ワイルド・ハニー
Wild Honey


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67年12月にキャピトル・レコードからリリースされたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
ヒットシングル「ダーリン」収録。



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プロデュース:ビーチ・ボーイズ

Capitol Revel 1967.12.11


ヒストリー

67年6月16日から3日間開催されたモンタレー・ポップ・フェスティバルは延べ20万人を超える観衆を集めた最初期の大規模な野外コンサートで、後のウッドストック・フェスティバルなどの先駆けとなった重要なロック・イベントとなった。 多くのアーティストが参加したこの歴史的な催しに、当初ビーチ・ボーイズは地元の人気バンドとして、1番のメインである土曜夜の最後に出演する予定であった。 ところが開催直前に出場辞退が発表され、このドタキャン騒動はフェスティバル1番の話題となった。 この事態は、自分たちの音楽が台頭しつつあるヒップな音楽やイギリス勢のアシッド・ロックと競合出来ない、時代遅れであることを印象付ける結果となってしまった。 コンサート当日、ド派手な演奏を終えたジミ・ヘンドリックスはステージから「サーフ・ミュージックは終わったということだ」と言った。

このようにビーチ・ボーイズ危機の風潮は、ファンも戸惑う風変わりな『スマイリー・スマイル』の発表でより決定的になったと思われる(ある晩、グループのトレードマークであるストライプのお揃いの衣装をロンドンのグループから嘲笑されたとデニスは愚痴っていたという)。 そして『スマイル』の失敗によりブライアンは自室に閉じ篭もり、1日中ベッドで過ごすようになっていく。その後10年以上も。

ブライアンの脱落でビーチ・ボーイズは不遇の時代に突入するが、「グッド・ヴァイブレーション」のヒット以降、ヨーロッパ圏で人気が爆発。 特にイギリスでの反応は凄まじく、最新アルバムの『ワイルド・ハニー』は全英7位まで上昇するヒット作となった。 母国の人気に陰りが見え始めたグループは欧州をターゲットに作品を発信、さらにライブ・バンドとして生き残りを賭けることになる。

さて、アメリカでの人気は下火になるが、逆にバンドの結束力は強まり、充実した作品群をその後数年間に渡り発表し続ける事になる。 グループにとって円熟期を迎えたのだ。


アルバム解説

『スマイル』ショックによりやる気を失ったブライアンであったが、グループのピンチにメンバー達は奮起、『スマイリー・スマイル』の3ヶ月後にあたる1967年12月11日にキャピトル・レコードから本作『ワイルド・ハニー』を発表する。

ブライアンを引っ張り出すために彼の自宅のスタジオで多くの曲がレコーディングされ、アップライト・ピアノとオルガンが前面に響き渡るシンプルな作品に仕上がっている。 どの曲も2分前後の小品揃い(1番長い曲でも2分45秒)、彼らの特徴であるコーラス・ハーモニーは控えめとなり、手拍子を多用した手作り感満載のサウンドはチープである。 しかし、少なくとも『スマイリー・スマイル』よりはずっとバンドとしての"音"を取り戻している。

特にウィルソン兄弟末っ子のカールの頑張りは顕著で、彼のソウルフルな歌声はこれまでのビーチ・ボーイズのイメージから脱却を図ろうとする強い意志が感じられる。 そしてプロデュースは前作同様にビーチ・ボーイズとクレジットされた。

アルバム・ジャケットには花と蜜蜂をあしらったステンド・グラスが描かれ、作品のコンセプトをうまく表現したビーチ・ボーイズにしてはやけにカッコいいものである。 ブライアン不調の中、それでもこの時期に出来得る最善の出来映えであり、アルバムチャートは24位とまずまずの成績を残した。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

アルバムのタイトル・チューンとなったリズム&ブルース調の作品で、67年10月23日にアルバムに先駆けてシングル・リリースされた。 全米31位。B面は『スマイリー・スマイル』収録の風変わりな曲「ウインド・チャイムズ」。ブライアンとマイクの共作。

タイトルはウィルソン家にあった大きなハチミツの瓶をモチーフにカールが名付けたもの(マイク・ラヴは発案者は自分と主張している)。 歌詞は野性的な愛についての内容で、このアルバム全体のコンセプトにもなっている。

「グッド・ヴァイブレーション」に続き、エレクトリック・テルミンをフィーチャーした斬新なサウンドであるが、このフレーズはある夜ブライアンを悩ませたサイレン音だそうだ。 『スマイル』の挫折により精神衰弱となった彼はしばしば心の恐怖と闘っていた。

全編に渡りシャウトしたカールのリード・ボーカルはビーチ・ボーイズに新境地をもたらした感じがする(彼にはキーが高すぎる感じだが、強引に歌いきってる!)。 間奏のオルガンのフレーズの音色が新しさを感じさせる。2012年のデビュー50周年記念アルバム『50ビッグ・ワンズ』でステレオ・ミックスが初登場する。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Carl


ブライアンとマイクが作った手拍子も入ったミディアム・テンポのラヴ・ソングであるが、最初はリズム&ブルース調を目指して作ったものらしい。 コード弾きのアップライト・ピアノの乾いた響きが印象的なポップ・チューンで、交互に歌われるリード・ボーカルはマイクとブライアン、サビではカールとブライアンの2人の掛け合いが見事である。 ワリー・ハイダー・スタジオでの録音。

ブライアンならではのサウンドを持つ佳曲で、特にサビにおけるボーカルとブラス&ストリングスのアンサンブルが聴きどころ。 ミキシングで埋没した冒頭のトランペットが作品としてこじんまりとした印象を与えているのがもったいない。

ライヴ・イン・ロンドン』では、ホーンとのスリリングな掛け合いが刺激的な素晴らしいステージ演奏が聴ける。 『スマイル・プロジェクト』崩壊後の1967年のアウト・テイクや未発表曲を収録したレア・トラック集『1967 ~ サンシャイン・トゥモロウ』には、オリジナル・モノ・ミックスに忠実なこの曲のステレオ・ミックスが初登場した。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike, Brian, Carl


当時17歳だったスティービー・ワンダーの67年のヒット曲。 リード・ボーカルはカール・ウィルソンで、かなりスティービーを意識したソウルフルな熱唱が聴ける。

83年の未発表音源集『レアリティーズ』では中間部に伴奏なしのカールの熱いシャウトのパートが挿入された別バージョンを聴く事ができる。

作者:H.Cosby - S.Moy - L.M.Hardaway - S.Wonder

リード:Carl


鶏の鳴き声が効果音として挿入されていたり、蜂の羽音のような電子音(テナー・サックス?)などが時折聴こえたりする、風変わりな作品。 ピアノの残響音が『スマイリー・スマイル』の奇妙なサウンドを彷彿させる。

口笛と共に歌われる歌詞は美しい青空と澄んだ空気に感謝する自然賛歌ともとれる内容。 冒頭のコーラス・フレーズは、ダーレン・ラヴ63年の「ウェイト・ティル・マイ・ボビー・ゲット・ホーム」に似たメロディである。

2013年の6枚組ボックス・セット『カリフォルニアの夢』でステレオ・ミックスを聴くことが出来る。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Group


ブライアンとマイクの作った、シンプルなロック曲。いかにもマイクらしい、他愛もない言葉遊びのような歌詞。 マイク、ブライアン、カールによる息の合ったリード・ボーカルが爽快で、ブギ・ウギ調のサビでは3人ともかなり楽しんでいるようだ。

スタッカートの効いたギターのフレーズも面白いが、『スマイリー・スマイル』収録の「ゲッティン・ハングリー」同様、乗りで作ったコミック・ソングである。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike, Brian, Carl


ブライアンが友人であるダニー・ハットン率いるレッドウッドのために作った最高のロック・ナンバー。

レッドウッドを自分たちの会社ブラザー・レーベルでデビューさせたいと考えたブライアンは、彼らのレコーディングをプロデュースした。 ところがマイク・ラヴが猛反対し契約を一方的に破棄、結局この曲はビーチ・ボーイズがリリースする事になった。 皮肉にもレッドウッドはその後バンド名をスリー・ドックス・ナイトに改め、世界的な大成功を収めるのだが、ブラザー・レーベルは莫大な利益を上げるチャンスを逃した結果となった。

『ペット・サウンズ』収録の「ヒア・トゥデイ」とのカップリングでビーチ・ボーイズの24枚目のシングルとして67年12月11日にアルバムと同時リリース、全米19位のヒットを記録する。

カールのリード・ボーカルは非常にパワフルで、この熱烈なラヴ・ソングを迫力あるものに仕上げている。 アップライト・ピアノとブラス・セクションのドライブ感が素晴らしく、特にフィルインのドラムは絶品。 ライブでは必ず演奏される定番の曲である。

69年のカラオケ集『スタック・オー・トラックス』ではバッキング・トラックを聴くことが出来る。 又、2012年の『50ビッグ・ワンズ』で生き生きとしたホーンが心地いい初のステレオ・ミックスが収録された。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Carl


ブライアンの精神状態が如実に表れたような彼の幻想的な作品。 アコースティック・ギターをバックに淡々と歌われるリード・ボーカルもブライアンによるもの。 フラワー・ムーブメントの影響を受けた曲調で、間奏のコーラスがいかにもサイケデリックな時代を感じさせる。

彼女を失いたくないという想いを歌ったものだが、ブライアンの屈折した感情は妻マリリンではなく義理の姉ダイアンに向けられたものかも知れない。 彼の人生に対する無気力感は次作『フレンズ』の「ビジー・ドゥーイン・ナッシン(何もしないでいることに忙しい)」で再び顕在化する。

2017年の『1967 ~ サンシャイン・トゥモロウ』に初ステレオ・ミックスとエンディングの異なる別バージョンを聴く事が出来る。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Brian


ブライアンが作った彼ならではのメロディ・ラインを持つダンス・ミュージック。 このアルバムのコンセプト、野性的な愛を力強く熱唱するリード・ボーカルはブライアン、レコーディングはワリー・ハイダー・スタジオで行われている。 オルガンとベース・ギター、アップライト・ピアノのサウンドが印象的。

のちにブルース・ジョンストン、カート・ベッチャーによってディスコ・ミュージック調にアレンジされ、79年の『L.A.ライト・アルバム』に収録された。

2017年に初のステレオ・ミックスが発表された。(『1967 ~ サンシャイン・トゥモロウ』収録)

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Brian


重苦しいピアノや不協和音を思わせるオルガン、複雑なコーラスなどの凝ったサウンドが『ペット・サウンズ』の作品群を連想させる、ブライアンの書いた隠れた名曲。 リード・ボーカルはマイクとブライアン。

歌詞は哲学的で、その中に「蜜蜂よハチミツを作るんだ」という一節があるが、このアルバム収録曲には度々“蜜蜂”が引用されている。 また、エンディングには風をイメージさせるブレス音が微かに聴こえるが、なにかを暗示しているかのようである。

ブライアンは95年の自身のソロ・アルバム『駄目な僕』でこの曲をセルフ・カバーしている。 2001年のレア・トラック集『ホーソーン,カリフォルニア』ではエコーが効いたボーカルが左右に広がった初のステレオ・ミックスを収録。サビの印象的なオルガン音は欠落している。

2017年の『1967 ~ サンシャイン・トゥモロウ』に収録された新たなステレオ・ミックスはボーカルが中央寄りで全体的にモノ・ミックスに近い仕上がり。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike, Brian


マイク・ラヴ、ブルース・ジョンストン、アル・ジャーディン、カール・ウィルソン4人の共作となるストレートなロック曲。 ビーチ・ボーイズの楽曲中、ブライアン抜きで作られた初めてのオリジナル作品である。

カールのシャウト気味に歌われるリード・ボーカルはロックン・ロール調。 間奏ではエレキ・ギターとオルガンによる乗りのいい爽快なサウンドを聴かせる。

『1967 ~ サンシャイン・トゥモロウ』に初めてステレオ・ミックスが収録されたが、後半のオルガンのマルチ・トラック・テープが無かったようで、間奏からはモノ・ミックスである。

作者:M.Love - B.Johnston - A.Jardine - C.Wilson

リード:Carl


"スマイル・セッション"でレコーディングされた「ヴェガ・テーブルズ」という曲から1パートを抜き出して、メンバーによるアカペラによって新たにレコーディングされたもの。 スタッカートや3拍子など様々なコーラス・アレンジが施されている。 この時期発表された何枚かのアルバムには『スマイル』に収められる予定だった曲がアルバムの最後に収録される事が多かった。

「ヴェガ・テーブルズ」のオリジナル・バージョンは93年の『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』、2011年の『スマイル・セッションズ』に収録されている。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Group



ボーナストラック

ブライアンが敬愛するフォー・フレッシュメンのヒット曲のカバー。 67年8月25日のホノルルでのライブ・リハーサルとして演奏されたスタジオ録音で、コンサートでは定番の1曲。

アルバム『リトル・デュース・クーペ』収録の「ア・ヤング・マン・イズ・ゴーン 」はこの曲の歌詞をマイクが書き換えたもの。

キャピトル・レコードの契約を取り付けるため、デビュー当時のマネージャーであった父マリー・ウィルソンがウェスタン・スタジオで「サーフィン・サファリ」をプロデュースするが、その時にこの曲もレコーディングされた。 この貴重な音源は93年の『グッド・ヴァイブレーションズ・ボックス』で聴く事が出来る。

作者:B.Troup

リード:Group




wildhoney

裏ジャケット写真。



アイド・ラヴ・ジャスト・ワンス・トゥ・シー・ユー

作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン


あれこれ見たり、あちこち歩いたり
少し飲んで少し食べて、ドアから頭を覗かせる

夜になると無意味な妄想を考えてしまう
いつも君のそばに居たいと
ああハニー、いつ気がついたんだろう
この想いが再び湧きあがるなんて

食器を洗い、シンクを流す
忙しい蜜蜂のように仕事で曲作り
でも誰一人、僕を気にかけはしない
僕には助けが必要なのに

最後にパイを焼いてくれた君
料理するのが好きだったよね
また僕とドライブしてくれないかい?

パー、パッパッパー、パッパッパー
パー、パッパッパー、パッパッパー

まだ遅くはないんだ

もう一度だけ君を見たい
もう一度だけ君を見たい
もう一度だけ裸の君を見たい

対訳:管理人





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