レット・イット・ビー
Let It Be
(アルバム)
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さようならビートルズ!!哀愁感漂うビートルズ最後の音と映像の世界
前のアルバムプロデュース:フィル・スペクター
Apple Revel 1970.5.8
曲目リスト
ヒストリー
69年初頭、映画撮影用のトゥイッケナム・フィルム・スタジオに録音機材を持ち込んだレコーディングは一旦中断したものの、旧友ビリー・プレストンの参加もありアップル・ビルに場所を移し継続される。 しかし完成したライブ・アルバム『ゲット・バック』はその散漫な内容ゆえに発表される事はなかった。
新マネージャーの決定を巡りポールと他の3人が対立、ジョンはビートルズに興味を失っていた。 オノ・ヨーコはそんなジョンをビートルズのメンバーから引き離そうとしていた。 アルバム『アビイ・ロード』発表直後の9月末、関係者のミーティングでついにジョンが「俺は辞めるぜ!」と発言、悪化する事態は決定的になる。 そして70年4月10日、ポールのグループ脱退表明により、ザ・ビートルズとしての活動に終止符が打たれた。
その後、棚上げされていた『ゲット・バック』のセッション・テープはフィル・スペクターのプロデュースにより5月8日に『レット・イット・ビー』としてようやく陽の目を見る事になる。 彼らの“解散”までの姿を生々しく記録した映画『レット・イット・ビー』も5月20日に公開され、この歴史的グループの終焉を白日のもとにさらす事となった。
衝撃的な解散から半世紀。今もビートルズを超えるロック・バンドは出現していない。 ビートルズが活動した8年間の軌跡は20世紀のポップシーンの伝説となり、彼らが残した音楽・映像・ライフスタイルは今なお全世界の人々の魂を揺さぶり続けていくのである。
アルバム解説
ビートルズ最後のアルバムセッションの『アビイ・ロード』が発売された5ヶ月後の1970年5月8日に映画のサントラとして発表されたビートルズの最後のオリジナルアルバム。
過剰なオーバー・ダビングを行わないライブ・アルバムを制作するというコンセプトで計画された“ゲット・バック・セッション”のテープとフィルムは長い間棚上げされていたが、ジョンとジョージの要請でアメリカの腕利きプロデューサーのフィル・スペクターに託され、ようやくアルバムとして完成する。 大胆なオーケストレーションを得意とするスペクターのプロデュースにより、皮肉にも当初のコンセプトとは真逆のアレンジとなった。 ポールは「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」に施された過剰なストリングスと女性コーラスのアレンジについて強い不満を持ち、アルバム発売の中止を求めた経緯がある。 ジョンとジョージは短期間で仕上げたスペクターの仕事を評価しているが、本アルバムのクオリティは一般的にあまり高く評価されていない。
2003年10月にジョージ・マーティンたちによるプロデュースで『レット・イット・ビー...ネイキッド』がリリースされているが、こちらも是非チェックしてほしい。 賛否両論あるが、きっと「アクロス・ザ・ユニバース」や「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」が放つ原石の輝きを感じる事だろう。
冒頭ジョンの「聾者協会のチャールズ・ホールトリーの“I Dig A Pygmy(私はピグミー族)”です。場面1、ドリスはカラス麦を手に入れます」という会話で始まるポールが書いたポップなフォークソング。 アコースティックギターと口笛はジョンとポールによるもの。ベースラインはジョージがエレキギターで弾いている。
何故かぎこちなさを感じさせるポールとジョンのコーラス、サビの悲壮感漂うポールのソロ・パートなど、当時の2人の微妙な関係を感じずにはいられない演奏である。 但し、2003年の『レット・イット・ビー...ネイキッド』のミックスは2人の息の合ったボーカルが聴ける。こんなに印象が違って聴こえるのか・・ミキシングって大事ですね。
ジョンがヨーコへのメッセージソングとして書いた曲。 69年1月30日にアップル・ビルの屋上で行われたルーフトップ・コンサートのライヴ録音。
冒頭、「いいね! OK! ワン、ツー、スリー… 待って、ちょっとタンマ… ワン、ツー、スリー」というリンゴの声が聞こえる。 「知っているものを何でもマネしていいのさ」という一節は、当時ビートルズを真似していたローリング・ストーンズを皮肉ったもの。
ジョンはこの曲を「適当に作ったゴミ」と語っていたが、ライブ感たっぷりな乗りのいいロック曲である。 貫禄のリードボーカルはジョン、サビの高音のコーラスはポール。 演奏後、「ありがとう、ブラザー・・・寒くてコードが弾けない」というジョンの呟きが聴こえる。
アコースティックギターを弾きながら歌われるジョンが作った非常に美しい曲。
シンプルだが超然とした歌詞はインド哲学や松尾芭蕉からインスパイアされたとも言われている。
「
「レディ・マドンナ」と同時期の68年2月初旬に録音されているが、アレンジが気に入らなかったジョンはシングル曲としての完成を断念している。 この時ポールの思いつきで、スタジオ前にいた2人の女性ファンのコーラスを加えている。
約2年後の69年末には鳥のさえずりと羽ばたきの効果音を追加、ピッチを早くして半音を上げて「世界野生動物基金」のチャリティアルバム「No One's Gonna Change Our World」に収録された。 通称バード・バージョンと呼ばれるこのミックスは現在「パスト・マスターズ vol.2」で聴く事が出来る。 その後70年3月、フィル・スペクターによりテープ速度を落とし、更に13人編成の女性コーラスとオーケストラをオーバーダビングしたものがアルバム『レット・イット・ビー』に収録された。 但し、ジョンはどちらのアレンジも納得していなかったようだ。 両方ともビートルズは追加アレンジ・ミキシングにはまったく関与していない。
2003年の『レット・イット・ビー...ネイキッド』では最初のレコーディング時の編成、テープ速度はそのままにジョンのアコースティックギターとジョージのタンプーラ、リンゴのドラムという非常にシンプルな演奏を聴く事が出来る。個人的にはこのミックスが1番この曲に合っていると思うのだが、はたしてジョンはどう思うのか?
“ゲット・バック・セッション”で冷遇されていたジョージが、自意識を全面に出すジョンとポールを皮肉った作品。 ジョージはポールからギタープレイについて厳しい要求を受けていたが、ジョンからも1人前の扱いを受けていなかった。
元々は1分24秒の短い曲だったが、スペクターの編集により後半をリピートして演奏時間を1分近くも延ばした。 メンバーではリンゴのみ参加した70年4月のビートルズ名義による最後のレコーディングでこの曲は完成している。
やや大げさなオーケストラが追加されているが、『レット・イット・ビー...ネイキッド』ではオーケストラなしの本来のアレンジが聴ける。
“ゲット・バック・セッション”中の長いジャム・セッション「キャン・ユー・ディグ・イット?」からフィル・スペクターがごく一部を抜粋して収録している。
リードボーカルはジョン。 ポールがピアノ、ビリー・プレストンがエレクトリックピアノ、リンゴがドラム、ジョージがギター、ジョンが6弦ベースという編成。 作詞・作曲はメンバー4人がクレジットされている。
最後に「それではこれから『ほら!天使がやってくる』っていうのをやります」というジョンのふざけたセリフの後に次曲「レット・イット・ビー」が始まる演出になっている。
ポールが作った感動的なバラード調ピアノ弾き語り曲。 70年3月6日に発売された通算22枚目となるイギリスでの最後のシングル曲である。
ジョンはフェンダー6弦ベース、ジョージがフェンダーギター、ポールがピアノ、リンゴがドラム、ビリー・プレストンがハモンドオルガンとフェンダーローズピアノを弾いている。 ポールは最初からこの曲をゴスペル風に仕上げるつもりでいたようで、早くから黒人のプレストンにアドバイスを仰いでいたという。 歌詞に出てくる「マザー・マリア」とは亡き母メアリー・マッカートニーの事で、「let it be(なすがままに)」というフレーズは当時の混乱したグループの状況を吐露しているようだ。
イギリスでは最高位2位であったが、アメリカ・日本では大ヒットを記録、特に我が国では最も売れたビートルズのシングル曲になった。 今では彼らの代表曲であり、“後期ビートルズ”というとこの曲のイメージが強い。 それにしてもリンゴのドラマチックなドラムといい、めちゃくちゃカッコいい曲、演奏である。
2ヶ月前にリリースされたシングルバージョンとは別ミックス。 違いは、ジョージのリードギター(ジョン以外の3人が参加した70年1月4日のビートルズ最後のレコーディング!)が全面にミックスされロック色が強調されている。 また全体的にホーンとオルガンが大きめで、最後のリフレインが1回多く編集されている。 また、リンゴのハイハットに深いディレイがかけられている所など、フィル・スペクター・サウンドが感じられる。
個人的には2003年の『レット・イット・ビー...ネイキッド』のミックスが一番好き。 悪評も多い『ネイキッド』、でもこの臨場感は感動ものです。
リバプールに伝わるトラディショナル・ソングであるが、作詞・作曲のクレジットはメンバー全員の名前が記載されている。
ジョンとポールがアコースティックギター、ジョージがエレキギター、リンゴがドラムというシンプルな編成。 リードボーカルはジョン、コーラスはポール。
冒頭から一貫して歌われるテーマ部分と短い中間部分はポールの作品、後半から歌われる部分はジョンの作品という2曲を1曲にした共作。 ポールのリードボーカルは激情的、ジョンのリードボーカルは感情を抑えた歌い方であるが、さすがに息が合っている。 最後はそれぞれのフレーズを同時に対位法のように歌われる。
ルーフトップコンサートで演奏されたライブ演奏中の1曲でキーボード担当はビリー・プレストン。 アルペジオ奏法のギターリフが印象的なビートルズ風ブルースロックであり、特にリンゴのドラムが素晴らしい。
ジョンがビートルズのデビュー前に作ったロックンロール曲。 ルーフトップコンサートの演奏テイクで、ジョンのリードボーカルにポールがコーラスをつけている。 50年代の典型的なオールド・ロックに仕上がっている。演奏後、ジョンが「ダニー・ボーイ」を歌っている。
3枚目のシングル曲の候補として63年にレコーディングも行われたが、結局「フロム・ミー・トゥ・ユー」が選曲されたためこの曲はボツになった。 ボツバージョンは『ビートルズ・アンソロジー1』に収録されている。
ポールの作品。リードボーカルもポールによる、アメリカと日本におけるビートルズ解散前の最後のシングル曲。全米チャートは2週連続1位を獲得。
どうしてもたどり着けないドア、終点に行き着くことのない険しい道、について歌われており、まるで難航する“ゲット・バック・セッション”におけるポールの胸中を吐露したような歌詞である。 オーバーダビングの件でポールとフィル・スペクターの対立の原因ともなった作品としても有名。 70年4月に行われたビートルズ名義による最後のレコーディングでこの曲と「アクロス・ザ・ユニバース」、「アイ・ミー・マイン」に女性コーラスとストリングス、ブラス、ハープが追加された。 ポールにとって思い入れがある曲らしく、85年『ヤァ!ブロードストリート』でもブラスアレンジでセルフ・カバーしている。
2003年の『レット・イット・ビー...ネイキッド』ではポールが主張したように女性コーラスとホーン、ストリングスのオーケストラを取り除いた本来のアレンジのミックスを聴く事が出来る。 間奏のビリー・プレストンによるフェンダー・ローズ・ピアノが悲しくも美しい。
ポールのソロ・コンサートでも取り上げられているが、ファンサービスなのか近年はスペクターのアレンジで演奏する事もあるようだ。
アメリカと日本でのシングル「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」のB面にも収録されたジョージの作品。
ジョンが弾くラップ・スティール・ギターというスライド・ギターをフィーチャーした茶目っ気たっぷりのフォーク・ブルースである。 リードボーカルはジョージで、彼は解散後の74年、北米ツアーにおいてこの曲を演奏している。 バンジョーのようなスタッカートが効いた音は、ポールが演奏しているハンマーと弦の間に紙を挟んだピアノ。
『レット・イット・ビー...ネイキッド』ではスティール・ギターが入っていないシンプルなアレンジを聴く事が出来る。
当初発売予定だったライブアルバム『ゲット・バック』に先行して69年4月11日に発表されたビートルズ19枚目のシングル曲。 イギリスでは6週連続1位、アメリカでは5週連続1位を獲得した。
69年1月30日にアップル・ビルの屋上で行われたルーフトップ・コンサートのメイン曲として演奏されたポールの作品。 リードボーカルはポール、息の合った低音のハーモニーはジョン。 歌詞に出てくる“ジョジョ”はジョンの事といわれているが、「元いた場所に帰れよ」はジョンともヨーコとも取れる内容。
リンゴの大迫力3連ドラムが素晴らしく、この典型的なオールド・ロックをグイグイ引っ張っている。 リードギターはジョンの演奏で、半音チョーキングを多用した乗りのいいギターソロを2回聴かせる。 ビリー・プレストンが弾くエレクトリックピアノもカッコ良く、ドライブ感溢れるソロを聴かせる。この曲は特別に"The Beatles With Billy Preston"とクレジットされた。
シングル盤と同じ69年1月27日のスタジオでのセッション・テイク。 そこから1年以上たった70年3月26日にフィル・スペクターがミキシングを行って完成させた。 シングル盤と比べると曲の前後に会話が挿入され、ボーカルがノンエコーになってライブ感を強調している。 完奏後、ポールが「ありがとう、モー(リンゴの先妻)」、続いてジョンが「バンドを代表して皆様にお礼申し上げます。オーディションに受かるといいな」と締めくくっている。
アップル・コア屋上でのライブではリハーサルを含め3回演奏され、最後は通報を聞いて駆けつけた警察官にジョンとジョージのギターアンプの電源を切られ、ベース、ドラム、キーボードのみしか聴こえない演奏になったそうである。 この演奏は『ビートルズ・アンソロジー3』に収録されている。
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