『レット・イット・ビー』50周年記念

Let It Be 50周年記念

ビートルズ『レット・イット・ビー』50周年記念スペシャル・エディションが遂に発売!



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 遂にビートルズの最後のオリジナルアルバム 『レット・イット・ビー』の50周年記念スペシャル・エディションが発売された!
ジャイルズ・マーティンによる最新のリミックス、アップル・スタジオにおけるレコーディングのアウトテイク、トゥイッケナム・フィルムスタジオとアップル・スタジオでのリハーサル、ジャムセッション、 そしてグリン・ジョンズがミキシングを行った未発表アルバムの『ゲット・バック』がCD5枚に収録されている。
本当に楽しみなのはピーター・ジャクソン監督のドキュメント映像『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』だが、この50周年記念CDも実に貴重な音源である。 1ヶ月にわたるセッションからアルバム発売まで紆余曲折を経て『レット・イット・ビー』としてリリース。
数奇な運命を辿った『レット・イット・ビー』。 まず、簡単に当時の経緯をおさらいしてみよう。

“ゲット・バック・セッション”からアルバム『レット・イット・ビー』発表まで

“ホワイトアルバム・セッション”が終わった2か月後、ポールが提案した「原点に戻ってオーバーダビング無し、一発録りのスタジオライブのレコードを作る」に沿って1969年1月2日から始まったトゥイッケナム・フィルム・スタジオでの“ゲット・バック・セッション”。 映像撮影が同時に行われる中、トゥイッケナムは寒く居心地の悪い場所で、ジョージはスタジオを飛び出してしまう。 サヴィル・ロウにあるアップル本社にEMIスタジオからレコーディング機材を持ち込みスタジオを急造。1月21日からジョージも合流したレコーディングを開始。30日には歴史的な屋上でのライブ・パフォーマンスを慣行する。 1ヶ月続いたセッションは膨大な音源と映像を残し1月31日に終了した。
その約2か月後の4月11日には19枚目のシングル「ゲット・バック/ドント・レット・ミー・ダウン」が発表される。 その後、グリン・ジョンズによってアルバム『ゲット・バック』のミキシングが5月28日に完成するものの、散漫な内容からメンバー4人から却下されてしまう。 ビートルズは新アルバムのレコーディングに入り、9月26日には最新アルバム『アビー・ロード』が発表されるのであった。

ジョンズの『ゲット・バック』。

ゲット・バック

年末に“ゲット・バック・セッション”の映像が映画として公開される事が決まり、翌70年1月3日にジョンを除くメンバー3人によって「アイ・ミー・マイン」がレコーディングされた。 ジョンズは映画のシーンに登場する「アクロス・ザ・ユニヴァース」と「アイ・ミー・マイン」を「テディ・ボーイ」と差し替えてアルバム『ゲット・バック』を新たに編集するが、ポール、ジョージは気に入ったものの発売は延期されてしまう。 結局、ジョンズのアルバム『ゲット・バック』を引き継いだアメリカのプロデューサー、フィル・スペクターは、3月~4月にいくつかレコーディングを追加してアルバムとして完成させる。 スペクターの起用を聞かされていなかったポールは、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の過剰なアレンジに猛抗議するも、5月8日に『レット・イット・ビー』というタイトルでアルバムは発表されるのであった。
出来上がったレコードを最初に聴いたジョージ・マーティンは愕然としたという。 そこに収録された中の数曲は、当初のコンセプト「オーバーダビング無し、一発録りのスタジオライブのレコード」からかけ離れたものになっていた。
しかし賛否両論あるものの、限られた時間の中でアルバムとしてまとめ上げたスペクターの手腕はやはり評価されるべきであろう。


『レット・イット・ビー』関連音源

1ヶ月間続いたリハーサルやレコーディングなどの膨大な音源が残された“ゲット・バック・セッション”。 70年5月8日にビートルズ最後のアルバム『レット・イット・ビー』として発表されるが、その後、セッション時の別バージョンや未発表曲が96年10月リリースの『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録される。 更に、当初のコンセプト「オーバーダビング無し、一発録りのスタジオライブのレコード」に可能な限り近づけたとされる『レット・イット・ビー...ネイキッド』が2003年11月にリリースされている。


[CD 1] レット・イット・ビー ニュー・ステレオ・ミックス

フィル・スペクターがプロデュースしたアルバムをジョージ・マーティンの息子ジャイルズ・マーティンが新たにリミックスした『レット・イット・ビー』。 楽器やボーカルの配置は、一部を除き基本的にスペクターのミックスを忠実に再現している。 ウォール・オブ・サウンドと言われるオーケストラは若干ソフト、繊細になっている(気がする)。



1. トゥ・オブ・アス   [3:36]

69年1月31日のアップルセッションの最終日、この曲の最終テイク。スペクターは冒頭に1月21日の会話を追加している。 このジャイルズ・マーティンのリミックス版は、センターだったリードボーカルがポールはやや左、ジョンはやや右に配置されている。 2人のデュエットのAメロ最後の「We're Goin' Home」では、ジョンとポールの高音パートと低音パートが入れ替わって歌われている事がわかる。


2. ディグ・ア・ポニー   [3:54]

69年1月30日に行われた“ルーフトップコンサート”で演奏されたテイク。スペクターはエレクトリックピアノのパートをカット。 『レット・イット・ビー...ネイキッド』では同一テイクでビリー・プレストンのフェンダー・ローズが聴ける。 ジャイルズ・マーティンのリミックス版は、『...ネイキッド』以上にボーカルが鮮明に聴こえ、ベースがぶんぶん鳴っている。


3. アクロス・ザ・ユニヴァース   [3:48]

この曲は68年2月4日と8日にビートルズによってレコーディングされたが結局発表されなかった。 69年12月、世界自然保護基金のチャリティ・アルバムに収録されたものは、テープスピードが上げられ、鳥の羽ばたきのSEがつけられていた。 スペクターは鳥の羽ばたきとコーラスをカットし、テープスピードを遅くしてキーを半音下げている。そして、70年4月1日にレコーディングしたストリングス、ハープ、ブラス、14人編成の女性コーラスを追加している。
このジャイルズ・マーティンのリミックス版は、オーケストラの演奏が広がって聴こえる。何よりジョンの弾くアコースティックギターがリアルで生々しい音に驚く。


4. アイ・ミー・マイン   [2:25]

この曲が映画で使用される事がわかり、70年1月3日EMIスタジオにてジョージ、ポール、リンゴの3人でレコーディングされた。 グリン・ジョンズによりミキシングされたが、その後、スペクターによって「アクロス・ザ・ユニヴァース」の追加レコーディングと同日にオーケストラと女性コーラスが録られた。 また、編集で曲をリピートさせて、1分33秒から2分25秒に引き伸ばしている。 ジャイルズ・マーティンのリミックス版はジョージのボーカルが耳元で歌っているかのようだ。


5. ディグ・イット   [0:50]

スペクターは、グリン・ジョンズが4分9秒に編集した69年1月26日のジャム・セッションから一部分を取り出し49秒に短縮させた。 最後のジョンのセリフは1月24日のジャム・セッション(CD2-3)の時のものだが、ジョンズ版が編集したディグ・イット(CD4-11)にも引用されている。


6. レット・イット・ビー   [4:03]

69年1月31日のテイク27(CD4-12)を元に、翌年1月4日に録音されたジョージ・マーティン編曲のオーケストラとリンゴの追加ドラムを強めにミックスしている。 また、同日に録音されたジョージのリード・ギターをフィーチャーしている。(マーティンのシングル盤では69年4月30日に録音したジョージのリード・ギターを使っている)
スペクターは2回目以降のバックコーラスをオルガン、ブラスに変え、リンゴのハイハットには深いエコーを施した。 また、後半のサビをリピートさせ、曲の長さを4分3秒に伸ばしている。
ジャイルズ・マーティンのリミックスはポールのボーカルが非常に鮮明で、オーケストラはソフトである。


7. マギー・メイ   [0:40]

69年1月24日の「トゥ・オブ・アス」セッションで即興的に歌われ、グリン・ジョンズの『ゲット・バック』にも収録予定だった。 スペクターのミックスはジョンズのテイク(CD4-10)と同じものでボーカルや楽器の位置が僅かに違う。
ジャイルズ・マーティンのリミックスはジョンのボーカルが中央やや左、ポールのボーカルが中央やや右になっている。リンゴのバスドラが効いている。


8. アイヴ・ガッタ・フィーリング   [3:37]

69年1月30日に行われた“ルーフトップコンサート”で2回演奏されたうち、1回目の演奏テイク。 ジョンとポールの別々の曲を1つにした作品で、1月2日の“ゲット・バック・セッション”の初日から既に合体していた。 『レット・イット・ビー...ネイキッド』では“ルーフトップコンサート”の1回目と2回目を編集している。 ジョンとポールが同時に歌う部分が、スペクター版は完全に左右に振り分けられていたが、ジャイルズ・マーティンのリミックスはそれぞれ少しだけ中央よりになっている。


9. ワン・アフター・909   [2:54]

グリン・ジョンズ版と同じ69年1月30日の“ルーフトップコンサート”で演奏されたテイク。 スペクターは冒頭の会話をカットし、ジョンとポールのボーカルを中央に配置。演奏が終わった後のジョンのダニー・ボーイを歌う部分はそのまま残された。
ジャイルズ・マーティンのリミックスは各楽器が鮮明になっている。


10. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード   [3:37]

当初、マスターテイクは69年1月31日の最終テイク(CD2-13)であったが、スペクターはジョンズ版と同じ、1月26日のテイク8(CD4-13)を使用した。 スペクターは70年4月1日にレコーディングしたストリングス、ハープ、ブラス、14人編成の女性コーラスをオーバーダビングしている。 オリジナルの曲想から激変したアレンジを聴いたポールは最後までこのバージョンのリリースを反対していた。
スペクター版はストリングスとブラスが左右に振り分けられていたが、ジャイルズ・マーティンのリミックスは少し中央よりになっている。 また、女性コーラスが左に移動し、ポールのボーカルとピアノがやや大きめに聴こえる。


11. フォー・ユー・ブルー   [2:32]

グリン・ジョンズ版と同じ69年1月25日のアップル・スタジオにおけるテイク6。 ジョンはラップ・スティール・ギター、ポールはホンキートンク風のタックピアノを弾いている。 1年後の1月8日、オリンピック・サウンド・スタジオでジョージのボーカルが追加レコーディングされた。 スペクターはこのアドリブも入ったジョージの追加ボーカルを使ってミックスしている。
ジャイルズ・マーティンのリミックスは冒頭のジョンの会話がはっきり聴こえ、各楽器の音が非常にクリアになっている。 また、スペクター版では左右に振り分けられていたスティール・ギターとピアノがやや中央に寄せられている。


12. ゲット・バック   [3:08]

69年1月27日のアップル・スタジオにおけるレコーディング。スペクターはジョンズと同じテイク11を使っている。 ジョンズがミックスしたシングル・バージョン(CD4-6)と違い、エンディングを再演奏する編集は行っていない。 また、ライブ感を出すために冒頭と最後に“ルーフトップコンサート”でのジョンとポールの会話を付け加えている。
ジャイルズ・マーティンのリミックスはリンゴのドラムが迫力を増しているように聴こえる。 また、ジョンがコーラスを歌う部分のボーカルはポールはやや左、ジョンはやや右に配置されている。



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