オール・サマー・ロング
All Summer Long


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64年7月にリリースされたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
「オール・サマー・ロング」、「アイ・ゲット・アラウンド」、「浜辺の乙女」などの傑作ナンバーを多数収録。



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プロデュース:ブライアン・ウィルソン

Capitol Revel 1964.7.13


ヒストリー

当時マネージャーであったマリー・ウィルソンは、ずいぶん前からグループにとって厄介な存在になっていた。

グループ初の海外ツアーである64年1月のオーストラリア公演における暴君ぶり(メンバーの行動を始終監視しルールを破ると罰金千ドルを徴収した)、レコーディングや曲づくりへの過剰な介入など、ブライアンをはじめメンバー全員の我慢の限界は超えていた。 特に作品に対する批判は幾度となく繰り返され、レコード会社の新譜要求プレッシャー以上にブライアンを苦しめていた。

4月に行われた「アイ・ゲット・アラウンド」のレコーディング中、延々と作品への酷評を止めないマリーに対し、遂にブライアンの抑えていた怒りが爆発。 「父さんはクビだ!」衝動的にマリーにマネージャー解雇を言い渡す。 さすがのマリーもこの件は堪えたようで、数週間病床に伏したそうだ。

しかしマリーもしぶとかった。 解雇のショックから立ち直った後、報復のためビーチ・ボーイズよりビッグで優秀なグループを作り出そうとする。 自分こそがボーイズを作ったと誇示するために。 「あの恩知らずの餓鬼どもが」と言っていたマリーは、カールが通っていた職業学校の友人であるリック・ヘンを中心としたアマチュア・バンドを“サンレイズ”というビーチ・ボーイズそっくりのコピー・バンドに仕立て上げ、ブライアンにプレッシャーをかけ始めた。

このマリーの嫉妬の混じった行動は、ブライアンにとってわずらわしいものであったが、ともかくグループから父親を遠ざけることが出来たことは喜ばしいことであった。

ブライアンは曲作りに没頭。5月にはシングル「アイ・ゲット・アラウンド」が初の全米1位を獲得。 ブライアンとビーチ・ボーイズの快進撃が始まった。


アルバム解説

1964年7月13日にリリースされたこのアルバムは、フィル・スペクターへの畏敬の念と、当時アメリカ音楽シーンを席巻していたイギリス勢に対抗するために全精力を注ぎ込んだブライアンの渾身の作品となった。

前作『シャット・ダウン・ヴォリューム2』を発表した3月頃から1人で作品作りに没頭し始めたブライアン。 彼はマイク・ラヴとの共同作業すら拒絶したという。 良い作品を作らなければという思いだけが彼を支える原動力だった。

レコーディングは65年4月からウェスタン・スタジオで行われた。 アルバム『サーファー・ガール』の時と同様にレコーディングにおけるブライアンの完全主義ぶりは徹底していた。 ビートルズやフィル・スペクターに対する競争意識がそうさせたのであろう。 5月初旬にブライアンはホテルでスペクターと「ドント・ハート・マイ・リトル・シスター」のピアノ・デモを行っているのだが、そういった刺激もアルバム作りに影響を与えたのではないか。

作品の出来栄えは素晴らしい。それぞれの楽曲の完成度はこれまでのどのアルバムよりも高い。 それと色彩感豊かな明るい曲が全体を占めているため、「夏」、「海」といったビーチ・ボーイズのイメージが最も顕著に表現されたアルバムといえる。 この“明るさ”はマイク・ラヴの陽気な資質がよい効果をもたらした結果である。

各メンバーのコーラスは更に磨きが掛かり、以前にも増してそれぞれの作品が個性を持つようになったのは明らかだ。 アルバムチャートは全米4位を記録。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

64年5月11日にアルバムに先行して発表された通算9枚目のシングル曲。ビーチ・ボーイズ初の全米ナンバー・ワン・ヒットを記録した彼らの代表作。 B面は傑作バラードの「ドント・ウォリー・ベイビー」。

ドライブの楽しさ、若者の日常を歌った青春賛歌で、マイクが歌うパートとブライアンの舞い上がるようなパートが交互に繰り替えされる構成になっている。 グイグイ曲を引っ張るデニスのドラムが抜群で、歯切れのいいカールのギターやパーカッション、手拍子などが抜群のドライブ感を出している。間奏のギター・ソロはセッション・ギタリストのグレン・キャンベルによるもの。

モノ・ミックスしか存在しないが、最新技術によるステレオ・ミックスが『オール・サマー・ロング(モノ&ステレオ)』に収録されている(でもモノ・ミックスの方が遥かにダイナミックである! そのためか、ハイレゾ音源では擬似ステレオに差し替えられている)。 最近マルチ・トラックのマスター・テープが発見されたそうなので、トゥルー・ステレオはいずれリリースされるかも知れません。 (2022年のデビュー60周年記念版『ザ・ベリー・ベスト・オブ・ザ・ビーチ・ボーイズ:サウンド・オブ・サマー』収録のステレオ・ミックスもモノからボーカルを抽出したもので若干不安定です)

93年の『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』では、この曲のバッキングのステレオ・ミックスが収録されている。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Brian, Mike


前曲同様、“夏の思い出”“青春の一こま”が描かれている、ブライアンが作ったアルバムのタイトル・チューンとなる青春賛歌。

木琴の一種“シロフォン”が爽やかな印象を与えるシャッフル・ビートの佳曲。全篇メンバーのコーラスで歌われ、所々にマイクのソロ・ボーカルが聴こえる。 ジョージ・ルーカス監督の73年の青春映画『アメリカン・グラフィティ』の印象的なエンディングにこの曲が使用された。

この曲もモノ・ミックスしか存在しなかったが、07年のベスト・アルバム『ザ・ウォームス・オブ・ザ・サン』に初のステレオ・ミックスが収録された。 又、14年のレア音源集『キープ・アン・アイ・オン・サマー:ビーチ・ボーイズ・セッションズ1964』には、ブライアンがシロフォンの演奏に大苦戦している(笑)この曲のセッション風景を聴くことが出来る。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Group, Mike


たびたびコンサートでも取り上げられているバラード曲。 透き通ったリード・ボーカルはブライアン。ミドル部分の「ララバーイ…」はマイクが歌っている。 50年代に活躍したドゥーワップ・グループのミスティックスのカバーであるが、あまりにもビーチ・ボーイズにマッチしているのでまるで彼らのオリジナル曲のようだ。

64年9月21日に「リトル・ホンダ」、「ウェンディ」をフィーチャーした4曲入りEP盤にも収録。

作者:D.Pomus - M.Schuman

リード:Brian, Mike


ホンダの原付バイク“スーパー・カブ”について歌われているホット・ロッド・ナンバー。 ブライアンとマイクの共作で、リード・ボーカルはマイク。 同時期にゲイリー・アッシャーがプロデュースしたホンデルズがカバーし、全米9位を記録。ビーチ・ボーイズは「フォー・バイ・ザ・ビーチ・ボーイズ」という4曲入りEP盤として発表し全米65位をマークした。

セッション・ミュージシャンによる迫力あるバッキング・トラックは68年の『スタック・オー・トラックス』で聴く事が出来る。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike


ブライアンとゲイリー・アッシャーによる彼ららしいしっとりとしたラヴ・ソング。 アコースティックギターとオルガンをバックにブライアンが情感たっぷりに歌っている。

周りの反対を押し切って結婚するカップルについての歌詞は、まるでブライアンとマリリン・ローヴェルを歌ったようだ。 父マリーには反対されたものの、2人はこの年の12月にラスベガスで結婚式を挙げている。

作者:B.Wilson - G.Usher

リード:Brian


歯切れのいいビートに乗ったカールのギターをフィーチャーしたインストゥルメンタル・ナンバー。 カールとブライアンの共作。

カールのトレードマークのフェンダー・ジャガーによる演奏で、非常にクールなサウンドを聴かせる。

作者:C.Wilson - B.Wilson


4曲入りEP盤にも収録された躍動感のある傑作バラード。失恋した悲しみを歌った内容で、ちょっと感傷的なメロディもぐっとくる。 EP盤のチャートは最高44位まで上昇。

リードボーカルはブライアン、Bメロはマイクが担当。切迫感のあるバックコーラスはカールとアルによるもの。 スネアとタムのコンビネーションによるリズムパターンが面白い。 ブライアンの豊かな才能は、こういう曲を聴くにつけしみじみ感じてしまう。

蛇足だが、69年10月に生まれたブライアンの次女はウェンディと名づけられた。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Brian, Mike


ブライアンとマイクの共作。リード・ボーカルはマイクで、珍しくシャウト気味に歌っている。サビの一節はブライアンが担当。

リトル・リチャードやチャック・ベリー、エルビス・プレスリーなど往年のロックスターが登場するロックン・ロール賛歌。 彼らはブライアンやマイクにとってアイドルだったのだろう。 サックスが50年代の雰囲気を醸し出している。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Mike, Brian


全編感動的なコーラスで歌われるサーファー・ガール調のラヴ・バラード。 65年5月公開のビーチ・ボーイズ主演映画『ガールズ・オン・ザ・ビーチ』のテーマ曲でもある。

ブライアン・ウィルソンの作った大傑作ナンバーで、彼のフォルセットのリード・ボーカルとグループのコーラスが分厚いハーモニーを聴かせる。 中間部のソロはデニス・ウィルソン。 曲の後半のさりげない転調が何とも粋な演出である。

2014年に発売されたセッション集『キープ・アン・アイ・オン・サマー:ビーチ・ボーイズ・セッションズ1964』に演奏が抑えられた美しいアカペラが収録されている。 個人的に大好きな曲であるが、意外とベスト版とかに入っていない。うろ覚えで恐縮ですが、小生が子供の頃、何かのCMソングに使われていたと思う。

作者:B.Wilson

リード:Brian, Dennis


ブライアンとマイクの共作。ドライブ・インでの出来事を歌ったホット・ロッド・ソング。リード・ボーカルはマイクで、彼の独特のバス・ボイスが魅力的である。

パーカッションに鈴が使われているが、このバッキング・トラックは63年10月に録音されたクリスマス・ソング「リトル・セント・ニック」の初期バージョン用のものであったためだ(『ザ・ビーチ・ボーイズ・クリスマス・アルバム』のボーナス・トラックとして聴く事ができる)。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Mike


ビーチ・ボーイズのメンバーらによるおしゃべりレコーディング風景。サウンド・エンジニアのチャック・ブリッツの声も聞こえる。

「準備して、レッツ・ゴー」というブライアンの声の後に次曲「ドント・バック・ダウン」が続く。


失敗しても怖れずに何度も波に立ち向かっていくサーファーを歌ったサーフィン・ソング。ブライアンとマイクの共作。 「フォー・バイ・ザ・ビーチ・ボーイズ」のEP盤にも収録。

アルバム『サーファー・ガール』以来となる、久しぶりのサーフィン・ソング登場であったが、この曲以降サーフィンを題材にした作品は書かれなくなった。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike, Brian



ボーナストラック

未発表曲であるが、その後この曲のパートが様々な作品に流用される。

冒頭の「ドゥ・ドゥ・ドゥ」のパートは80年の「ゴーイン・オン」や67年の「英雄と悪漢」の未発表テイクに。 主旋律は70年の未発表曲「アイ・ジャスト・ゴット・マイ・ペイ」(93年の『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』に収録)に流用され、更にテンポを落として72年の「マーセラ」に。

歌詞の一部「She's not the little girl I've always known(彼女は僕が知っている少女じゃない)」は「リトル・ガール・アイ・ワンス・ニュー」に流用されている。 また、エンディングのコーラスは64年暮れの『ビーチ・ボーイズ・コンサート』で取り上げられた「パパ・ウー・モウ・モウ」や80年の「キーピン・ザ・サマー」に酷似している。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike


4の別バージョン。バッキング・トラックは同じだが、コーラスパターンと一部の歌詞が異なる。

『キープ・アン・アイ・オン・サマー:ビーチ・ボーイズ・セッションズ1964』にはこのテイクのセッション風景と新たにオルガンが追加されたステレオ・ミックスが収録されている。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike


12と同じバッキングであるが、歌詞とメロディが違う別バージョン。元々はこちらが初期バージョンだと思われ、歌詞もブライアンによるものでは(推測)。

2014年のセッション集『キープ・アン・アイ・オン・サマー:ビーチ・ボーイズ・セッションズ1964』にはこちらのテイクが収録され、セッション風景と新ステレオ・ミックスを聴く事が出来る。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike




浜辺の乙女

作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン


あああああぁぁぁ
浜辺の少女たち

ビーチで見つけてごらん
太陽と潮風の中
浜辺の少女
すべては彼女たちの手の届くところに
何をすべきか判っているなら

僕らの周りには愛が溢れている
小麦色に日焼けした女の子たち
浜辺の少女
すべては彼女たちの手の届くところに
そして君だけを待っている
浜辺の少女たち

彼女たちの髪に映る太陽
暖かなそよ風
夏の日に

日が沈み辺りが暗くなると
夜のビーチには恋人たち
浜辺の少女
すべては彼女たちの手の届くところに
そして今夜は男の子と一緒に
浜辺の少女たち

浜辺の少女たち、浜辺の少女たち
浜辺の少女たち、浜辺の少女たち

対訳:管理人





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