミックスが作られている。
ステレオ・ミックスは70年リリースの米国編集アルバム『ヘイ・ジュード』に収録するため、69年12月2日に作成された。