オランダ
Holland
HOME ビーチ・ボーイズ TOP 戻る
73年1月にリリースされたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
「セイル・オン・セイラー」収録。
前のアルバム 次のアルバム
プロデュース:ビーチ・ボーイズ
Brother-Reprise Revel 1973.1.8
曲目リスト
1. | セイル・オン・セイラー | Sail On, Sailor |
2. | スティームボート | Steamboat |
3. | カリフォルニア・サーガ/ビッグ・サー | California Saga: Big Sur |
4. | カリフォルニア・サーガ/ザ・ビークス・オブ・イーグルス | California Saga: The Beaks Of Eagles |
5. | カリフォルニア・サーガ/カリフォルニア | California Saga: California |
6. | ザ・トレイダー | The Trader |
7. | リーヴィング・ディス・タウン | Leaving This Town |
8. | オンリー・ウィズ・ユー | Only With You |
9. | ファンキー・プリティー | Funky Pretty |
[ヴァーノン山と小道(EP盤)] | [Mount Vernon and Fairway (A Fairy Tale) EP track] | |
10. | ヴァーノン山と小道(テーマ) | Mount Vernon And Fairway (Theme) |
11. | 魔法の笛吹き(インストゥルメンタル) | I'm The Pied Piper (Instrumental) |
12. | 早く帰ろう | Better Get Back In Bed |
13. | 不思議なトランジスタ・ラジオ | Magic Transistor Radio |
14. | 魔法の笛吹き | I'm The Pied Piper |
15. | ラジオ王国 | Radio King Dom |
ヒストリー
1972年頃、マネージャーに就任したジャック・ライリーの提案でオランダに移住する計画が立てられた。 気分転換に暫くロスを離れた方がいいという意見に、ブライアンを除く関係者全員が賛成する。 この時間とお金を浪費する大掛かりで馬鹿げた引越しが6月に実行された。
現地のスタジオは予約待ちでなかなか押さえられず、彼らはオランダの田舎町バームブリューゲの納屋をスタジオに改造することにした。 べラジオ・ロードにあるブライアンの自宅スタジオは解体され、総重量7,300ポンド(約3.3t)を超える機器は空輸され、現地で組み立てられた。
8ヶ月間滞在したオランダでのレコーディングであったが、完成した作品を聴いたワーナーの役員は、ヒットしそうな曲がまったく無いことに落胆しアルバム発売を拒否した。 役員たちはそもそも『カール・アンド・ザ・パッションズ - ソー・タフ』のリリースを認めた事自体が間違いだったと頭を抱えてしまう。 この大ピンチを救うべく『スマイル』の共作者ヴァン・ダイク・パークスが呼び出された。 ヴァン・ダイクは、71年にブライアンが作っていた「セイル・オン・セイラー」のデモ・テープをワーナーの役員に聞かせ、ようやくレコード会社を納得させる事に成功するのであった。
ライリーはアルバム・リリース後もオランダで暮らすと主張してメンバーの反感を買い、大変な出費を伴ったプロジェクトの責任を追求されてマネージャーを解雇される。 経歴詐称(ピューリッツァ賞やピーボディ賞を取ったという経歴は嘘であった!)など何かとお騒がせ男のライリーとビーチ・ボーイズの短い関わりは終わった。
アルバム解説
ブラザー/リプリーズより1973年1月8日に発表されたアルバム。 タイトルは『オランダ』、ジャケット写真もアムステルダムの運河に映った船と建物の味わい深いショットが使われた。 レコーディングは前作『カール・アンド・ザ・パッションズ - ソー・タフ』発表後、オランダにスタジオを移築して開始される。
最初は環境の変化を嫌っていたブライアンであったが、ランディ・ニューマンの『セイル・アウェイ』の音楽にインスパイアされ「ヴァーノン山と小道」というおとぎ話を作曲、久しぶりに満足の行く出来栄えにテンションは上がった。 しかし、ブライアンの熱い想いとは対照的に他のメンバーの反応は冷たく、その音楽を理解してくれる者は誰一人いなかった。 案の定、ブライアンは再び鬱状態に戻り、オランダ滞在中誰とも話さなくなってしまう。 仕方なくブライアン抜きでアルバム作りを続行し、ようやく完成。 その後、ワーナーの要望で71年にブライアンが作りかけていた「セイル・オン・セイラー」を追加収録しリリースされる。
ところがオランダらしい作品は「スティームボート」1曲くらい、それどころかカリフォルニアを歌った3曲の連作が収録されたりで意味がよくわからないコンセプトに(汗;)。 しかも、先のブライアンのおとぎ話が収録されたEP盤がLPの“付録”としてついている、とても奇妙なものとなった(CDでは10曲目以降に収録、どうやらカールが傷心のブライアンに配慮したものらしい)。
全米チャート37位と、まずまずの成績と売上げをキープしたものの、アルバムは全体的に地味な仕上がりとなった。。 ブライアンは付録のおとぎ話以外、殆どレコーディングに参加していない。「セイル・オン・セイラー」の最終セッションも不参加だ。
ブライアンとヴァン・ダイク・パークスの作ったスローなロック曲。73年1月29日にシングルとして発表、最高79位(B面は「オンリー・ウィズ・ユー」)。
元々アルバム収録予定ではなかったが、ビーチ・ボーイズがオランダで制作した予定曲に満足しなかったワーナーは、アルバムを発売する条件としてこの曲の収録を要求した。 メンバーから曲の完成を急かされたブライアンは、またしても昔のような完璧主義者となりヴィレッジ・スタジオにおけるレコーディングは難航を極めた。彼があまりに曲をいじるため、遂にメンバーからスタジオの出入りを禁止されてしまう。 ブライアン以外のメンバーが協力し合って完成させたため、作者のクレジットにはロイ・ケネディ、タンディン・アルマー、ジャック・ライリーの名が追記されることに。結局ブライアンは完成テイクのレコーディングには殆ど関わっていない。
リード・ボーカルはブロンディ・チャップリン。苦難を乗り越える船乗りを歌った内容であるが、当初の歌詞とはだいぶ違っているらしい。 ワーナーのデビッド・バーソンは、最初に聴いたブライアンとヴァン・ダイクのピアノ・デモの方がずっとよかったと記憶しているという。
グループのリバイバル人気が起こった75年3月10日にもシングル・リリースされ、その時は全米49位をマークした。
デニス・ウィルソンとジャック・ライリーが作った、奇妙な電子音が印象的なスロー・テンポの曲。リード・ボーカルはカール・ウィルソン。
蒸気音がSEとして挿入され、歌詞も蒸気船に乗って優雅に川を行き交う様子が歌われる、このアルバム中唯一オランダらしい曲。 間奏のスライド・ギターの演奏はのどかな雰囲気とは一転した幻想的でサイケデリックな雰囲気を醸し出す。 歌詞に登場するミスター・フルトンとは、蒸気船を発明したアメリカ人ロバート・フルトンのこと。 サウンドは面白いのだが、デニスの作品にしてはやや不満の残る低調な出来である。
陰鬱なピアノとスチール・ギターのパートをオープニングとエンディングに配した、ゆったりとした3拍子のカントリー調の作品。 組曲カリフォルニア物語の第1曲目で、カリフォルニア州ビッグ・サーについて歌われている。 もともとは71年の『ランドロックド』に収録予定だったが、アルバム自体がボツとなったためにお蔵入りとなっていたもの。 2021年にリリースされた『フィール・フロウズ:サンフラワー&サーフズ・アップ・セッションズ 1969~1971』では、4拍子のフォーク・ソング調の初期バージョンを聴くことができる。
マイク・ラヴが初めて単独で作った作品で、リード・ボーカルも彼によるもの。 この優しい曲調は彼の持ち味で、この作品以降もスローなラヴ・ソングを好んで手がけていく。 印象的なスチール・ギターはブロンディ・チャップリンのプレイ、時折聴こえるハーモニカはブライアンによるもの。
組曲カリフォルニア物語の2曲目となる、アル・ジャーディンと妻リンダの作品。リード・ボーカルはアル。
のどかで牧歌的な曲調であるが、歌詞は自然を破壊する人類への警告が込められているらしい。 前曲と同じく、ピアノとフルートによる暗いパートが挟み込まれており、マイク・ラヴによるナレーションが入っている。 この白頭鷲について朗読された詩は、アメリカの環境保護の詩人、ロビンソン・ジェファーズの「ジェファーズ・カントリー」から引用されたものだ。
アル・ジャーディンが作った組曲カリフォルニア物語の最後の曲。 リード・ボーカルはマイク。冒頭の4小節のリード・ボーカルはブライアンによるもの。
カリフォルニアの自然の素晴らしさを称えた内容であるが、70年10月に南モンタレーで開催されたジョーン・バエズ主催のビッグ・サー・フォーク・フェスティバルに参加したときの様子も歌われている。 バンジョーとスチール・ギターがフューチャーされたスローなカントリーで、シンセのベース・ラインが「カリフォルニア・ガールズ」を意識しているようだ。
73年4月に「ファンキー・プリティー」とのカップリングでシングル・カットされた。本国ではチャート・インしなかったが、イギリスでは37位を記録。 シングル・バージョンには「On my way」というブライアンの合いの手がはっきり聴こえる。
前半と後半とで曲調がガラリと変る、カールとジャック・ライリーの共作曲。淡々としたリード・ボーカルはカール。
内容は大航海時代の商人たちがアメリカ大陸を開拓する様子が物語風に展開するもの。 後半は迫害を受けたアメリカ・インディアンの悲しみについて静かに語られている。 全体にメロディの起伏が少ない作品ながら、歌とコーラスだけで聴かせてしまうあたりはカールの実力である。 独特のベース・ラインはムーグ・シンセサイザーによるもの。
リッキー・ファターが中心で作った、ブロンディ・チャップリン、カール、マイクとの共作曲。
重厚なピアノのストロークでしっとりと歌われるブルージーな作品で、人生の岐路で進むべき道を迷い苦悩する内容が歌われている。 ソウルフルなリード・ボーカルはブロンディ。 オルガンのようなムーグ・シンセサイザーによる情感たっぷりの間奏が印象的である。
デニスが作った傑作バラードで、何かと対立し合うマイクとの共作。 内容はデニスの妻バーバラに捧げた愛の告白で、美しいピアノの伴奏に乗った伸びのあるリード・ボーカルはカール。 控えめなストリングス・アレンジも好感が持てる。
デニスは後に自身のソロ・アルバム用にこの曲をレコーディングするが、結局未発表に終わる。 重厚なデニスのボーカル・バージョンは、2008年に発売された『パシフィック・オーシャン・ブルー』のレガシー・エディションのボーナス・トラックとして聴く事が出来る。
ブライアンの書いた曲にマイクとジャック・ライリーが歌詞を付けたソウル調の作品。 ムーグ・シンセサイザーを用いた大胆なサウンドが特徴であるが、掴みどころが無く、演奏もたどたどしい。
星座やローマ神話を引用した神秘的で難解な歌詞はいかにもライリーらしい。 中間部の言葉遊びのようなパートには、コペンハーゲンやアムステルダム、東京などの様々な都市名が登場する。 リード・ボーカルはカール。サビはフレーズ毎にアル・ジャーディン、ブロンディ・チャップリン、マイクが歌っている。
ヴァーノン山と小道(EP盤)
この曲から「ラジオ王国」までの6曲は、アルバム『オランダ』の付録EPとしてリリースされたもので、ブライアンが少年時代にマウント・ヴァーノンとフェア・ウェイの角にあったマイク・ラヴの邸宅での思い出をモチーフにした
丘の上の秘密の王国に若い王子が住んでいるという冒頭シーンが語られる。物語りを朗読するナレーションはジャック・ライリー。 ピアノとムーグ・シンセサイザーによる不思議なサウンドは物語のテーマ・ソングである。
真夜中に王子が魔法のラジオに連れられ外に出て行くシーン。光輝きラジオが踊りだす。
バック・サウンドは歌やコーラスが無いインストゥルメンタル。 電子音のような奇妙であるが好奇心を掻き立てるような斬新なメロディが繰り返される。
ラジオを置き忘れてベッドに戻るシーン。 「Pied Piper I'd better get back in bed Hope I'll see you again(パイド・パイパー、ベッドに戻りなさい、また会いましょう)」というブライアンの歌声が繰り返される。
再び10のヴァーノン山と小道のテーマ曲が登場する。
魔法のラジオを探しに再び真夜中の外に出て行くシーン。 ブライアンのボーカルによる「Glowing magic transistor radio(光る魔法のトランジスタラジオ)」という妙に耳に残るフレーズが繰り返し歌われる。
彼はオランダの滞在先でランディ・ニューマンの最新アルバム『セイル・アウェイ』を毎日聴き続けてこの物語りを思いついたという。
ラジオの妖精(?)パイド・パイパーが現れ、王子に話しかけるシーン。コミカルなパイド・パイパーの声はブライアンによるもの。
「パゥ、パゥ、パゥ」というブライアンの印象的なハーモニーが聴こえる。 最後の方でブライアンとメンバーのコーラスによる「Dom dom kingdom(ドム、ドム、キングダム)」というフレーズが繰り返されるが、どことなく「英雄と悪漢」のサウンド、コーラスに似ている。
魔法のラジオを探して再び不思議な音楽を聴くという物語の最後のシーン。
ブライアンが
これら6曲の
オンリー・ウィズ・ユー
作曲・作詞:デニス・ウィルソン/マイク・ラヴ
愛はいたるところに溢れている
君といる時だけそう感じるんだ
君と一緒にいたいだけさ
すぐに僕らができること
それは一緒に過ごすことなんだ
君と一緒にいたいだけさ
以前は愛は現れては消えていたけど
ついに本当の愛を見つけたんだ
僕がどうしたいかはっきりしている
人生を共に過ごしたいと
君と一緒にいたいだけさ
対訳:管理人
前のアルバム 次のアルバム
HOME ビーチ・ボーイズ TOP このページの先頭
戻る