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68年6月にキャピトル・レコードから発表されたビーチ・ボーイズ15枚目のオリジナル・アルバム。
ブライアン自身が最も好きなアルバムと明言している事でも知られている。



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プロデュース:ビーチ・ボーイズ

Capitol Revel 1968.6.10


ヒストリー

1967年12月15日、ビーチ・ボーイズはユニセフのチャリティ・コンサートに出演するためパリに滞在していた。 エリザベス・テイラーやインド音楽家ラビ・シャンカールなども出演するこのコンサート会場で、デニス・ウィルソンは宗教家のマハリシ・マヘシ・ヨギと出会う。 マハリシはTM(トランセンデンタル・メディテーション=超越瞑想)を説く導師で、ビートルズのジョン・レノンやジョージ・ハリスンもTMの熱心な信者であった。 不思議な雰囲気を持ったマハリシに惹かれたデニスは、さっそくメンバーに引き合わせる事に…。

TMに大変興味を持ったメンバー達(ブルース・ジョンストンを除く)は、マハリシの瞑想集会に積極的に参加するようになる。 瞑想するためにわざわざインド北部のリシケシュまで出向く熱の入れようだった。 特にマイク・ラヴのTMへの傾倒は著しく、グループのコンサートとマハリシの講義を合同で行うまでに至った。 マイクが提案したこの行為はビーチ・ボーイズを観に来るファンすら会場から遠ざける愚挙であった...(汗)。 その後マハリシのスキャンダル(女優のミア・ファローの妹を口説いたという)が発覚したことで、ジョンとジョージを含む多くの信者が離れるが、ビーチ・ボーイズはその後もずっとTMを信仰し、マハリシを支援し続けることになる。

ブライアンはそれほど瞑想に興味を持つ事もなく、『スマイル』のショックを抱えたまま心の恐怖と闘っていた。 おかしな事に当時の彼はフィル・スペクターに命を狙われているという妄想にとりつかれ苦悩していたという。 その頃覚えたコカインを常用するようになり、気が向いた時にしかレコーディングに参加しなくなっていた。 ずっと後になって精神分裂症と診断されるのだが、周囲の者は彼のおかしな行動や言動について“ブライアンの気まぐれ”としか考えていなかったのだ。

不吉な予感を感じさせる68年。グループはレコード業界から忘れられた存在となった。


アルバム解説

1968年6月10日にキャピトル・レコードから発表された通算15枚目となる作品。 アメリカにおけるアルバム・チャートは最高でも126位と過去最低のセールスを記録した。にもかかわらず、作品の出来栄えは素晴らしいものである。

6人のメンバーが描かれたパステルカラーのアルバムジャケットはリラックスした印象を与え、擬人化された木々や雲、大地にはメンバーの顔がサイケ調に映りこんでいる。

レコーディングはブライアンの自宅のスタジオとIDサウンド・スタジオで行わた。 グループ低迷期にも関わらず、サウンドはジャケットのイメージ同様に全体的に柔らかくまったりとしている。 爽やかで心が癒されるような優しさに満ちた作品が多く、前作で希薄だった芳醇なコーラスがふんだんに使われているのが特徴的。 デニスが初めて本作でオリジナル作品を提供するが、ブライアンは弟の豊かな才能に驚嘆し大いに刺激を受けたという。 プロデュースはまたもやビーチ・ボーイズ。

オール・サマー・ロング』以来、久しぶりのステレオ・ミックスとなり、グループのモノラル・ミックスの時代は終了した。 そして本作はブライアン自身が最も好きなアルバムと明言している事でも知られ、多くのファンからも支持されている作品なのである。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

ブライアンとマイク共作のアルバムの始まりを告げる前奏曲。 オルガンとピアノをバックに歌われる、厳粛な雰囲気のリード・ボーカルはマイク、エンディングではメンバーのコーラスが美しく交錯する。

2013年のボックス・セット『カリフォルニアの夢』には、中間部にブライアンが異なるメロディを歌う未発表バージョンが収録され、ファンを驚かせた。 又、95年のブライアンのセルフ・カバー集『駄目な僕』でも取り上げれている。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike


ブライアン、カール、デニス、アルの共作によるワルツ調の和やかな作品。 ずっと続く友情についての歌詞は、ビーチ・ボーイズのメンバーの思いが綴られていると言える。 リード・ボーカルはブライアンと、前作『ワイルド・ハニー』からメイン・ボーカルが増えたカール。マイクはTM修行のためにインド滞在中で不参加。

コーラスがふんだんに使われ、控えめなホーン・セクションやハーモニカ、幻想的なヴィブラフォン、エレクトリック・ピアノなどが優しいサウンドを奏でる。 このゆったりとした心を癒す感覚は本アルバム全体に通じる作風である。 68年4月8日、アルバム先行シングルとして発表、最高47位をマーク。B面はデニスが書いた「リトル・バード」。

2018年に配信されたフレンズのセッション集『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』にはこの曲のバッキング・トラックと美しいアカペラを聴く事が出来る。

作者:B.Wilson - C.Wilson - D.Wilson - A.Jardine

リード:Carl, Brian


少し哲学的な感じもする前向きな歌詞、夜が明けて朝を告げるようすを表現した冒頭の間奏など、TM(超越瞑想)の影響を感じさせるブライアンとアル・ジャーディンの共作曲。 リード・ボーカルは前曲同様カールとブライアン。 爽やかなコーラスに合わせたチューバの響きが暖かで心地よい。 この曲も瞑想中につきマイク・ラヴは参加していない。

本アルバムの1ヶ月後にリリースされたシングル「恋のリバイバル」のB面にも収録された。

2018年の『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』にはストリングズが強調された別バージョンを収録。

作者:B.Wilson - A.Jardine

リード:Carl, Brian


転調を多用した3拍子のラテン調の作品で、ブルース・ジョンストンを除くメンバー全員による共作曲。 リード・ボーカルはフォルセット・ボイスのブライアン、中間部のレズリー・スピーカーを通したボーカルはカールである。後半の「ウーウー」は恐らくデニスだろう。

この曲も爽やかな雰囲気を持っていて、後半の鐘の音が清らかさを際立たせている。 歌詞はTMの影響を感じさせつつもブライアンの日常の一こまを描写したような内容で、当時スタッフだったスティーヴ・コーソフとジョン・パークス、マネージャーのニック・グリロが登場するもの。

セッション集『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』にはウクレレがフューチャーされたバッキング・トラックを収録。

作者:B.Wilson - C.Wilson - M.Love - D.Wilson - A.Jardine

リード:Brian, Carl


ブライアン、デニス、カール、アルと、スタッフのスティーブ・コーソフとジョン・パークスによる共作曲。因みにスティーブ・コーソフはブライアンの母系の従兄弟である。

軽快なシャッフル・ビートを刻むギターをバックに歌われるリード・ボーカルはブライアン。 ブライアンの歌声は清清しく気持ちよさそうで、後半にはソウルフルなフィーリングも顔を覗かせる。 シンプルなバック・コーラスやハモンド・オルガンの響きも心地いい。 内容は子供の性教育を歌ったもので、ブライアンの第一子、カーニーが生まれるのもちょうどこの頃であった。

2018年配信の1968年セッション集『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』にはバンジョーがほのぼのとした初期の演奏トラックを聴く事が出来る。又、間奏にブライアンのボーカルが入っている別ミックスも収録。

作者:B.Wilson - D.Wilson - C.Wilson - A.Jardine - S.Korthof - J.Parks

リード:Brian


ブライアンが作った歌詞の無いハミングのみの一風変わった作品。ハミングによるコーラスは全てブライアンによる多重録音。 このアルバムの特徴とも言える、"室内楽曲"の趣があるサウンドで、非常にリラックスした和やかなムードを持っている。 特にハモンド・オルガンの奏でる音色が印象的である。後半にはバス・ハーモニカも聴こえる。

2018年配信の『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』には最終的にカットされたバック・コーラスが入ったリミックスを収録。 また、ブライアンが歌う歌詞付きのトラックもあり、実に興味深いです。

作者:B.Wilson

リード:Brian


マイクがインドでTM瞑想中に曲想を思いつき、ブライアンと完成させた和やかなサロン音楽風の作品。 リード・ボーカルはマイク。 ピアノとボンゴのアンサンブルが印象的で、独特のリズムを持った癒し系サウンドが特徴。 アナ・リーとはマイクがリシケシュ滞在中に話題となっていた看護師の事で、彼女の癒しを賞賛した内容が歌われている。

『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』には別ミックスのバッキング・トラックとアカペラを収録。

作者:M.Love - B.Wilson

リード:Mike


スティーブ・カリニッチが共作者として手伝った、デニス・ウィルソンの作品。 繊細であるが力強さを兼ね備えたリード・ボーカルもデニスによるもの。 ブライアンが作曲に関与しないグループのオリジナル作としては、前作『ワイルド・ハニー』収録の「すてきなブーガルー」に続く2曲目となる。

マイナー・コードとメジャー・コードが交互に歌われる独特の雰囲気を持った曲で、初作品とは思えないほど堂々としている。 このスケールの大きな作風は以降、デニスの持ち味となっていくのだ。 ベースとドラムのリズムやミュートを効かせたトランペットのメロディが"スマイル・セッション"でレコーディングされていた「チャイルド・イズ・ファーザー・オブ・ザ・マン」に酷似している。 また、間奏のストリングスとコーラスのアレンジは独創的で、ブライアンのセンスとはまた違った趣である。 デニスの方がよりロック志向が強いと言えるかも。

2018年配信の『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』にはトランペットがより刺激的なバッキング・トラックを聴く事が出来る。

作者:D.Wilson - S.Kalinich

リード:Dennis


デニスによるオルガンの弾き語り曲で、前曲同様に彼とスティーブの共作。人生と愛について語られる神秘的な歌詞と美しいメロディが特徴である。 ブライアンの曲作りを間近で見ていたデニスは、独学で兄の音楽的アプローチを吸収していたのだろう。 デニスは本作“フレンズ・セッション”から自作のレコーディングを積極的に行っていたようだ。

2001年の未発表音源集『ホーソーン,カリフォルニア』には彼の豊かな才能について語るブライアンとアルの会話を聞くことが出来る。 また同アルバム収録の「ア・タイム・トゥ・リヴ・イン・ドリームス」というデニスの未発表曲(『フレンズ』発表後、『20/20』セッションでの68年11月1日録音)は、ずっと後になってこの曲の存在を知ったブライアンがあまりの素晴らしさに打ちのめされたという逸話もある。

作者:D.Wilson - S.Kalinich

リード:Dennis


フルートとスパニッシュ・ギターが心地いいブライアンが作ったボサノヴァ。淡々と歌われるリード・ボーカルも彼によるもの。 家でのんびりと何もしない日々に追われているといった歌詞は、全てにやる気を失った彼の無気力な日常が描かれている。 でも悲壮感は無く、気ままな生活感がなんともアンニュイな雰囲気を醸し出していて、クールで乾いた感じのサウンドはどこか人工的だ。 小生はこの曲を聴くと、何故か観葉植物が生い茂るモダンな部屋を思い浮かべるのだ。

『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』にはテンポがやや速い別バージョン(別ミックス?)を収録。

作者:B.Wilson

リード:Brian


ブライアンとセッション・ミュージシャンが作ったスチールギターとウクレレがフィーチャーされたハワイアン風のインストゥルメンタル曲。 スコールや海の波を思わせる効果音が挿入され、とにかくトロピカル・ムード満載である。

鳥の鳴き声のようなパーカッションやスチームドラムがちょっとぞっとするような奇妙な音世界を創り出している。

作者:A.Vescovo - L.Ritz - J.Ackley - B.Wilson

リード:Group


マイク、ブライアン、アルによるTM賛歌。タイトル「トランセンデンタル・メディテイション 」とはマハリシ・ヨギのTM(超越瞑想)の正式名称である。

ブラス・セクションを大胆に使ったサウンドは革新的で、不協和音を取り入れた構成はジャズ・フィーリングたっぷり。 リード・ボーカルはブライアン。 中々の力作であるのだが、せっかくのアルバムの雰囲気を台無しにしている、とも言える。。

2018年配信の『ウェイク・ザ・ワールド‐フレンズ・セッションズ』には初期バージョンやバッキング、アカペラなどのトラックを収録。

作者:B.Wilson - M.Love - A.Jardine

リード:Brian



ボーナストラック

ブライアンとロン・ウィルソンとの共作の未発表曲。リード・ボーカルはタイトル・コールはカール、その他のフォルセットはブライアン。 再び一緒にという前向きな歌詞は、何かグループの再出発を暗示しているようである。後半、コーラスが転調を繰り返す。 後にこの曲を発展させ「ディードリ」のタイトルでアルバム『サンフラワー』に収録された。曲のイメージは激変しますが。。

作者:B.Wilson - R.Wilson

リード:Brian, Carl


ブライアンが敬愛するバート・バカラックとハル・デビッドの作品で、黒人女性シンガーのディオンヌ・ワーウィック64年のヒット曲のカバー。 オリジナルはモダンなポップスであったが、繊細なイメージをそのままにブライアンがフォルセット・ボイスでアレンジしている。 後半のリードはデニス。 歌詞の通り、最後のコーラスは悲痛な叫びのようだ。

作者:B.Bacharach - H.David

リード:Brian, Dennis


エレキピアノで演奏される前奏部分はフォスターの故郷の人々(スワニー川)。この故郷の人々は、3枚目のアルバム『サーファー・ガール』でも「サウス・ベイ・サーファー」というタイトルで取り上げられている。 奇妙なストリングの後にカントリー調で歌われる部分はミュージカル「Showboat」の挿入曲「オール・マン・リヴァー」。 ホーン・セクションも入った「オール・マン・リヴァー」は、フォーク・ギターとハーモニカをバックにブライアンが歌い上げる。

2001年の『ホーソーン,カリフォルニア』には美しく繊細なコーラスでアレンジされたこの曲のスローなアカペラ・バージョンを聴く事が出来る。

作者:S.Foster / O.Hammerstein - J.Kern

リード:Brian




Friends

裏ジャケット写真。



フレンズ

作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン/デニス・ウィルソン/カール・ウィルソン/アル・ジャーディン


僕ら何年も友達同士
ずっと一緒だった
良い時も悪い時も
お互いに分かち合っているんだ
人生の良い時間を

時には離れることもあるけれど
夜には電話して
元気な君を知ることができる
僕が落ち込んでしまった日には
君の励ましで頑張れるんだ

ずっと友達でいよう
ずっと友達でいよう
ずっと友達でいよう

彼女が裏切った時に君は教えてくれた
君にお金を貸したこともある
君が家族のことで苦しんでる時
僕が説得したこともある
君は髪を切ったね

僕ら何年も友達同士
ずっと一緒だった
良い時も悪い時も

対訳:管理人




こぼれ話

このアルバムが出来上がった時、ブライアンはアセテート盤(視聴用の簡易的なレコード)を自宅に持ち帰り、妻マリリンとベットのステレオで聴いたそうだ。

こんな行動は『ペット・サウンド』以来の2度目のこと。 ブライアン自身とても満足のいく作品だった事がよくわかるエピソードだ。





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