アビイ・ロード
Abbey Road

(アルバム)


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A面の野性味、B面の叙情性。何人も否定し得ぬ、ビートルズ・ミュージックの錬金術

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プロデュース:ジョージ・マーティン

Apple Revel 1969.9.26


ヒストリー

1969年1月から始まった“ゲット・バック・セッション”は最初から難航し、収拾のつかないものになりつつあった。2枚組み『ザ・ビートルズ』のレコーディングで見られたメンバー間の対立はこのセッションで決定的なものとなった。 1月31日にアップル・コア本社の屋上で行われた通称“ルーフトップ・コンサート”を最後にアルバム製作と映画撮影は棚上げとなり、グループは半ば“解散状態”となってしまう。

ポールは3月12日に写真家のリンダ・イーストマンと結婚、ジョンはその1週間後にオノ・ヨーコとジブラルタルで結婚式を挙げる。

混乱するアップル・コアの経営破綻、リーダー・シップを取ろうとするポールの孤立化、そしてジョンとヨーコはプラスティック・オノ・バンドを結成、関係者やメンバー達もビートルズとしての創作活動は終わったと思っていた。

そんな中、突然ポールがプロデューサーのジョージ・マーティンに電話でアルバム作りを提案する。 「昔のやりかたで出来るなら」というマーティンの条件で再びメンバー全員がEMIスタジオに集まりレコーディングが始まった。

今度は“ゲット・バック・セッション”の時のようなトラブルも起きず、久しぶりに4人のレコーディングでアルバム『アビイ・ロード』が完成する。 これがグループ最後の共同作業だと感じていたメンバー4人の意地が有終の美を飾らせたのだった。


アルバム解説

1969年9月26日に発表された11枚目のオリジナルアルバム。 セッション期間中、ジョンが交通事故で入院するアクシデントがあったものの、久しぶりにメンバーとスタッフの息の合った見事な仕事となった。途中から敏腕サウンド・エンジニアのジェフ・エメリックも1年ぶりに復帰している。 この当時、ジョージが熱心だったモーグ・シンセサイザーを積極的に取り入れたサウンドが特徴的である。

ビートルズ全作品中とりわけ評価が高いもので、ローリングストーン紙では「本作のB面だけで『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に匹敵する」と評された。 事実上ラスト作品となったこのアルバムが持つ高い音楽性は今でも評価され続けている。

タイトルの“アビイ・ロード”はEMIレコーディングスタジオ前の通りの名前から付けられたもの。 全世界で2,900万枚以上のセールスがあり、このアルバムの大ヒットに敬意を表しEMIスタジオを「アビイ・ロード・スタジオ」と改称した経緯がある。

当初アルバムタイトルを『エヴェレスト』、ジャケット写真もヒマラヤまで行って山の麓で撮影する事が予定されていたが、「ちょっと外で写真を撮り、通りの名前をタイトルにすればいいじゃないか」というポールの発案によりタイトルとジャケット写真が決まったという。 ジョンの親友のイアン・マクミランによって撮影された横断歩道をメンバーが1列に並んで横切る写真は非常に有名で、現在までに様々なジャンルでオマージュされてきた。又、このジャケット写真は“ポール死亡説”の証拠とされ、多くの議論を呼ぶ事にもなった。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

ジョンが作ったセンセーショナルなロック曲。リードボーカルはジョン、コーラスはポール。 69年10月31日に「サムシング」と両A面で発表された21枚目のシングル曲。全英最高位は4位。全米では1位を獲得している。

チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」にインスパイヤされて作った曲。 当初からポールにチャック・ベリーの曲との類似点を指摘されていたが、案の定発表直後にチャック側から盗作と訴えられ、ジョンは後のソロアルバムでチャックの曲を入れる事で和解した。

リンゴのドラミングが特に印象的で、淡々としたジョンのボーカルとポールのベース、ジョージのギターが際立つ非常にクールでワイルドな作品である。 歌詞は難解、というより意味不明であるが、1番をジョン、2番をポール、3番をジョージ、4番をリンゴと、それぞれメンバーについて歌われていると言われているが真相は不明。 ジョン自身、ビートルズ時代の曲でも最も気に入っているものの1つだという。

『ビートルズ・アンソロジー3』にはジョンのボーカルが熱い第1テイクを聴く事が出来る。手拍子と一緒に「Shoot me!」(俺を撃て!)とジョンが歌っているのがはっきりと聴こえる。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


「カム・トゥゲザー」と両A面として発表されたジョージの作品。 ジョージにとっては最初で最後となるビートルズ・シングルA面曲である。全米1位。 繊細なリードボーカルはジョージ、コーラスはポール。 レノン=マッカートニーとは一味違うジョージ独特の非常に繊細かつ美しいバラードであり、彼のビートルズ時代の代表作となった。

イエスタデイ」に次いでカバーの多い曲としても有名。 ジョー・コッカーやエルビス・プレスリー、フランク・シナトラなどにも取り上げられている。

「カム・トゥゲザー」同様、リンゴのドラムが絶品。ジョージのギター・ソロも名演奏で、"ジョージここに極まりし"である。 またポールの歌うようなベース・ラインは非常に素晴らしいが、ジョージ自身はメロディアスすぎる事が好きではないらしい。まあ当時の2人の関係がそう言わせたんだろうけど。 ジョンとポールはこの曲を絶賛している。とにかく名曲、名演奏曲である。

作者:G.Harrison

リード:George


ポールお得意の物語風作品で、架空の人物マックスウェル・エディスンが銀のハンマーで次々と撲殺していくといったホラーチックな内容を、言葉遊びのように韻を踏んだ歌詞で陽気に歌い上げている。

ポールが演奏しているモーグ・シンセサイザーと、マネージャーのマル・エヴァンスが叩く鉄琴の音が印象的である。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


ポールが作ったオールドソウル風のロック曲。 「ロング・トール・サリー」での熱唱を彷彿させるポールのボーカルであるが、レコーディングではかなり苦労したようで、「5年前ならこんなの簡単に出来たのに…」と呟いたそうだ。 ジョンはこの曲を非常に気に入っていたらしく、後のインタビューで「俺が歌ったほうがうまく歌えた」と発言している。

そういえば昔(86年頃)日産のCMでこの曲が取り上げられた事があったっけ。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


リンゴが初めて1人で作ったカントリー調の作品。リードボーカルもリンゴ。 「イエロー・サブマリン」の姉妹曲のような和やかな作風であるが、「海の底へ逃げてしまいたい」という歌詞は当時のメンバー間のギクシャクした雰囲気を表わしているといわれている。

曲中の泡の効果音はジョンがコップの水をストローで噴いたもの。 何気なく弾かれているジョージのギターであるが、このスピード感は中々の腕前である。

作者:R.Starkey

リード:Ringo


ジョンがオノ・ヨーコに捧げた重々しいラヴソング。 リードボーカルはジョンで、コーラスはポールとジョージ。 ボーカルとユニゾンのギター・フレーズはジョンの演奏で、後のソロ作品「ウェル・ウェル・ウェル」に通じるものがある。 延々と続くエンディングにはジョンによるモーグ・シンセサイザーが挿入され、ミックス時にジョン自身が「そこでテープを切れ!」と叫んで突然終わる編集を行っている。

トライデント・スタジオとEMIスタジオを併用し、レコーディングは半年以上に渡って断続的に続けられた労作。スタジオにメンバー4人が揃ったのは、この曲の最終編集を行った日が最後になる。 アナログ盤ではこの曲がA面最後。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


ジョージがアップルの打ち合わせを抜け出し、親友のエリック・クラプトンの家へ遊びに行った時に作ったアコースティック色溢れる明るい作品。 リードボーカルはジョージ、コーラスはポール。 モーグ・シンセサイザーが大胆に導入されており、日本でも大変人気の高いナンバーである。

ジョージはソロアルバム『ダーク・ホース』で、自身のアンサーソング「ヒア・カムズ・ザ・ムーン」という作品を発表している。

作者:G.Harrison

リード:George


ジョンが書いた厳粛なラヴソング。ヨーコにベートーヴェンのピアノソナタ「月光」のコードを逆に弾いてもらい作曲のモチーフにしたという。 ボーカルはジョン、ポール、ジョージによる3重合唱を3回オーバーダビングして重厚なコーラスを作っている。 モーグ・シンセサイザーやエレクトリック・ハープシコードを使ったクラシカルな雰囲気を持つ非常に美しいサウンドであるが、ジョンはアレンジに不満を持っていたという。 ポールとジョージは本作をこのアルバム中最も好きな曲だと語っている。

『ビートルズ・アンソロジー3』にボーカルのみのアカペラ・バージョンが収録されているが、こちらの方が美しさが際立っている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John,Paul,George


ポールが会社アップルの財政難について書いたピアノの弾き語り曲。

ここから「ジ・エンド」までは2つのメドレー構成になっているが、この曲が1つ目のメドレー開幕曲になっている。 ゴスペルタッチでドラマチックな展開を見せる名曲だ。

曲の中盤から激しさを増し、ポールのボーカルも途中からプレスリーばりのバリトン風に変わる。 エンディングに聴こえるベルとコオロギの鳴き声の効果音はポールが自宅で録音したもの。

日産サニーのCMソングにビートルズ第3弾としてこの曲が使われていたね。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


前曲から切れ間無く続くジョンの作品で、ボーカルも彼。 歌詞に意味不明のポルトガル語が出てくる、オルガンが効果的に使われているスローテンポの小品。 別称“太陽王”のルイ14世を歌ったものなのか?

2006年にリリースされたビートルズの録音テープを編集してリミックスしたコラージュ・アルバム『ラヴ』に、この曲を逆再生したトラックが収録されている。タイトルも逆さまの「グンキ・ンサ」(Gnik Nus)。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


68年のインド滞在時に作られたジョンの物語風作品。 歌詞はマスタード氏というホームレスの日常を綴ったもの。 リードボーカルはジョン、息の合ったハーモニーはポール。この曲はメドレーのように「サン・キング」と一緒にレコーディングされたもの。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


ジョンが作ったアップテンポナンバー。リバプール訛りで歌われるリードボーカルもジョン。 詞の内容は「ミーン・ミスター・マスタード」の続編になっていて、マスタード氏の妹、パン・マスタードについて歌われている。 この曲と「ミーン・ミスター・マスタード」は、68年5月頃にジョージの自宅でデモが録音されていて、『ビートルズ・アンソロジー3』で聴く事ができる。

個人的な感想だが、デビュー前からのジョンのお気に入り「エイント・シー・スィート」(エイガー&イェレン作)に曲調が似ている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


1つ目のメドレーの最後の曲。

自宅のバスルームの窓から忍び込んだファンについて書いたポールの作品。 ジョー・コッカーのカバーが有名であるが、コッカー曰く、本当は「ゴールデン・スランバー」をカバーしたかったそうで、ポールから「ゴールデン・スランバー」の替わりにこの曲を提示されたらしい。 リードボーカルはポール、コーラスはジョンとジョージ。 印象的なギター・フレーズはジョージによるもの。 縦横無尽に動き回るポールのベースも聴き所。

『ビートルズ・アンソロジー3』にはテンポがもっとスローでブルージーな初期バージョンを聴く事が出来る。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


2つ目のメドレー開幕曲。

ポールが幼い妹(父ジム・マッカートニーが再婚後の子供)の絵本の中から子守唄『ゴールデン・スランバー』を見つけ、その歌詞にメロディをつけた抒情詩。 ピアノを弾きながら歌われるポールの感傷的なボーカルは、途中で搾り出すような熱唱を聴かせる。コーラスはジョージとリンゴ、ポールの3人。ジョンは交通事故で入院していてレコーディングには不参加。 ジョージのベース、リンゴのドラム、そして繊細かつ壮大なオーケストラがこの曲をドラマチックに仕上げている。 曲は切れ間無く次曲「キャリー・ザット・ウェイト」に繋がっていく。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


ポールが作った迫力あるピアノ弾き語り曲。レコーディングの最初から前曲と繋げて演奏されている。

「君はこれからその重荷を背負っていくんだ、ずっと」という表現は、グループ解散をほのめかしているようだ。 途中で「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」のメロディと歌詞が再登場し、アルバムB面が統一された連作であることを強調している。 叩きつけるようなピアノとドラム、ティンパニーがクライマックスを迎えたかのように一気に輝きを放ち、そのまま「ジ・エンド」へと突入する。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


2つ目のメドレーとアルバムを締めくくるポールの作品。4人によるレコーディングは最初からアルバムの最終曲として考えていたようだ。

冒頭のポールのボーカルの後、リンゴの素晴らしいドラムソロが披露される。 ジョンとジョージ、ポールのコーラスをバックに、2小節毎にポール、ジョージ、ジョンの順でギターソロが3回繰り返され感動のフィナーレを向える。 ここでのギターバトルはジョージが1番うまいが、個性の強さでジョンに軍配が上がったかな、と小生は思う。 最後の歌詞「あなたが得る愛は、あなたが与える愛に等しい」は全世界のファンに向けられたメッセージのように聴こえる。

ジョンは解散後にこのアルバムのB面を「あれはガラクタを集めたものだから」と発言していたが、最後のメドレーはビートルズ楽曲史上屈指の聴き所になっているのは確かだ。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


前曲「ジ・エンド」の演奏後、20秒の無音の後に突然始まる僅か23秒の小曲。 ポールが作ったアコースティック・ギターによる弾き語り曲で、女王陛下を皮肉った(こ馬鹿にした)内容である。 ド天然のポールは2002年のエリザベス女王載冠50周年コンサートでこの曲を初めてライブ演奏している。女王本人が見ている前で。

ポールとジョージ・マーティンは当初この曲を「ミーン・ミスター・マスタード」と「ポリシーン・パン」の間に編集していた。 そのため、この曲の冒頭のギターは「ミーン・ミスター・マスタード」の最後の1音である。

発売された当時のアナログ盤ではジャケットにこの曲のタイトルクレジットが無かったため、「ア・デイ・インザ・ライフ」のおまけと同じような意図があったのかも知れない。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul





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