スティル・クルージン
Still Cruisin'


HOME  ビーチ・ボーイズ TOP  戻る

89年8月にキャピトル・レーベルからリリースされたビーチ・ボーイズのアルバム。
全米No1ヒット曲「ココモ」収録。



前のアルバム Still Cruisin 次のアルバム

プロデュース:ブライアン・ウィルソン、テリー・メルチャー、アル・ジャーディン、アルバート・カルブレラ、トニー・モーラン

Capitol Revel 1989.8.28


ヒストリー

臨床分析医ユージン・ランディ医師の治療の成果もありブライアン・ウィルソンは再び創作活動を再開、薬物から完全に隔離された、以前に比べると遥かに健康的で安定した生活を送っていた。 しかし常にランディの監視が必要で、前作『ザ・ビーチ・ボーイズ'85』でもブライアンの作品の共作者として博士の名前がクレジットされていたとおり、100%ランディに依存していた。 そして、ブライアンはランディと共同で1988年7月12日にサイアー・レーベルから初のソロ・アルバム「ブライアン・ウィルソン」をリリースし、音楽関係者から高い評価を得る。

ブライアン不在のビーチ・ボーイズは、86年7月7日にベスト・アルバム『メイド・イン・U.S.A.』(全米96位)、同年6月にシングル「ロックン・ロール・トゥ・ザ・レスキュー」(全米68位)、9月に「夢のカリフォルニア」(全米57位)と、作品は発表するもののヒットに恵まれない状況が続いていた。 ところが88年に公開されたトム・クルーズ主演の青春映画『カクテル』の挿入歌「ココモ」が必死のプロモートの成果もあり世界的に大ヒット、「グッド・ヴァイブレーション」以来、22年ぶりとなる全米ナンバー・ワンを獲得、突如としてグループが脚光を浴びる事となった。

ブライアンは自分が「ココモ」のセッションに呼ばれなかった事、自身初のソロ・アルバムの発売と同時期に「ココモ」がリリースされたことなどにショックを受けていて、次第にビーチ・ボーイズに不信感を持つようになっていった。

実はビーチ・ボーイズのメンバーはココモのセッションにブライアンの参加を求めていたのであるが、ランディが拒絶していたのだという(自分の名前を「ココモ」の作者にクレジットする事がブライアンのセッション参加の条件だったという)。 つまり、ランディはブライアンを意のままに操り、グループや家族から遠ざけようとしていたとも伝えられる。

ブライアンは以前とは違い、今や完全に自立できる状態になっていた。 ビーチ・ボーイズのメンバーは彼がランディの操り人形になっている事に危機感を持つようになる。 法外な治療費でかさむ経費の肥大化も問題視されていた。 遂にビーチ・ボーイズはブライアンのプライバシーと財産を守るため、ランディに対し訴訟を起こすのだった。


アルバム解説

89年8月28日にキャピトル・レーベルからリリースされた4年ぶりとなるオリジナル・アルバム。 「ココモ」の大ヒットをうけ、作者のマイク・ラヴ、テリー・メルチャーを中心に制作された。旧作3曲を含む10曲を収録。

古巣キャピトルからの発売は、オリジナル・アルバムとしては『20/20』以来20年ぶりの事であった。 又、CDとしてリリースされた初めの作品で、アナログ時代の終焉を印象付けるものとなった。

アルバム・チャートは「ココモ」人気で全米46位となったものの、映画挿入曲が多く、サウンド・トラック・アルバムのような趣を持つもので、いかにも急ごしらえの印象は否めない。 ブライアンは1曲のみ提供しただけで、アルバム制作には殆ど関与していない。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

ゲッチャ・バック」の共作コンビ、マイク・ラヴとテリー・メルチャーによるカリプソ風の作品。リード・ボーカルはマイク、途中でカールが歌っている。

メル・ギブソン主演の人気シリーズ映画『リサール・ウエポン2/炎の約束』の挿入歌。「ココモ」のヒットに味を占めたような狙った感のある曲だ。どういう訳か小生にとって印象の薄い作品である。

キャピトルから89年8月7日にシングルとして発表、1年前にリリースされたばかりの「ココモ」をB面に収録して2匹目のドジョウを狙うも全米93位と惨敗する。

作者:M.Love - T.Melcher

リード:Mike, Carl


ママス&パパスのジョン・フィリップスが書いた「フェアリー・テイル・ガール」という曲を元に、ブルース・ジョンストン、マイク・ラヴ、テリー・メルチャーが新たな歌詞を書いて完成させた曲。 繊細なメロディ・ラインを持ったチャーミングなラヴ・ソングで、元バーズのロジャー・マッギンによる12弦ギターの響きが印象的なフォーク・ロック調の作風は中々の出来映え。 ボーカル無しのエンディングの演奏が1分以上続く。コーラスの響きがサイモン&ガーファンクルを想起させるというのが小生の個人的な感想である。

日本の事を題材にしている曲であるが、オリエンタル調のイントロはチャイナ風なのがちょっと笑える。90年1月にまたしてもB面に「ココモ」を配してシングル・カット、予想通りチャート・インせず。ここまでくるとファンもさすがに食傷気味である。

作者:B.Johnston - M.Love - T.Melcher - J.Phillips

リード:Mike, Carl, Bruce, Alan


アル・ジャーディンが作ったトロピカル・ムードたっぷりのレゲエ調の作品。カリブ海の小島に住む黒髪の少女の事を歌った曲で、スティール・ドラムが南国の雰囲気を醸し出している。

リード・ボーカルはカール、アル、マイクが交互に歌っている。オープニングのコーラスにはブライアンの声も聴こえる。

作者:A.Jardine

リード:Carl, Alan, Mike


当時ブライアンと行動を共にしていたユージン・ランディとアレキサンダー・モーガンとの共作曲。モーガンはランディのガール・フレンドで、ブライアンとも親しくしていた女性。

ブライアンの類まれなポップス・センスが如何無く発揮された胸躍る魅惑の傑作ナンバーで、65年の「ソルト・レイク・シティ」を思わす圧倒的なドライブ感が素晴らしい。当時の彼は頭の中のサウンドをイメージ通りに作り上げる事に苦労していたようだが、音楽の才能はまったく衰えてはいない事をこの曲は証明している。 フォルセットが美しいリード・ボーカルとバック・コーラスはブライアンによる多重録音。サビのボーカルは、1回目がカール、2回目がアルによって歌われている。

作者:B.Wilson - E.E.Landy - A.Morgan

リード:Brian, Carl, Alan


ジョン・フィリップスとスコット・マッケンジーが作った曲に、冒頭のフレーズをマイク、サビのフレーズをテリー・メルチャーが書き加えたもので、88年のトム・クルーズ主演の大ヒット映画『カクテル』に使われた。

ヴァン・ダイク・パークスのアコーディオンの流麗な調べが南国を想起させ、"ココモ"という架空の島をイメージした情緒的で爽快感たっぷりの佳曲に仕上げている。 88年7月18日にシングル発売され、22年ぶりの全米1位を記録。 B面はリトル・リチャードと共演した「トゥッティ・フルッティ」。

リード・ボーカルはマイク、サビのパートはカールでコーラスをバックに瑞々しい歌声を聴かせてくれる。 レコーディングにブライアンは参加しておらず、この件が彼とグループの溝を深めた点は否定できない。

作者:M.Love - Scott McKenzie - T.Melcher - J.Phillips

リード:Mike, Carl


アメリカのサーフィン・グループのザ・サファリーズ63年のインストゥルメンタル・ナンバーのカバー曲。 ついにラップに挑戦か!?しかも出来は悪くない!と思いきや、ラップ・グループのザ・ファット・ボーイズがアレンジしたラップ・ミュージックにビーチ・ボーイズのコーラスを付け加えたもの。なのでビーチ・ボーイズの作品とは言い難い。 ゲイリー・アッシャーの提案だったらしい。

87年7月にザ・ファット・ボーイズとの共同名義でシングル・リリースされ全米12位を記録した。

作者:B.Berryhill - P.Connolly - J.Fuller - R.Wilson

リード:Fat Boys


いかにも80年代的なシンセサイザーが印象的なマイク・ラヴ、テリー・メルチャー、イノイックスのビル・ハウスの共作曲。テリーの母、ドリス・デイのために書かれたが、彼女はレコーディングしていない。

89年の映画『トゥループ・ビバリー・ヒルズ』の挿入歌。この爽やかで軽いシンセのサウンドは小生の苦手なタイプである。

作者:M.Love - B.House - T.Melcher

リード:Carl, Mike, Alan


オール・サマー・ロング』収録のビーチ・ボーイズにとって初の全米ナンバー・ワン・ヒットとなった64年のブライアンの作品。

ロビン・ウィリアムスが軍放送DJを熱演した87年の社会派映画『グッド・モーニング・ベトナム』の挿入歌として取り上げられた。又、2004年のデンゼル・ワシントン主演のSFサスペンス映画『デジャヴ』の重要シーンにおいて、カーラジオからこの曲が流れている印象的な使われたかをしていた。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Mike, Brian


66年の大傑作アルバム『ペット・サウンズ』のオープニング・ナンバー。 アルバムに収録されたものとはブライアンのリード・ボーカルが異なる別バージョン。

団塊の世代の人間模様を描いた83年の映画『再会の時』の挿入曲。また、2013年には越谷オサム原作の「陽だまりの彼女」のテーマ・ソングとしてフィーチャーされたのは記憶に新しい。

作者:B.Wilson - T.Asher (M.Love)

リード:Brian, Mike


65年全米3位を記録した大傑作曲。同年のアルバム『サマー・デイズ』に収録されたもの。86年のC.トーマス・ハウエル主演の学園コメディ映画『ミスター・ソウル・マン』の挿入歌。

9年後にリリースされた彼らのドキュメント映画のサントラ盤『エンドレス・ハーモニー』に収録されたこの曲の初のステレオ・ミックスを聴いた時、そのサウンド構成とコーラス・ワークに圧倒された小生であった。

作者:B.Wilson (M.Love)

リード:Mike




イン・マイ・カー

作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン


僕の車について来なよ
ガソリンと鋼で出来た愛馬
ハイウェイは僕のホームグラウンドさ
グラスファイバーとクロムメッキ
魅惑的に光り輝くコルベット
乗ってごらんよ、きっと気に入るさ
お嬢さん、一緒にドライブを楽しもう

イン・マイ・カー ※1
憧れの存在
イン・マイ・カー
愛しい人よ、一緒に走りを楽しもう

最高のドライブ ※2
もうすぐ着くよ
最高の気分さ

これが生きがいなんだ
新しいコルベットのシート
加速すれば
路上を自由に駆け巡る
この走りはまるで夢心地
僕ら16才の気分
偉大なアメリカの歴史を体験するんだ

(※1 繰り返し)

(※2 繰り返し)

ベイビー、一緒に走り回ろう
成層圏までどんどん上昇
一緒になるんだよダーリン
ずっと走り回ろう
これからもずっと

髪に吹く風
大金持ちの気分さ
ラジオからは大音量の音楽
大声で歌うんだ
体の内と外も燃え上がり
星の近くへ駐車する
人生は可能性に満ちている

(※1 繰り返し)

(※2 繰り返し)

(※1 繰り返し)

対訳:管理人





前のアルバム  次のアルバム

HOME  ビーチ・ボーイズ TOP  このページの先頭

戻る


トップへ