サマー・デイズ
Summer Days (and Summer Nights!!)
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65年7月に発表されたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
傑作曲「カリフォルニア・ガールズ」、「レット・ヒム・ラン・ワイルド」収録。
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プロデュース:ブライアン・ウィルソン
Capitol Revel 1965.7.5
曲目リスト
ヒストリー
ブライアンは創作活動のピークを迎えていた。多くの楽器を重ね、サウンドはより厚みを増していく。 これら音楽スタイルの変貌は、当時常用していたマリファナの影響が考えられるが、彼のライフ・スタイルに多大な影響を与えた悪友、ローレン・シュワルツに勧められたLSDも大きく関係しているようだ(LSDはサンフランシスコの化学者スタンリー・オーズリー博士が作ったものだった)。 初めてのLSD服用はブライアンにとって恐ろしいだけの幻覚体験であったが(彼はLSDトリップ後、妻マリリンに"神を見たんだ"と怯えながら泣いていたという)、その強烈なイメージは彼の音楽にそれまでにない色彩感をもたらす結果となった。
グループの転機も訪れた。
ブライアンがコンサート活動から身を引いたため、65年2月からのステージではセッション・ギタリストのグレン・キャンベルが3ヶ月間だけ代役を務める事になる。 その後、ドリス・デイの息子テリー・メルチャーとのデュオ「ブルース・アンド・テリー」として活動していたブルース・ジョンストンが4月9日のツアーから正式メンバーとして加入、以後6人目のビーチ・ボーイズとしてずっと活躍する事になるのだった。
この年の4月に発売された「ヘルプ・ミー・ロンダ」が全米ナンバー・ワンの大ヒット、続く「カリフォルニア・ガールズ」も全米トップ3のヒットを記録。 最新作『サマー・デイズ』もアルバム部門で全米2位にランクされる。 グループとしてまさに人気と実力がピークに達した絶頂期といえる。
音楽を追及するためにブライアンの視線はまっすぐ前を見つめていた。 彼の研ぎ澄まされた感性は若者のライフ・スタイルやカルチャーの変化を肌で感じとり、やがて訪れるロック業界の変革すら予見していた。 更に上を目指すために。
アルバム解説
前作『トゥデイ!』ではブライアン・ウィルソンの音楽的嗜好が強く反映したものとなったが、4ヶ月後の1965年7月5日に発表されたこの『サマー・デイズ』はマイク・ラヴ主導の既存イメージ路線に軌道修正した形となった。 つまり、海、夏、女の子といったような。 ジャケットに映るメンバーの季節感のない服装は笑えるが(ブライアンとデニスは長袖のセーターを着込んでいるが、カールは半袖のポロシャツ、マイクは海パン一丁の姿!アル・ジャーディンは映ってない)、海原でヨットに乗るショットは夏のイメージを強く印象付けるものだ。
収録された楽曲もジャケット写真同様に明るくポップなナンバーが多く、『オール・サマー・ロング』のように華やかな仕上がりである。 しかし、サウンド構成は『トゥデイ!』の複雑なプロダクションからさらに深化/飛躍した重厚なものである事に気づく。 ハル・ブレインやキャロル・ケイなどのロサンジェルスの腕利きセッション・メン“レッキング・クルー”を積極的に起用した成果が遺憾なく発揮されている。
オープニングのシンフォニックな響きが印象的な「カリフォルニア・ガールズ」、風変わりだが魅惑的な「レット・ヒム・ラン・ワイルド」、重厚な「ソルト・レイク・シティ」など、個性豊かな楽曲を多数収録した傑作である。
テナー・サックスと12弦ギターをフィーチャーした彼らには珍しいヘビーなロック曲。当時のフォーク・ロックの影響を受けつつも、ビーチ・ボーイズならではのコーラス・ワークを聴かせる。
ニューヨークからやってきた少女とLAの少年についての内容は、テレビで競演した女性オールディーズ・シンガーのレスリー・ゴアをモチーフにしたもの。 又、タイトルの「ザ・ガール・フロム・ニューヨーク・シティ」は、アド・リブスの65年のヒット曲「ザ・ボーイ・フロム・ニューヨーク・シティ」のアンサー・ソングとして引用された。
ブライアンの作品で、リード・ボーカルはマイク・ラヴ。ひと際目立つバック・コーラスのバス・ボイスもマイクによるもので、曲に独特の表情を与えている。 フォルセット・ボイスで歌われるバック・コーラスは彼らの作風には珍しく非常にクールである。
ステレオ・ミックスは2012年にリリースされた『サマー・デイズ(モノ&ステレオ)』で初登場。
フレディ・キャノンの62年のヒット曲「パリセイズ・パーク」をモチーフにした、ブライアンのオリジナル作品。 エンディングで「パリセイズ・パーク」のメロディが僅かながら登場する。 リード・ボーカルはマイクとブライアンが交互に担当。けたたましい笑い声のようなバック・コーラスはブライアンによるもの。
アメリカ中の遊園地について歌われており、間奏ではハル・ブレインによるサーカスの呼び込みやカップルの会話など賑やかな雰囲気の効果音が挿入されている(『サーフィン・サファリ』収録の「カウンティ・フェア」の間奏と類似)。
日本でのみシングル・カットされた。
2012年の『サマー・デイズ(モノ&ステレオ)』で臨場感溢れるステレオ・ミックスが登場。 又、2013年のボックス・セット『カリフォルニアの夢』では歌詞やアレンジが異なる初期バージョンが収録された。
フィル・スペクターのプロデュースによる黒人女性コーラス・グループのクリスタルズ、63年のヒット曲「ゼン・ヒー・キスト・ミー」のカバー。 エレキ・ベースやパーカッションなど全体の雰囲気はスペクター版に近いアレンジであるが、間奏のメロディはオリジナルでは雄大なストリングスだったのに対し、ビーチ・ボーイズ版ではオルガンになっている。
ブライアンは63年の秋にゴールドスターのスタジオでスペクターに会った際、「"ビー・マイ・ベイビー"は最高傑作だと思います」と言ったが、スペクターは「"ゼン・ヒー・キスト・ミー"の方がいいと思うよ」と答えたそうだ。 リード・ボーカルはアル・ジャーディン。
初のステレオ・ミックスは2007年のベスト・アルバム『ザ・ウォームス・オブ・ザ・サン』に収録。 個人的な感想であるが、ハル・ブレインのドラムなどのサウンドが『ペット・サウンズ』の「スループ・ジョン・B」に類似していると思うのだが。。
ユタ州のソルト・レイク・シティがいかにいい町かを歌い上げたご当地ソング。 2002年の冬季五輪開催時も地元のテレビではキャンペーン・ソングとしてこの曲が大活躍したそうだ。
ブライアンのオリジナル作品。リード・ボーカルはマイク、高音部はブライアンが歌っている。 ジャズ・セッション・ミュージシャンの“レッキング・クルー”による演奏が素晴らしく、バリトン・サックスとエレキ・ピアノのアンサンブルや2本のベース・ギターのドライブ感、幻想的なヴィブラフォンの響き、見事なドラム・パターンなど、素晴らしいサウンド構成だ。
68年のカラオケ集『スタック・オー・トラックス』では重厚な演奏が楽しめるバッキング・トラックが収録。 又、2001年の未発表音源集『ホーソーン,カリフォルニア』には、ブライアンが色々指示しているセッション風景と臨場感溢れる素晴らしいステレオ・ミックスを聴く事が出来る。
ブライアンがビートルズの「涙の乗車券」のパロディとして作ったフォーク・ロック調の作品。 チェレスタのリフや間奏の12弦ギターのフレーズにビートルズのエッセンスが感じられる。
リード・ボーカルはビートルズの熱烈ファンのカール・ウィルソン。カールにとって一人で歌いきるのはこの曲が初めてである。 ビーチ・ボーイズには珍しいコーラス無し、フェイド・アウトせずに完奏するスタイルだ。 内容はちょっと感傷的な失恋を歌ったもの。ブライアンの高校時代の失恋相手、キャロル・マウンテンの事を書いたのかも知れない(小生の憶測)。
ミックス前のマルチ・トラック・テープが紛失した為か、この曲のステレオ・ミックスは存在しない。 2012年の『サマー・デイズ(モノ&ステレオ)』では機械的に音を分離させた"Stereo Extraction Mix"として発表されている。
ブライアンは前作『トゥデイ!』に収録されたこの曲のアレンジが気に入らず、アルバム完成後にウェスタン・スタジオで再レコーディングしている。 ようやく満足のいくミックスが完成し、タイトルのロンダも"Ronda"から"Rhonda"に変更して65年4月5日に「踊ろよ、ベイビー」に続く14枚目のシングルとして発表。グループ2枚目のナンバー・ワン・ヒットをゲットした。 (ロンダの綴りについては『トゥデイ!』のジャケット印刷ミスだった可能性もあり)
リード・ボーカルは最初のレコーディングと同じくアル・ジャーディンが担当。 「ワー・ワー・ワー・ワー」というコーラスが追加され、全体にハーモニーが分厚くなり、バッキングは余計な音を削除してベースとドラムを強調したものになっている。
この曲も前曲同様『サマー・デイズ(モノ&ステレオ)』で"Stereo Extraction Mix"として発表されたためにトゥルー・ステレオは無い。 バッキング・トラックは、68年のカラオケ集『スタック・オー・トラックス』のボーナス・トラックで聴く事が出来る。 又、98年のサントラ版『エンドレス・ハーモニー』には一旦は最終マスターとなったブライアンの奇妙なバック・コーラスがついた別バージョンが収録されている。
このアルバム発表1週間後の65年7月12日にシングル・カットされたビーチ・ボーイズ不朽の名作。 「ヘルプ・ミー・ロンダ」に続くヒット曲として全米3位を記録した。
ブライアンの作品で、彼が初めてLSDを体験した時のインスピレーションからこのカントリー調シャッフル・ビートの曲想を思いついたという。 歌詞はサーフィンUSAのコンセプトに基づき、アメリカ各地の美女たち全員がカリフォルニアの女性だったらどんなに素晴らしいだろう、という女性賛歌。 12弦ギターやホーンを使った不協和音を想わすシンフォニックな導入部は秀逸で、ブライアンが目指す音楽性を暗示、象徴するものだ。
バッキングのレコーディングはゴールド・スター・スタジオでスペクター御用達のスタジオ・ミュージシャン“レッキング・クルー”が参加して行われた。 ウェスタン・スタジオのサウンド・エンジニアであったチャック・ブリッツは、オーケストラを含めた大規模なセッションが自分不在で行われたことに不満を持ったという。 この素晴らしいバッキング・トラックは先の「ヘルプ・ミー・ロンダ」同様に『スタック・オー・トラックス』のボーナス・トラックで聴ける。
マイク・ラヴのリード・ボーカルをフィーチャーしたボーカル・パートはコロンビア・スタジオで初めて8トラックの機材を使いレコーディングされたもの。 ビーチ・ボーイズの新メンバーとなったブルース・ジョンストンが初めて参加したセッションでもあった。 93年の『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』にアカペラが収録され、驚異的なコーラス・ワークを確認できる。
この曲のステレオ・ミックスはいくつか存在するが、98年『エンドレス・ハーモニー』に収録された初ミックスが1番素晴らしい。 サウンドの要、ハル・ブレインのドラムが強調され、大胆、かつ繊細なバック・コーラスの広がりが凄いのだ。
イギリスの音楽雑誌『MOJO』2012年6月号における、英国音楽関係者による「The 50 Greatest Beach Boys Songs」では、「神のみぞ知る」に続く4位に選ばれている。
ブライアンが作った傑作曲。 ラヴソングであるが、彼の嫉妬心を表現したような一風変わった歌詞である。 フォルセットのリード・ボーカルはブライアンによるもの。彼曰く、ポピュラー音楽やジャズ音楽で活躍する米国マルチ音楽家のバート・バカラックに捧げた曲だそうだ。
ヴィブラフォンとパーカッションの幻想的な響き、12弦ギターのカウンター・メロディ、不思議な旋律のベース・ギター、ジャズ風テナー・サックス、変則的なドラミングなど、これまでにないモダンで風変わりなサウンドを持つ。 前作『トゥデイ!』の「イン・ザ・バック・オブ・マイ・マインド」で新たな音楽性が垣間見られたが、遂にこの曲でポップ・ミュージックとの決別を高らかに宣言したように感じる。 そういう意味ではこのアルバム中最も重要な作品なのかも知れない。
シングル「カリフォルニア・ガールズ」のB面にも収録。
ジャズ・セッションを思わす“レッキング・クルー”参加のバッキングは『スタック・オー・トラックス』で聴く事が出来る。 又、ステレオ・ミックスは2007年のベスト・アルバム『ザ・ウォームス・オブ・ザ・サン』で初披露された。
ブライアンが作った、彼女に対する愛しい気持ちを歌った純粋なラヴ・ソング。シャウト気味のリード・ボーカルも彼。 バック・コーラスはご機嫌で、特にマイクのバス・ボイスが素晴らしい。 ハル・ブレインの4ビートのドラムが力強く、ギター・リフが印象的で軽快なロック曲に仕上がっている。
10ヵ月後の66年3月21日に「スループ・ジョン・B」のB面としてシングル・カットされた。
『スタック・オー・トラックス』にカラオケが収録、ステレオ・ミックスは『ザ・ウォームス・オブ・ザ・サン』で初披露されている。
因みにこの曲は66年の大傑作アルバム『ペット・サウンズ』の共作者であるトニー・アッシャーのお気に入りだそうだ。
ブライアンの書いたロマンチックなインストゥルメンタル・ナンバー。 彼がサヴァイヴァーズに提供した「アフター・ザ・ゲーム」を元に作ったものと言われている。
主旋律をギターが奏で、途中からフレンチ・ホルンやサックス、ストリングスなどのオーケストラが入ったとても美しいサウンドだ。 ここでも隠し味的にヴィブラフォンが使われている。
66年3月7日に発表されたブライアンのソロ名義のシングル「キャロライン・ノー」のB面にも収録。
2003年の『ペット・サウンズ(DVD Audio版)』のボーナス・トラックとして初めてステレオ・ミックスが登場した。
ブライアンが作ったピアノの弾き語り曲。
彼を精神的に苦しめている父マリーを痛烈に批判した内容。 ブライアンのリード・ボーカルはちょっとエルビス・プレスリー風、メンバーのバック・コーラスもマリーを冷やかすような歌い方だ。
このアルバムのレコーディングでは実質的にマリーが口出しできなくなっていたのだろう。でもこれを聴いたら間違いなく激怒したと思うのだが。 因みにマリーはマネージャーを解雇された報復として、ビーチ・ボーイズのコピー・バンド「サンレイズ」をプロデュースし、65年3月にデビューさせている。 自分こそがボーイズを作ったと誇示するための行動だったが、ヒット曲に恵まれる事は無かった。
モーツァルトの「きらきら星変奏曲」に歌詞を付け、アレンジしたアカペラ。コーラス・グループとしての実力を発揮した、貫禄のハーモニーを聴かせる。 夏が終わり失恋した女の子を元気付けるバラードである。
2001年の『ホーソーン,カリフォルニア』には初のステレオ・ミックスと共に、「ウィッシュ・ザット・ヒー・クッド・ステイ」というタイトルでセッション風景も収録されている。
ボーナストラック
「カリフォルニア・ガールズ」に続き、65年11月8日に発表された16枚目のシングル曲。
ブライアンが作った失恋をテーマにした曲で、彼女の変貌ぶりを嘆く内容の歌詞は、やはりキャロル・マウンテンとの辛い思い出を綴ったものであろう。 リード・ボーカルはカール、ブライアン、マイクがそれぞれ担当。 非常に複雑なサウンド・プロダクション、コーラス・ワークが展開されており、ここでもバック・コーラスのマイクのバス・ボイスの良さが際立っている。 重厚で深い音像のベース・ギター、華やかなオルガンとギターのリフ、力強い4ビートのドラム、歌うようなサックスなど、聴き所満載だ。
ブライアン渾身の1曲であったが、当時のDJが途中2度のブレイク(無音部分)を嫌ったためにラジオではあまりかけられなかった。 そのためかチャートでは最高位20位と苦戦。
2001年の『ホーソーン,カリフォルニア』には「キャロル・ケイのセッション・ハイライト」というタイトルでバッキング・トラックのレコーディング風景が収録されている(タイトルはマスター・テープにそう書かれていたらしい)。 又、同CDにはボーカル・コーラスが異なる別バージョンも聴く事が出来る。 絶対聴いてみたいステレオ・ミックスはいまだ未発表である。
ブライアン革新的ナンバーの別バージョン。 バッキング・トラックは公式リリースと同じ。
歌詞の一部とバック・コーラスの歌い方に違いがある。
ブライアンが敬愛するフォー・フレッシュメンの56年のヒット・ナンバーのカバー。 『ビーチ・ボーイズ・コンサート』でライヴ演奏が聴けるが、こちらは未発表のスタジオ録音。
シンプルなギターの演奏をバックに、メンバーの絶妙なハーモニーが堪能できる。原曲に忠実なコーラス・アレンジである。
曲の冒頭、エンジニアのチャック・ブリッツの「10分したら戻る」という声が聞こえるが、もしかしたら別の曲のレコーディング中に空いた時間で即興的に演奏されたものかも知れない。
レット・ヒム・ラン・ワイルド
作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン
やつと歩いている君を見たとき
僕の目に涙が溢れた
君とやつが話しているのを聞いた時
彼の嘘に耐えられなかった
やつが事を起こす前に
君は気づいてくれるよね
好き放題やらせよう ※
彼は何も気にしやしない
好き放題やらせよう
彼もいずれわかるだろう
好き放題やらせよう
彼は何も気にしやしない
知ってるだろ?僕が君を待っているって
君にしたひどい事を
やつは他の娘にもするだろう
そしてある日やつは逃げ出すんだ
彼も傷つくのさ
だからやつが君を壊す前に
必ず助け出して見せる
(※ 繰り返し)
知ってるだろ?僕が君を待っているって
君がやつと語り合った夢なんて
忘れてしまったほうがいい
君には本物の愛が必要なんだ
そしてきっと手に入れるだろう
もうやつを必要としていないのだから
やつの事などほうっておけばいい
(※ 繰り返し)
(※ 繰り返し)
対訳:管理人
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