ビーチ・ボーイズ・ラヴ・ユー
Beach Boys Love You
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77年4月に発表されたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
全曲ブライアン・ウィルソンのオリジナル作品。
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プロデュース:ブライアン・ウィルソン
Brother-Reprise Revel 1977.4.11
曲目リスト
ヒストリー
臨床分析医ユージン・ランディ博士の徹底的な管理の下、ブライアン・ウィルソンの心と体の健康状態は回復に向かっていった。 治療の一環として課せられていた1日90分のピアノを使った作曲も普通にこなせるようになり、76年の夏にはアナハイムやオークランドのコンサートで9年ぶりにステージに立っている。 又、秋にはランディと共同で『ブライアン・ラヴズ・ユー』というソロ・アルバム用のレコーディングも不定期で行われていた。 11月にはアメリカNBCテレビの番組『サタデー・ナイト・ライヴ』に出演、自ら新曲の演奏を披露するなど健在ぶりをアピール、誰もが完全復活を確信するようになる。
『ザ・ニュー・アルバム』と題されたビーチ・ボーイズのメンバーによるアルバム作りが難航する中、新しいマネージャーとなったマイク・ラヴの実弟、スティーブ・ラヴは、1月までにアルバムを完成させるようブライアンに要求する。 前作『15・ビッグ・ワンズ』の成功を受け、レコード会社のワーナーは少しでも早く新作を発表したかったからだ。 だが、ランディ医師は、クリスマスを祝った事の無いブライアンにとって12月いっぱいは家族と過ごす事が大事だと主張、常に精神科医の許可が無いと何も出来ない事に不満を持ったメンバーらはブライアンからランディを引き離そうとする。 マイクはマリリンに協力を求め、法外な治療費を理由に遂にランディを解雇してしまった。
ランディという障害が無くなったことでスティーブはブライアンにアルバム作りを強要、ブラザー・スタジオでレコーディングが行われた。 リハビリを兼ねた『ブライアン・ラヴズ・ユー』から多く選曲されたアルバムはブライアンのプロデュースにより『ビーチ・ボーイズ・ラヴ・ユー』としてリリースされる。
ランディの支配から開放されたブライアンは再び自分をコントロール出来ずにアルコールと薬物を使用し始め、1日中ベッドで過ごすようになってしまう。 マイクの下の弟で元バスケット選手のスタンリー・ラヴ、元フットボール選手のロッキー・パンプリン、従兄弟のスティーヴ・コーソフの3人の大男に監視され、ブライアンは以前より更に心を閉ざしてしまうのであった。
アルバム解説
1977年4月11日にブラザー/リプリーズよりリリースされたオリジナル・アルバム。 前作に続き、ブライアン・ウィルソンのプロデュース作品。 当時、ブライアンの治療を兼ねてレコーディングされていた『ブライアン・ラヴズ・ユー』から多く選曲されているため、収録曲は全てブライアンのオリジナルである。 殆どの楽器をブライアン本人が担当している。
ジャン&ディーンのディーン・トーレンスがデザインしたモザイク柄のタペストリー風アルバム・ジャケットは恐ろしくダサいものの(汗)、当時開発されたばかりのポリフォニック・シンセサイザーを使って多重録音された作品は音楽評論家から絶賛された。
たしかにブライアンならではのメロディ展開が随所に聴けるし自分の気持ちを素直に表現した優れた作品もあるのだが、あまりにもラフ過ぎるサウンド/コーラスのアレンジは彼本来の繊細さとは程遠いもので、まだまだ本調子ではない事は明白である。 シングル・カットされた「ハイウェイをぶっ飛ばせ」はチャート・インせず、アルバムチャートも全米53位とぱっとしなかった。
ブライアンとマイクの共作によるブギ・ウギ調のロックンロール。ラフなアレンジながら、シンセサイザーを駆使したサウンドは斬新だ。特にベース音が凄い。 殆どの楽器とコーラスはブライアンによるもの。
かなり力んだ歌い方のリード・ボーカルはカール。中間部の短いフレーズはマイク。 前作に続き、スティーブ・ダグラスのサックスが聴こえるが、キーボード類に圧倒され影が薄い。 歌詞は不明瞭であるが、学生時代から好きだった彼女への想いを歌ったストレートなラブ・ソングのようだ。
ローラー・スケートを楽しむ彼女とのロマンスを歌ったブライアン作のロックンロール・ナンバー。 リード・ボーカルはマイク、サビをアル、エンディングの一節をブライアンが歌っている。 ここでもブライアンによるポリフォニック・シンセサイザーがサウンドを支配している。 本作では珍しいエレキ・ギターはカールの演奏。乾いた感じのドラムはデニス。 70年代の代表作を集めたベスト・アルバム『テン・イヤーズ・オブ・ハーモニー』(81年)に、このアルバムから唯一この曲が選ばれている。
そういえば小生が子供の頃、リンクで激しいレースを展開するローラー・ゲームというアメリカのテレビ番組が大人気で、ローラー・スケートが流行っていたっけ。
ブライアンがフィル・スペクターに対するリスペクトの気持ちをそのまま表現したポップ・チューン。リード・ボーカルは味わい深いハスキー・ボイスのデニス。 まるでブライアンが歌っているかのようで当時の2人の声は酷似している。 サウンドはここでもポリシンセが目立っているが、サックスや鐘の音を入れ、スペクターを意識した音作りが成されてる。 また、同じフレーズの繰り返しでここまで聴かせるあたり、ブライアンのセンスが光る1曲である。
曲の終わり際には「“ダ・ドゥ・ロン・ロン”を聴いて、“ビー・マイ・ベイビー”を聴いて、きっとスペクターが好きになるさ」と歌われている。
アメリカNBCの人気番組“ザ・トゥナイト・ショー”の司会者ジョニー・カースンの歌が無いのがおかしいと思ったブライアンが書いた、ジョニー・カースンを賞賛する曲。
リード・ボーカルはブライアンのポリシンセをバックにマイクとカールが担当。 この曲や「モナ」などランディ医師の治療の一環として書かれた作品は、ブライアンの日常を描いた日記のような趣がある。今風に言えばSNSのブログのような感じであろうか?
ブライアンとアル・ジャーディンが作った軽快なラブ・ソングで、ガールフレンドとの楽しいひと時が歌われる情緒豊かなサウンドを聴かせる佳曲。
69年末の“サンフラワー・セッション”でレコーディングされたが『サンフラワー』、『サーフズ・アップ』の収録候補に挙がったものの選曲に漏れ、このアルバムでようやく陽の目を見た。 艶のある美しいフォルセット・ボイスはまだ声の潰れる前のブライアンによるもの。 71年に同じバッキングを使って、マリリンとダイアンのコーラス・グループ“アメリカン・スプリング”により発表されている。
ハーモニカやオルガン、ホーン・セクションなど艶やかなアレンジが素晴らしい。
2021年にリリースされた『フィール・フロウズ:サンフラワー&サーフズ・アップ・セッションズ 1969~1971』デラックスエディションに、この曲のバッキング&バック・ボーカルを聴くことができる。
ブライアンが作ったロックンロール曲で、ハイウェイでレースする内容を歌ったホット・ロッド・ナンバー。 リード・ボーカルはアル・ジャーディン。 ブライアンのレコーディングと並行して行われた『ザ・ニュー・アルバム』セッションで録音されたもの。
77年5月30日に「ソーラー・システム」とのカップリングでシングル・カットされた。
初めてCD化された際、どういう訳か冒頭のドラムがカットされて、アルの声が唐突に始まる編集になっていた。というか、オープニングにドラム音が入っている事を割と最近知った小生である。
73年にブライアンと元バーズのロジャー・マッギンとのジャム・セッションで生まれた作品を1分にも満たない小品に編集したもの。 はしゃいだコーラスとホンキー・トンク・ピアノをバックに、マイクが歌っている。
昔から宇宙に興味があったブライアンが、太陽系の惑星や星座を題材にして作った3拍子のミディアム・テンポ・ナンバー。真夜中に思いつきで天体望遠鏡を買いに出かけたという若き日の彼のエピソードも残っている。
ブライアンのリード・ボーカルは心なしか楽しげである。 輝く太陽の光をイメージしたようなポリフォニック・シンセサイザーの響きが印象的である。
ブライアンが彼のおっかけで愛人関係のデビー・キールについて書いたバラード曲。 静かで美しいリード・ボーカルはカール。ビーチ・ボーイズらしいバック・コーラスを聴かせる。
ブライアンは74年頃から運転手用の自宅の離れに住んでいて、デビーはよく夜中に忍び込んでいたそうだ。
ブライアンが書いた失恋ソングで、リード・ボーカルはデニス、ブライアン、カールの兄弟3人によるもの。 和音が使えるポリシンセを多用したサウンドは奇妙であるが、それなりに凝っている。
恋人を奪った男に嫉妬する内容であるが、妻マリリンが心を奪われたロッキー・パンプリンの事を歌ったものかも知れない。
ブライアンの書いたマリリンへの想いを吐露したラヴ・ソングで、2人によるデュエットで歌われている。 長年の喫煙によりブライアンの声は相当に荒れているが、彼の無垢で純真な気持ちが感じられて微笑ましい印象を与える。
ブライアンとマリリンは79年に離婚してしまうが、その後もお互い心で繋がっていたと思う。 紆余曲折を経た2人の人生を考えると、ちょっと感傷的な気持ちになる小生である。
ブライアンが幼い2人の娘、カーニーとウェンディに対する想いを歌った可愛らしい佳曲。 自分の事すら満足にコントロールできない彼は、娘たちと向き合えずにいる事にずっと後ろめたさを感じていたのかもしれない。
リード・ボーカルはブライアン。サウンドはシンプルながら繊細さが際立つ作品で、個人的にこのアルバム中のベスト・トラックだと思っている。
飛行機嫌いのブライアンがエアポートに待っている彼女を想いながら機内で過ごす様子を歌ったスローなラヴ・ソング。 リード・ボーカルはマイク、ブライアン、カール。
ポリフォニック・シンセサイザー全開のサウンド。カウントの掛け声の後、明るいブギ・ウギ調のエンディングを迎える。
ブライアンが女性への敬意を込めて作った50年代風のスロー・バラード。 情感たっぷりに歌い上げられるリード・ボーカルはブライアン、ミドル部分をマイク、後半のカウントアップの一節をアルが担当している。 ピアノやフルート、サックスなどの生楽器が曲に豊かな表情を与えており、この懐かしい雰囲気は前作『15・ビッグ・ワンズ』の趣に似ている。
アルバムが発表される前年の11月27日にアメリカNBCで放送されたテレビの番組『サタデー・ナイト・ライヴ』にブライアンが出演、自らこの曲を披露した。
ソーラー・システム
作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン
惑星ってどんな意味があるんだろう
君は見たことがあるかい?
朝日が昇るのを
君が生まれた日にも輝いていたんだ
土星は周りにリングを持っている
僕は空を眺めて見つけたんだ
太陽系は僕らに英知を与えてくれる
そこには天の川があり
天使たちが戯れている
素晴らしい6月の夜に
愛に溢れた月を見ただろうか?
海王星は海の神
冥王星は遠すぎて見えないな
太陽系は僕らに英知を与えてくれる
星座とは
動物を形作る星々のこと
獅子座や山羊座がそう
鮮やかに輝く星の光りが
願いを叶えてくれるといいなぁ
もし火星に生命があるとすれば
僕のお嫁さんが見つかるかも
そしたら愛の女神の金星と
全ての星々に感謝しなくちゃ
水星は太陽の間近にあるから
夕暮れ時にしか見えないんだ
太陽系は僕らに英知を与えてくれる
太陽系は僕らに英知を与えてくれる
対訳:管理人
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