リボルバー
Revolver
(アルバム)
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ジャケット、詩そして音、その全てにアートの香りが溢れているビートルズの頭脳的傑作集
前のアルバム 次のアルバムプロデュース:ジョージ・マーティン
Parlophone Revel 1966.8.5
曲目リスト
ヒストリー
コンサートはビートルズにとってデビュー以前からの重要な音楽活動の場であったが、増々過熱化する観客によるライブ会場の混乱や過酷なツアー・スケジュールなど、次第にメンバーたちの不満が募っていった。 66年3月のジョンの発言「僕らはキリストより有名」はアメリカで大きく報道され、南部では各地で非買運動や暴動を誘発、クー・クラックス・クラウンによる襲撃予告など深刻な事態となった。 7月のフィリピン公演では、イメルダ夫人の歓迎パーティーを辞退したビートルズに対し国民が怒り、帰路の飛行場で大騒動に発展した。
もはやビートルズ4人の興味はライブ活動からスタジオワークへと移り、8月29日のサンフランシスコ公演を最後にコンサート活動の終了を決定する。 一つの時代が終わり、新たな時代が幕を明けた。
アルバム解説
66年8月5日に発表された7枚目の英国オリジナルアルバム。 『ラバー・ソウル』以降、彼らの音楽は急速に変化を遂げ、詩の内容もそれまでの“男女の愛”から、より普遍的、哲学的なものへと変化が見られるようになる。
メンバーはこの時期にマリファナやLSDなどを体験しており、ドラッグの影響下で作られた作品も本作に収録されている。 前作に比べるとアルバムの統一感は希薄になったが、個々の楽曲のクォリティはより高くなり、芸術性を有した作品が多く収録されている。 特に多様なジャンルに才覚を見せるポールの活躍が目覚しく、音楽面において主導権がジョンからポールに変わりつつあることを示唆するものとなった。 又、ジョン、ポール、ジョージの個性が今まで以上に明確になってきており、全員がレコーディングに参加しない曲もちらほらみられるようになった。 このセッションから参加するようになった若きサウンド・エンジニアのジェフ・エメリックにより、録音技術にも様々な実験的試みがなされるようになっていく。
『リボルバー』はアーティストとしてのビートルズがスタジオワークに没頭した最初のアルバムと言えるだろう。 まだライブ活動も行っていたが、収録曲がコンサートで演奏される事はなかった。 アルバムタイトルは、拳銃のリボルバーからつけられたといわれているが、「回転する」「展開・変化する」という意味が込めれれていると思われる。 ジャケットデザインはハンブルグ時代の友人クラウス・フォアマンによるもので、写真にイラストを書き込んだポップアートな感覚に満ちた素晴らしいものになっている。
アメリカでは「アイム・オンリー・スリーピング」「アンド・ユア・バード・キャン・シング」「ドクター・ロバート」をカットして販売された。 カットされた3曲はアメリカ編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録されたが、このアルバムのジャケットは白衣を着たメンバーが肉片とばらばらの赤ん坊の人形を持った気味の悪いものを使用。 これは自分たちの楽曲の創作意図を無断で歪曲された事に対するキャピタル・レコードへの抗議が目的と言われ、『リボルバー』以降のオリジナルアルバムはアメリカでもすべて英国版と同じ内容に統一された。 レコード会社は『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』発売直前に慌てて回収したが、僅かに出回ったものは“ブッチャー・カバー”と呼ばれ、コレクター・アイテムになっている。
2022年には1トラックの音源を分離する最新AI音源分離技術も使われたニュー・ステレオ・ミックスや、貴重なセッション音源を収録した『リボルバー・スペシャル・エディション』が発売され、このアルバムの新たな魅力を楽しむ事が出来る。
ジョージが書いた力感溢れる傑作ロックナンバー。 好奇心を書き立てる冒頭のカウントはポールによるもの。 歌詞は、当時95%の課税を富裕層に課していたウィルソン政権に対し皮肉を込めた内容になっている。
リードボーカルはジョージ、コーラスはジョンとポール。 ジョージのボーカルには、左右の音を電気的にずらしてダブルトラックの効果を得るADT(Artificial Double Tracking)という技術が初めて使われている。
間奏とエンディングの印象的なギターソロはポールの演奏で、インド音楽風のエッセンスはジョージも気に入っている。また、ポールのベースは1オクターブの音を多用しており、この奏法は以降の作品にもしばしば見られるようになる。
ポールが書いたバロック・ポップの名作。 13枚目のシングル「イエロー・サブマリン」と両A面扱いでリリースされ、全英チャート1位を獲得。
リードボーカル、コーラスはポールによる多重録音、オープニングと後半の2箇所のコーラスでジョンとジョージが歌っている。この曲もポールのBメロのボーカルに左右の音を電気的にずらしてダブルトラックの効果を得るADTを採用している。 レコーディングはポール、ジョン、ジョージがボーカルのみの参加。演奏はストリングスのみ、編成は「イエスタデイ」の倍の8重奏。リンゴはこのセッションには不参加である。 ポールはこの曲でグラミー賞最優秀歌唱賞を受賞している。
エリナー・リグビーやマッケンジー神父といった架空の人物が登場する抒情詩で、詩の一部をジョンが手伝っている。 後にリバプールのセント・ピーターズ教会のウールトン共同墓地にまったくの偶然であるが、同姓同名エリナー・リグビーの墓があることがわかった。現在はリバプールにエリナー・リグビーの銅像があるそうだ。
唐突なオープニングとエンディング、嵐の如く鬼気迫る秀逸なストリングス・アレンジ、この斬新さが際立つ作風はそれまでのロックの常識を打ち破る創意溢れるものだ。
『イエロー・サブマリン~ソングトラック~』ではボーカルのADT加工を追加したリミックスを収録。ちょっとやりすぎでしょう、さすがにこれは(汗;)。
ジョンが作ったけだるい雰囲気を持つフォーク調の名曲で、時間に追われる現代人を風刺した内容が歌われている。
リードボーカルはジョン、魅惑的なコーラスはポールとジョージ、間奏に欠伸のような効果音が聴こえる。 ポールのベースとリンゴのドラムが重々しいサウンドに仕立てている。 ジョージが弾く間奏とエンディングの奇妙なギターのフレーズはテープの逆再生で、幻覚的なイメージを見事に表現している。
ステレオ・ミックスとモノ・ミックスでは逆再生ギターの入る箇所が違う。
アルバムの中で異彩を放つジョージの作品。
開放弦が鳴り響く琴に似たタンプーラ、ノルウェーの森で初めて使用されたシタールや音階を持つ打楽器のタブラなど、インド音楽の楽器を駆使したビートルズ初の本格的なラーガ・ロック。 リードボーカルはジョージ、シタールとタンプーラもジョージによる演奏 シタールはジョージ、タンプーラはポールによる演奏 である。 タブラはスタジオ・ミュージシャンのアニル・パグワットによるもの。
ジョージはラヴィ・シャンカルに弟子入りするなどインド音楽に入れ込むが、その後もマハリシ・マヘシ・ヨギに教えを乞いインド哲学にも心酔していく事になる。
因みに、キンクスの「シー・マイ・フレンズ(See My Friends)」(65年7月)やバーズの「霧の8マイル(Eight Miles High)/何故(Why)」(66年3月)など、当時のロック・シーンではインド風音楽が注目されていたようだ。
非常に美しいラヴ・バラードで、作者のポール自身も非常に気に入っている佳曲。
フォルセットで歌われているリードボーカルはポールのダブルトラック録音、バックコーラスはポール、ジョン、ジョージの3人による非常に息の合ったもの。 ポール曰く、ビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」に触発されて書いたとの事。 ジョンは後のインタビューで、「ポールが書いた曲の中で最も好きなものの一つ」と評価している。
85年頃、日産サニーのCMソングとしてこの曲が使われていたのを思い出します。
13枚目のシングル曲として66年8月5日にアルバム『リボルバー』と同時にリリースされた。全英、全米共に第1位を記録。
ポールが子供の唄として作った ジョンがヴァース、ポールがサビを書き、子供の唄として作った 遊び心満載の作品で、歌詞の一部を歌手のドノヴァンが手伝っている。 リードボーカルはリンゴが担当、コーラスはジョン、ポール、ジョージの3人による合唱。 英国ではリンゴのリードボーカルのシングル曲はビートルズ時代ではこの曲が唯一。 (但しアメリカでは「マッチ・ボックス」「アクト・ナチュラリー」「消えた恋」がシングル・カットされている)
水の入ったバケツを使って波の音を出したり、エンジン音や汽笛など様々な効果音を手作りで録音、イエロー・サブマリン号航海の様子を描写している。 コミカルな添乗員の掛け声はジョン、エンディングにおけるコーラスはスタジオに居合わせた全員による大合唱。 2年後の68年公開のアニメ映画『イエロー・サブマリン』のメイン・テーマソングとなった。
99年のリミックス・アルバム『イエロー・サブマリン~ソングトラック~』には臨場感が半端無いニュー・ステレオ・ミックスが聴ける。
ジョンが俳優のピーター・フォンダとLSDを服用した時の体験を題材として作ったドラッグ・ソング。 リードボーカルはジョン、コーラスはジョージ。 ファズ・ギターが全面にフィーチャーされた典型的なロック曲であるが、初めて“死”をテーマにした歌詞は話題となった。 リンゴの激しいシンバルがトリップした状態を感覚的に表現している。
スタジオで口論となりポールはレコーディングに参加していないため、ベースを弾いているのはジョージである。 ベースを弾いているのはポールであるが、口論となりレコーディング途中でスタジオを飛び出したため、ポールはコーラスに参加していない。
ポールが作った明るく爽やかなミディアム・テンポの小品。 リードボーカルはポール、コーラスはジョンとジョージ。
コード弾きのピアノはポール、間奏のボードビル調のピアノはプロデューサーのジョージ・マーティンの演奏。 この作風はアメリカのポップ・ロック・グループのラヴィン・スプーンフルの影響を受けているといわれている。 以降、ポールはこのようなオールド・スタイルの楽曲を時々提供するようになる。
ジョンが作った歯切れのいいロックンロール・ナンバー。 リードボーカルはジョン、終始ポールがハーモニーをつけている。 印象的なギターリフは、ジョージとジョンのツイン・ギター。初期のリフに比べ、より複雑になっている。 ここでもポールのオクターブ奏法のベースを聴く事が出来る。
ジョンとポールが曲の途中で何故かゲラゲラ笑い出すリハーサルが『ビートルズ・アンソロジー2』で聴く事が出来る。
アラン・シヴィルによるフレンチ・ホルンがフィーチャーされたラヴソングで、クラシカルな雰囲気を持った隠れた名曲。 ポールの作品で、失恋した女性について淡々と綴られる歌詞が秀逸。 感情を抑えたポールのリードボーカルも実に素晴らしい。
レコーディングに参加しているメンバーはポールとリンゴの2人のみ。 ポールはピアノとベース以外にもバロック期の鍵盤楽器クラビコードを演奏しているが、この絶妙なセンスは脱帽である。
84年のポール主演映画『ヤァ!ブロードストリート』では、この曲のストリングス・アレンジの演奏シーンを見ることができる。 また、映画挿入曲として「エリナー・リグビー」「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」「グッド・デイ・サンシャイン」と、4曲もこのアルバムから選曲された点は興味深い。
ジョンの作品。リードボーカルはジョン、コーラスはポール。ポールが作った中間部のフレーズはジョンが弾くオルガンをバックにポールが歌っている。
曲調は『ラバー・ソウル』以前のシンプルなロックスタイルであるが、歌詞はドラッグを処方するニューヨークの医師ロバート・フライマンについて歌ったもの。 フライマンは67年に医師免許を剥奪され、75年には医師会を追放されている。
ジョージが作った風変わりなラヴソング。リードボーカルはジョージ、ハーモニーはポールとジョンによるもの。 独特の旋律を奏でるピアノはポールの演奏。 掴みどころが無い作品なのだが、何故か“クセ”になるんだよなー、この曲。
91年のジョージ来日コンサートではこの曲がオープニング・ナンバーとして披露され、ファンを大いに驚かせた。
モータウンの影響を受けたといわれているポールが作ったブラスロック。 歌詞の一部をジョンとジョージが手伝っている。 熱唱スタイルのボーカルはポール、ジョンはサイドギター、後半のリードギターはポール、ジョージもギターを弾いているがホーンの音に掻き消されて殆ど聴き取れない。
ブラスを前面にフィーチャーしたサウンドはビートルズとしては異色で、米国バンドのシカゴなど、他のアーティストに大きな影響を与えた。 このアルバムにおけるポールのバラエティに富む作品群は、ジャンルに捕らわれない彼の作曲家としての才能を雄弁に語るものである。
ジョンが作ったグループ初のサイケデリック・ソングで、リボルバーのセッションで最初にレコーディングされたもの。 曲のタイトル“トゥモロー・ネヴァー・ノウズ”はリンゴが何気なく呟いた一言からつけられたという。
ジョンのボーカルはダライ・ラマの説法をイメージして、ハモンドオルガン用のレズリースピーカーを通している。 歌詞はチベットの『死者の書』から引用しているといわれ、間奏以外Cコードで貫かれている。
インドの弦楽器のタンプーラがイントロから全編にわたって鳴り響いており、リンゴの激しいドラムと相俟ってサウンドに独特の効果を与えている。 間奏とエンディングに聴こえる鳥の鳴き声のような効果音はポールが自宅で作ったテープループで、ギターの音が高速再生されたもの。 サウンド・エフェクトを駆使した大作であるが、この時代で既に録音テープを繋いだサンプリング手法を取り入れている点は驚きである。
『ビートルズ・アンソロジー2』ではもっと前衛的なアレンジの初期バージョンを聴けるが、こちらの出来映えも素晴らしい。
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