M.I.U.アルバム
M.I.U. Album
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78年10月にリリースされたビーチ・ボーイズのアルバム。ヒット曲「カム・ゴー・ウィズ・ミー」収録。
M.I.Uとはマハリシ国際大学「Maharishi International University」の略。
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プロデュース:アル・ジャーディン、ロン・アルトバック
Brother-Reprise Revel 1978.10.2
曲目リスト
ヒストリー
『ラヴ・ユー』が商業的に失敗した後、マネージャーのスティーブ・ラヴは新しいレコード会社との契約に躍起となっていた。 何とかCBSソニー配下のカリブー・レコードと契約を取り付けるが、ワーナーとの契約も残っており、ワーナー向けに『アダルト・チャイルド』というアルバム制作を行うがレコード会社から発売を拒否されてしまう。 そこでTM(超越瞑想)の信者であるマイク・ラヴの提案により、77年9月からアイオワ州フェアフィールドにあるマハリシ国際大学でレコーディングすることになった。 大学にレコーディングスタジオを急造する、やけにお金のかかるこの馬鹿げた行為に対し、グループ関係者からは「第2のジャック・ライリー事件」(例のオランダ騒動)と揶揄された。
CBSソニーからもアルバム発売の要求があったため、2度目となるクリスマス・アルバム、『メリー・クリスマス・フロム・ザ・ビーチボーイズ』の制作も同時進行で行われた。
スティーブを支持するマイク・ラヴとアル・ジャーディンは、スティーブのマネージャー資質を疑うカール&デニスと対立、ライブの移動も2組別々の飛行機を使うなど、グループは解散寸前であった。 又、同月にはデニスの初のソロ・アルバム『パシフィック・オーシャン・ブルー』が発売され、その素晴らしい出来栄えに嫉妬心からグループ間に緊張が生まれた。
大学でのレコーディングが終わり何とかワーナー向けのアルバム『M.I.U.アルバム』をリリースするものの、アルバム・チャートは151位と惨敗。 CBSソニー向けの『メリー・クリスマス・フロム・ザ・ビーチボーイズ』は、案の定レコード会社から発売を拒絶され、またしてもお蔵入り作品が誕生してしまうのであった。
カールはプライベートの問題からコカインに依存、78年のオーストラリア、ニュージーランド公演ではデニスがヘロインを持ち込みブライアンと共に酩酊状態となり公演中止直前まで追い込まれてしまう。 ビーチ・ボーイズは今までに無い危機を迎えるのだ。
アルバム解説
ブラザー/リプリーズからの最後のアルバムとして78年10月2日にリリースされたもの。 プロデューサーはアル・ジャーディンと元キング・ハーヴェストのロン・アルトバック。
当時は解散寸前のグループであったが、マイクとアルは無理やりブライアンを味方につけレコーディングは3人が中心となり進められた。 マハリシ国際大学でのレコーディングでは、同時進行していたクリスマス用のアルバム収録予定曲の歌詞を変えた曲も取り上げられている。
タイトルのM.I.Uとはマハリシ国際大学「Maharishi International University」の略である。『オランダ』の時と同様、アルバムの中身とはまったく無関係のタイトルをつけるところなど、ビーチ・ボーイズのゆるさは健在であった(!)。 ところが作品の出来映えは中々素晴らしい内容で、これまでのグループ史上最もぎくしゃくした期間に作られたものとは思えない明るいものである。 8曲もの作品を提供したブライアンの頑張りが顕著で、殆どの曲にコーラスやボーカルで参加、前作までの荒れた声が大分回復して、昔ほどでは無いにしても美しいフォルセット・ボイスが多用されている。 恐らくマイクの意向であったのであろうが、多くの曲がかつてのビーチ・ボーイズを連想させる軽快な仕上がりになっている。
ブライアン、マイク、ロン・アルトバックの共作による軽快なポップ・チューン。艶は無くなったものの、久しぶりにブライアンが全編フォルセットで歌う。感傷的なサビのリード・ボーカルはマイクによるもの。
ディスコで踊る彼女を歌ったラヴ・ソングで、サックスを全面にフィーチャーしたサウンドは素晴らしく、60年代前半のビーチ・ボーイズ・スタイルが蘇る。 間奏のフルートは少しエキゾチックな響きを持っている。
オープニングの指パッチンと分厚いハーモニーが素晴らしいこの曲は、ドゥーワップ・グループ、デル・ヴァイキングスの58年のヒット・ナンバー。 元々は76年の『15・ビッグ・ワンズ』のセッションでレコーディングされたもの。間奏ではテナー・サックスのソロが実に爽快な演奏を聴かせる。 リード・ボーカルはこのアルバムで大活躍のアル・ジャーディン。メンバーのバック・コーラスもばっちり決まっている。
ベスト・アルバム『テン・イヤーズ・オブ・ハーモニー』が81年11月に発売された際にシングル・カットされ、全米18位のスマッシュ・ヒットを記録した。その時のB面は71年の「ドント・ゴー・ニア・ザ・ウォーター」。
アイオワでのセッションで新たにレコーディングされたが、そちらはイントロからピアノの伴奏がついたアコースティック調の別バージョンとしてCD版の『テン・イヤーズ・オブ・ハーモニー』に収録されている。
ブライアンの長女、幼いカーニーの活発でやんちゃな様子を歌った可愛らしい作品。リード・ボーカルはブライアンとマイク、シャウト気味に歌っているのはカール。 シロフォン(木琴)やオルガンが優しく柔らかなサウンドを奏で、ブライアンも時折フォルセット・ボイスを披露。彼の優しい気持ちが表れたセンスが光る1曲である。 前作『ラヴ・ユー』の前のレコーディング『ザ・ニュー・アルバム』セッションで録音されたものをアレンジし直して収録した。
因みに長女のカーニーは明るく社交的な性格で、容姿と音楽の才能をブライアンから受け継いでいる。一方、次女のウェンディは性格が父親に似て引っ込み思案で大人しい子に育った。
ハワイ島の観光地、コナの素晴らしさを称えたスチール・ギターが印象的なミディアムテンポの曲。未発表となった『メリー・クリスマス・フロム・ザ・ビーチボーイズ』用に収録予定であった「メレカリキマカ」(ハワイ語でメリー・クリスマスの意)という曲の歌詞を改編したアルとマイクの共作曲。元歌の「メレカリキマカ」は98年の『クリスマス・アルバム[完全版]』で聴く事が出来る。 リード・ボーカルも2人、アルが歌うサビのフレーズ終わり際、何故か曲に勢いが無くなる。
64年の名盤『サーファー・ガール』収録の「夢のハワイ」のオマージュ的作品で、随所にそのコーラスが聴ける。エンディングの突き抜けるようなフォルセットと「ホノルル!、ワイキキ!」のお馴染みのフレーズは、オールド・ファンにはたまらないものであろう。
バディ・ホリー、ジェリー・アリソン、ノーマン・ペティの作品で、58年にバディ・ホリーが発表、ジョン・レノンもカバーしているストレートなロックン・ロールの名曲。 リード・ボーカルはアル・ジャーディン。この曲も76年の『15・ビッグ・ワンズ』のセッションでレコーディングされている。 アルの歌声はこの曲に合っているものの、もっとアップテンポでドライブ感溢れる原曲と比べると物足りない。
78年8月28日、アルバムに先駆けてシングル発売され、全米58位をマーク。B面は「ヘイ・リトル・トムボーイ」。 未発表となった『メリー・クリスマス・フロム・ザ・ビーチボーイズ』用に歌詞を変えて「クリスマス・タイム・イズ・ヒア・アゲイン」としてレコーディングされている。
因みにフランシス・コッポラ監督、キャサリン・ターナー/ニコラス・ケイジ主演の86年の青春映画「ペギー・スーの結婚」は、この曲をモチーフにしたものである。
ブライアンとマイクが作ったチャーミングな胸きゅん・ソング。リード・ボーカルも2人によるもの。
さりげないサックス、カウンターのギター、フィル・インのドラム、上品なストリングス、まとまったコーラスも好感が持てる。「今夜出て来ないかい、君を待っているんだ」という歌詞は非常にシンプルな愛の唄である。 このアルバムの中でも特に小生のお気に入りの1曲である。
日曜日の素敵な過ごし方について歌われたブライアンとマイク共作のバラード。
リード・ボーカルはカール。マイク、アルらと対立している時期だけに、彼の歌声に本来の輝きが無いのが残念である。コーラスやストリングスのアレンジが素晴らしく、曲としてはまずまずの出来と言える。 このアルバムの特徴であるAOR風の作品だ。
この曲も『メリー・クリスマス・フロム・ザ・ビーチボーイズ』に収録予定だった「ベルズ・オブ・クリスマス」の替え歌。 パリの名所を紹介するような歌詞で、タイトル通り鐘の音を配したお洒落な曲。ブライアンとマイク、ロン・アルトバックの作品。 バック・コーラスではブライアンのフォルセットが聴こえるが、けっこう頑張っている。ところがリード・ボーカルのマイクの声はつぶやくようで、何故かやる気がない歌い方だ。
元歌の「ベルズ・オブ・クリスマス」は98年の『クリスマス・アルバム[完全版]』に収録されている。
スチール・ギターの響きが印象的なリズミックな作品。ブライアン、マイク、アルによる共作曲。リード・ボーカルはマイクとアル。途中から2人の息の合ったエヴァリー・ブラザーズばりのハーモニーを聴かせる。
雨音を擬音化したような歌詞とコーラスが面白く、アグレッシブなサウンドは彼らの新境地を開いた感じがする。
妻マリリンの姉であるダイアン・ローヴェルへの想いを歌ったブライアンの作品で、彼女への複雑な気持ちを吐露した悲痛なバラード曲である。もともとは『ラヴ・ユー』制作時の"ザ・ニュー・アルバム・セッション"でレコーディングされていたもの。
重厚なリード・ボーカルは本作中唯一デニスが担当したもので、彼の持ち味が生かされたドラマチックでエモーショナルな仕上がりとなっている。 ピアノとストリングスがブライアンの悲しみを代弁しているようで、バック・コーラスの切ないフォルセットもブライアン自身によるものだ。
ブライアンとマイクが書いたAORの傑作。リード・ボーカルは前作とは別人のように美しい歌声のブライアン。
恋愛をテニスのゲームに例えた洒落た歌詞、大人のムード満載のさりげないコーラス、洗練されたサウンドはこれまでの彼らの作品には無い、まったく新しいタイプのもの。
ロン・アルトバックとエド・タレハが書いたロマンチックなラブ・ソング。リード・ボーカルはアル・ジャーディンとマイク・ラヴ。
ビーチ・ボーイズらしいコーラスが聴けるものの、ストリングスなどを使った甘過ぎるサウンドはディズニー映画の音楽のようだ。エンディングではマーチ風ドラムをバックに歌われるブライアンのフォルセット・ボイスが美しい。
ヘイ・リトル・トムボーイ
作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン
ねえ、小さなおてんば娘、僕の膝の上に座ってる
君にいろいろ教えなきゃ
置き去りのスケートボードや
ちらかした野球のミットのお片づけ
1日中元気に動き回っている
君はどこでも遊び場を見つける
すぐに友達になれる男の子を見つける
小さな子供たちは世界中みんなそうしてる
小さな、小さな、小さなおてんば娘
少女に成長するまでのちょっとの時間
小さな、小さな、小さなおてんば娘
世界中のちいさな子供たちはみんなそうなのさ
ねえ、小さなおてんば娘、僕と同じ目をしてる
君になにができるか考えようか
うーん、香水の香り、ちょっと短パンのジーンズを試してみよう
君の成長を見守るよ
君のほっぺにキスしたい
みんなそう思っているんだ
世界中のちいさな子供たちはみんなそうなのさ
小さな、小さな、小さなおてんば娘
少女に成長するまでのちょっとの時間
小さな、小さな、小さなおてんば娘
世界中のちいさな子供たちはみんなそうなのさ
小さな、小さな、小さなおてんば娘
やさしい少女に成長してほしいんだ
小さな、小さな、小さなおてんば娘
美しい少女に成長してほしいんだ
小さな、小さな、小さなおてんば娘
世界中のちいさな子供たちはみんなそうなのさ
対訳:管理人
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