ラバー・ソウル
Rubber Soul

(アルバム)


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ロックに初めて芸術的評価を与えた問題作。感覚のロックに知性の息吹が横溢!!

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プロデュース:ジョージ・マーティン

Parlophone Revel 1965.12.3


ヒストリー

2作目の映画『ヘルプ!』がヒット中の頃、65年8月には憧れだったエルビス・プレスリーとの対面を果たしたビートルズ。 その頃頻繁に行われていた野外コンサートも大盛況となりアイドルグループとしてピークを迎えていた。 因みにロサンゼルスのエルビス邸では、ジョンの辛辣なジョークがエルビスを怒らせたという。 エルビスはステージでポールとジョージの曲は歌ったが、ジョンの曲は歌わなかったそうだ。

そんな中、前作『ヘルプ!』で垣間見られた歌詞・楽曲の変化は、アイドルからアーティストへの変貌を予感させるものになった。 ロック界のターニング・ポイントはすぐそこまでやって来ていたのだ。


アルバム解説

65年12月3日にシングル「デイ・トリッパー/恋を抱きしめよう」と同時に発表された英国における6枚目のオリジナルアルバム。

収録曲の多くは思考を凝らしたメロディや新たな楽器の使用など従来のR&Rから脱却した独創的なサウンドへのアプローチが見られ、それまでの作品とは明らかに一線を画した内容になっている。 また、全体を通じて感じられるアコースティックな色彩が不思議な統一感、一体感を醸し出しており、まるで1つの楽曲を聴いているかの印象を与えている。 そういった点でも本作は従来のロックアルバムの概念を変えた1枚といえるし、グループがポップスの常識を打ち破った最初の作品ではないだろうか。 米国のロックバンド“ザ・ビーチ・ボーイズ”の中心メンバーであるブライアン・ウィルソンはこのアルバムの完成度の高さに衝撃を受け、名作『ペット・サウンズ』制作を決意するきっかけとなった事は有名なエピソードである。

“ラバー・ソウル”というタイトルはポールの発案で、ソウルミュージックとゴム底の革靴「ラバーソール(rubber sole)」の綴りをもじった俗語。 当時、黒人ブルース・マンたちがローリング・ストーンズを揶揄した言葉“プラスティック・ソウル”(偽りのソウル)に起因しているらしい。

ジャケット写真はロバート・フリーマンがジョンの自宅で撮影したもので、試写時のボール紙が曲がっていたために歪んで写し出されたものをメンバーが大いに気に入り、あえて歪んだ写真となった。

レコードのステレオミキシングは、片チャンネルにボーカル、片チャンネルに演奏を振り分けた初期ミックスに近いものであるが、これはアナログプレーヤーで再生した際に聞き手が最もバランス良く聴こえるようにジョージ・マーティンが試行錯誤した結果といわれている。 『ラバー・ソウル』初回プレス盤はカッティングの溝が深く針飛びを懸念した工場が修正している。僅かに出荷されたものは“音圧が強い”、“低音が効いている”など噂を呼びコレクターアイテムとなっている。

アメリカではレコード会社が無断で収録曲を入れ替えて販売した。 アメリカ版『ラバー・ソウル』は、「ドライヴ・マイ・カー」「ひとりぼっちのあいつ」「消えた恋」「恋をするなら」を外し、「夢の人」「イッツ・オンリー・ラヴ」を入れたため、フォークソング集的なニュアンスが強まっている。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

ポールが作った軽快なモータウン調ロック。歌詞の一部をジョンが手伝っている。 シャウト気味のリードボーカルはポール、ジョンが低音のハーモニーを担当。 ポールのピアノとジョンのカウベルがドライで乾いた感じを演出しており、それまでの彼らの作風とは違った印象を持つ作品となった。

裏から入るギターにベースが絡み付いてくるイントロなど非常に独創的である。 粘っこいギターはジョージの演奏。

アメリカ黒人ソウルシンガーのオーティス・レディングの自作曲「リスペクト」が同年夏にヒットしていたが、そのギターリフを取り入れたのはジョージのアイディア。 ポールも気に入ったようで、ベースもギターリフと同じフレーズをなぞっている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


妻のシンシアに内緒で浮気した事を歌ったジョンの作品。

ジョージが初めてインド楽器のシタールを使用しており、しっとりとした北欧のイメージをうまく表現している。ジョンのアコースティックギターとポールのベースも曲にしっとりとした表情を与えている。 淡々と歌われるリードボーカルはジョン、透明感を際立たせている高音のハーモニーはポールによるもの。 邦題は「ノルウェーの森」であるが、「ノルウェー製の家具」というのが本来の意味である。

『ビートルズ・アンソロジー2』ではよりインド音楽っぽい初期バージョンを聴く事ができる。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


全編ボーカルがフィーチャーされたポールの作品。 リードボーカルはポールの2重唱、コーラスはジョンとジョージ。 ポール得意のポップな作風であるが、リンゴのドラムとポールのピアノのコンビネーションなど工夫が見られる秀作である。 又、ハイハットがオーバー・ダビングされリズムが強調されている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


分厚いアカペラから始まるジョンが作った名曲。 ジョンのリードボーカルにポールとジョージがハーモニーをつけた3重唱で歌われている。

ジョンは無口なジョージの事を歌ったと言っていたが、「ヘルプ!」同様にジョン自身を歌ったものであろう。 アメリカでは「消えた恋」とのカップリングでシングルカットされ、ミリオンセラーを記録した。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


ジョンとポールのコーラスが素晴らしいこの曲はジョージの作品。

リードボーカルはジョージ。 ポールのベースはダブルトラックであるが、1つはファズを通したもので、怒った雰囲気を見事に表現している。 リンゴが叩くパーカッションのマラカスがリズミカルだ。

作者:G.Harrison

リード:George


普遍的な愛について歌われるジョンとポールの共作曲。

リードボーカルはジョン、ポールとジョージがコーラスをつけている。 歯切れのいいリズムギターとマラカスがアップテンポなリズムを刻む、タイトで緊迫感ある作品に仕上がっている。

縦横無尽に動き回るポールのベースが秀逸で、このアルバムセッションから使い始めたリッケンバッカーがソリッドな切れ味を演出している。 彼の演奏はこのアルバム以降さらに個性的、革新的になっていく。 後半に登場する高音の鍵盤楽器はジョージ・マーティン演奏のハーモニウム。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


ポールが作った非常に美しいラヴ・バラード。 ジョンとジョージの淡々としたコーラスをバックにポールのリードボーカルも感情を抑え気味でとてもクールな印象を与えている。 詩の一部にフランス語が用いられ、曲調もシャンソン風だ。 ジョージが弾く中間部のギター・ソロもとてもお洒落である。

オープニングとサビに使われているアコースティックギターの半音づつ下降するフレーズはポールが演奏するクリシェ奏法。 ポールはビートルズ解散後の初のソロ・アルバム『マッカートニー』に収録された「ジャンク」という曲でもクリシェの名演を披露している。

シングル・カットはされていないが、「イエスタデイ」に匹敵する名曲であり、多くのアーティストにカバーされている。 66年度グラミー賞においてポールは最優秀楽曲賞を受賞している。

それと、ポールはドキュメンタリー作品『マッカートニー 3,2,1』の中でこの曲がフランスの伝説的シャンソン歌手であるエディット・ピアフのヒット曲「ミロール」にインスパイアされたと語っていて、エンディングでほんの僅かにスローテンポになる事にも触れている。

蛇足であるが、原田真二の「キャンディ」や荒井由美の「ベルベット・イースター」とかはこの曲に影響を受けたものではないか。←違うかな?

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


曲の大部分をジョンが作り一部をリンゴが手伝っているため、クレジットに初めてリンゴの名前が載った曲。

リードボーカルはリンゴ、ジョンとポールがコーラスでサポートしている。 リンゴ好みのカントリータッチの作風で、このアルバムでは他の作品と趣が異なる曲調である。

作者:J.Lennon - P.McCartney - R.Starky

リード:Ringo


ジョンが作った辛らつなバラード。 切ないリードボーカルはジョン、ポールとジョージはクールなバックコーラスを聴かせる。 印象的なアコースティックギターはジョンとジョージのプレイ。 独特のクセのあるメロディは、後年のジョンのソロ作品「オー・マイ・ラヴ」を彷彿させるものがある。 曲中のブレス音はマリファナを吸う音を連想させると話題となった。

ジョンは80年に発表した「ウーマン」について「これは1980年版の『ガール』だ」と語っている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


ポールが作ったフォークソング調の作品。 リードボーカルとハーモニーもポールの多重録音で、サビはシャウト気味に歌われている。 ポールの当時の恋人ジェーン・アッシャーに向けた内容となっていて、彼女との喧嘩を嘆いた歌詞である。 リンゴはこの曲のパーカッションにマッチ箱を叩いているそうだ。

『ビートルズ・アンソロジー2』ではもっとテンポがゆったりしたぼつバージョンが収められているが、こちらの出来も素晴らしい。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


当時25歳のジョンが故郷のペニー・レインに思いをはせたスローテンポの抒情詩。 詩が完成したあとにポールと2人でメロディを作ったといわれている。

リードボーカルはジョン、息の合ったハーモニーはポールとジョージ。 「エリザベス朝のソロを入れて欲しい」というジョンの要望で入れられた間奏のバロック調ピアノ・ソロはジョージ・マーティンの演奏で、テープ速度を倍のスピードで再生しハープシコードのような音にしている。

ボーカル・グループとしてはあまり語られないビートルズであるが、この曲や「ひとりぼっちのあいつ」「ユー・ウォント・シー・ミー」など、このアルバムでは分厚いコーラスをフューチャーした作品が多い。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


ジョンとポールの共作。リードボーカルはジョンとポール、サビの部分はポールがダブルトラックで歌っている。 「アイ・ニード・ユー」と同じくジョージのギターはボリュームペダルを使ったヴァイオリン奏法。 ここでもパーカッションのマラカスが効果的に使われている。

前作『ヘルプ!』で選曲に漏れたものであるが、本アルバムにとてもマッチした作風である。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John,Paul


ジョージの作品で、彼の初期の代表作。リードボーカルはジョージで、コーラスはジョンとポールが担当。 印象的なギターリフはジョージが弾くリッケンバッカー12弦ギターである。 ジョージはこの曲をアメリカのバンド、バーズにインスパイアされたと言っている。バーズのギタリストのロジャー・マッギンは12弦ギターの名手である。

当時、英国バンドのホリーズがシングル曲としてカバーしたが最高位20位という結果に終わった。怒ったジョージはホリーズのコーラスを酷評したそうだ。

日本公演でも演奏されたが、ジョージのギターとボーカルはぎこちなかった。

作者:G.Harrison

リード:George


ジョンの作品でリードボーカルも彼。 サビではポールとジョージがコーラスをつけている。 冒頭の歌詞はエルビス・プレスリーの「ベイビー・レッツ・プレイ・ハウス」から引用したもの。 ジョンらしい荒削りでアップテンポなR&Rの曲調であるが、彼自身は「アルバムのいい空気をぶち壊している」「ゴミ箱行きの曲」と後のインタビューで酷評している。 ジョージはこの曲を気に入っているらしいが。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John





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