キーピン・ザ・サマー・アライヴ
Keepin' The Summer Alive


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80年3月にリリースされたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
ブルース・ジョンストンのプロデュース。「ゴーイン・オン」収録。



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プロデュース:ブルース・ジョンストン

Calibou Revel 1980.3.24


ヒストリー

CBSは前作『L.A.(ライト・アルバム)』の失敗を受け、ビーチ・ボーイズに懐疑的となった。 次のアルバムはブライアンの全面的な参加が発表の絶対条件としたのだった。 当時のブライアンの精神状態は最悪であったが、何とか昔の勘を取り戻してもらおうとカール、マイクらのメンバーの計らいで、かつてのホームグラウンド、ウェスタン・スタジオでレコーディング・セッションを開始する。

ブライアンは最初の3日間、全盛期の頃のような集中力を発揮、まるで鳥のように歌っていたという。 だが、5曲の新曲を提供したものの再び落ち込み、また誰とも話をしなくなってしまった。 ブルース・ジョンストンを中心に、カール、アル、マイクが奮闘、どうにかCBSを納得させることに成功し、『キーピン・ザ・サマー・アライヴ』を80年3月に発表する。

ブライアンはアルバム発表後、精神状態はどんどん悪化、ブロットマン・メディカル・センターの精神科病棟で知り合った黒人女性看護士キャロリン・ウィリアムズに付き添われ、薬物に依存した孤独な世界を彷徨さまよってしまう。 カールは81年3月に『カール・ウィルソン』、マイクは同年10月に『ルッキング・バック・ウィズ・ラヴ』とそれぞれソロ・アルバムを発表、またもやビーチ・ボーイズ解散が噂され始める。 そしてグループ唯一のサーファーであるデニスは、兄ブライアン以上に酒とドラッグに浸るどん底の生活を送っていた。 カレン・ラムと離婚後にマイクの娘、ショーン・ラヴと結婚、息子ゲイジを溺愛するあまり、夫婦間の争いは絶えなかったという。

そして遂に悲劇が起こる。

83年12月28日のマリーナ・デル・レイ沖で、酒を飲みながら極寒の海でダイビングを慣行、2度と海面に浮上する事は無かった。 享年39歳。 かつて彼がこよなく愛した帆船“ハーモニー号”を取り戻す事を夢見ながら、ついにその想いは成就することは無かった。 ブライアンに匹敵するコンポーザーであり、グループの中でも絶大な人気を誇っていたデニスの死はとても大きな痛手である。このまま解散か?

いや、このかつて無い危機を乗り切るには、残されたメンバー全員が団結するしかない。


アルバム解説

1980年3月24日にリリースされたブルースのプロデュースによるアルバム。

15年ぶりとなるウェスタン・スタジオでレコーディングが行われた本作は、グループがどん底の状態であったにも関わらず、60年代前半のビーチ・ボーイズをイメージしたような明るく溌剌としたサウンドが展開される好作品となった。 サウンド・エンジニアには、ウェスタン専属のチャック・ブリッツとスティーブ・デスパーが手がけ、抜群の音響効果を誇っている。 ブライアンの提供した作品はいずれも秀作揃い、夏・海を意識した演出は、一応は成功といえるだろう。 しかし全米75位と、またしてもチャートは振るわず、シングル・カットされた「ゴーイン・オン」も83位と苦汁を舐める結果となった。

ペンギンやシロクマが見守る北極の雪原で、常夏を楽しむビーチ・ボーイズの姿が描かれたジャケットは気味の悪いものだが、ピアノに座るブライアンだけが不安そうに遠くを見つめているのは何やら暗示的だ。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

“夏”をイメージした本アルバムのコンセプトが全面に出ているファンキーで少しヘビーなロック曲。カール・ウィルソンとカナダのロック・グループ「ゲス・フー」の元メンバー、ランディ・バックマンとの共作。 ジョー・ウォルシュのワイルドなスライド・ギターと歯切れのいいドラム、ベースのリズムがパワフルなサウンドを聴かせる。かなり力の入ったリード・ボーカルはカールで、当時のステージではもっと力んだ歌を聴く事が出来る。

64年の未発表曲「オール・ドレスド・アップ・フォー・スクール」のパターンに酷似しているマイクのバス・ボイスのコーラスが実に素晴らしい。

作者:C.Wilson - R.Bachman

リード:Carl, Mike


ムーディーでスロー・テンポのラヴ・バラードで、非常に美しい旋律を持った佳曲に仕上がっている。熱烈な彼女への想いをうたったブライアンとマイクの作品。

伸びやかで艶のあるリード・ボーカルはカール、後半のメランコリックな旋律は最初ブライアンが歌っていたが最終的にマイクのリードに差し替えられた。 ゆったりとしたホーンとシンセサイザーを巧みに使った洗練されたサウンドを聴かせ、暖かなコーラスは心に沁みる。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Carl, Mike


マイク・ラブのリード・ボーカルがマッチした、60年代初頭のサーフィン・ソングを彷彿させる雰囲気を持った明るいナンバー。 作者はキャピトル時代の黄金コンビ、ブライアンとマイク。サックスとホンキー・トンク・ピアノが特に印象的だ。 「Some some some of your love」のフレーズが「サン・サン・サマー」に聴こえての邦題なのだろうが、歌詞はサマー・ソングではなく彼女に振り向いてほしいと願う恋愛の歌である。 時折、63年のヒット曲「ビー・トゥルー・トゥ・ユア・スクール」に似たコーラスも聴こえる。

このアルバムは64年の『オール・サマー・ロング』を意識した、というマイクの証言からも判るように、青春を謳歌したかつてのビーチ・ボーイズを演出したもの。やや企画的な原点回帰を思わせるものの、やはりこの圧倒的なハーモニーは説得力がある。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike


カールとランディ・バックマンが作ったリズミカルでお洒落な失恋ソング。歯切れのいいカウンターのギターが品のいい作風を際立たせている。 伸びのあるリード・ボーカルはカールで、彼の美しい歌声を生かした作品といえる。彼女に去られた傷心の気持ちを歌った内容は、別れた妻、アニーへの想いなのだろう。 カート・ベッチャーとテリー・メルチャーもコーラスで参加している。

80年5月20日にシングル・カットされたが惜しくもチャート・インせず。

作者:C.Wilson - R.Bachman

リード:Carl


ロックの創始者、チャック・ベリー、57年のヒット曲。リード・ボーカルは当時絶好調のアル・ジャーディンで、この学生青春賛歌を軽快に歌い上げる。 オープニングから分厚いコーラスを全面に出したビーチ・ボーイズらしいロックンロールのアレンジ。 ホンキー・トンク調のピアノがフィーチャーされ、個人的には76年にヒットした『ロック・アンド・ロール・ミュージック』よりもこちらの方がずっと好きである。

80年8月に発売されたカナダ限定シングル(B面は「愛すべき女達」)には、アルバム版より少しゆっくりな冒頭のコーラスの後に"カーン!"とベルの音が入っている。 このバージョンは81年のリプリーズ時代のベスト・アルバム『テン・イヤーズ・オブ・ハーモニー』のアナログLPで聴く事が出来た。

2021年に再発売された『テン・イヤーズ・オブ・ハーモニー』ハイレゾCD(UHQCD/MQA)にこの貴重なシングル・バージョンが収録されました!

作者:C.Berry

リード:Alan


上昇する独特のコーラスが印象的な爽快感たっぷりの傑作ソフト・ロック。このメロディ・ラインは前出の「オール・ドレスド・アップ・フォー・スクール」のオープニングをアレンジしたもの。ブライアンとマイクの共作曲。 リード・ボーカルはカールと一部マイクが歌っているが、殆どのパートはメンバーの圧倒的なコーラス・ハーモニーで歌われ、グッと胸を打つ。「goin' on」の最後の繰り返しでブライアンの声も聴こえる。 メロディはちょっぴり感傷的で、このアン・アメリカン・バンドが歩んできたこれまでの長く険しい道のりを考えると、実に感慨深い。そしてドラマチックなサックス・ソロは晩夏を惜しむかのような哀愁が感じられる。

「続くのか、この思い…」という元妻のマリリンへの愛を歌った内容であるが、この後のバンドの運命をも暗示しているかのようだ。

80年3月11日にシングル・カットされたが全米83位と見事にコケてしまった。曲の出来はこんなに良いのに。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Group, Carl, Mike


ホーン・セクションとスティール・ドラムがフィーチャーされたトロピカルなムード満載の太陽賛歌。作者はブライアンとマイク。

黒人女性コーラス・グループのクリスタルズが64年に発表した「リトル・ボーイ」をブライアンがカバーしようとしたものをマイクがサマー・ソングに書き換えたものなので、メロディ・ラインは「リトル・ボーイ」である。 ノリノリのリード・ボーカルはマイク。彼のサマー・ミュージックへの執着ぶりが如実に現れている1曲だ。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Mike


10年前、ブライアンの自宅のスタジオで行われた"サンフラワー・セッション"で録音されていたブライアンとマイクの作品。 『サンフラワー』や『サーフズ・アップ』の収録曲として候補に上がっていたが、ずっと未発表であった。

「女性が集まると話題はいつも恋の話..」といった女性を皮肉ったような内容で、マンドリンが奏でるヨーロッパ・テイストたっぷりの優雅なサウンドをバックに、マイクとブライアンの息の合ったツイン・ボーカルで歌われている。 フレンチ・ホルンやクラリネットなどのホーン・セクションがふんだんに使われた、非常に凝ったサウンドは豊かな音楽性を感じさせる。特筆すべきは迫力満点のバス・ドラムの音響で、これは天才エンジニアのスティーブ・デスパーによるテクニックの賜物だ。

2021年にリリースされた『フィール・フロウズ:サンフラワー&サーフズ・アップ・セッションズ 1969~1971』デラックスエディションにはバッキング・トラックが収録されている。

作者:B.Wilson - M.Love

リード:Brian, Mike


冒頭から圧倒的なハーモニーを聴かせるブライアン・ウィルソンとアル・ジャーディンが作った屈指の名曲。リード・ボーカルはアル、サビをマイクが歌っている。 サンタ・アナ・ウィンドとは春と秋に熱風を吹かせるカリフォルニア州の季節風の呼び名で、地元では悪魔の風と呼ばれるほど恐れられている暴風。時にはハリケーンや山火事を引き起こすそうだ。この圧倒的な季節風への畏敬の念と、自らを暴風に例えて再びグループの旅の始まりへの想いが綴られている。

流麗なストリングスをバックに感傷的で切ないメロディが展開されるフォーク・ソング風の作品で、ブライアンによる間奏のハーモニカが更に胸を熱くさせる。 前作『L.A.(ライト・アルバム)』でレコーディングされていたが選曲に漏れ、本作に収録された。初期バージョンはもっとロック色が強いクールな仕上がりであった。原曲は70年代前半に作られたものだと思われる(推測)。

「リヴィン・ウィズ・ア・ハートエイク 」のB面としてシングル・カットされている。

作者:B.Wilson - Al Jardine

リード:Mike, Alan


ブルース・ジョンストンが書いた甘く洗練されたバラード。 フェンダー・ローズ・ピアノをバックに歌われるリード・ボーカルも彼によるもの。曲の後半からカールのリード・ボーカルによるタイトル通りにパワフルで圧倒的なハーモニーが展開される。「ゴーイン・オン」のB面としてもシングル・リリースされている。

ブルースは74年にこの曲を「テン・イヤーズ・ハーモニー」というタイトルで発表しており、歌詞の1部を変えて本作に収録した。 98年にはビーチ・ボーイズのドキュメント映画のタイトルにもなり、そのサントラ盤『エンドレス・ハーモニー』にも収録されている。

作者:B.Johnston

リード:Bruce, Carl




サンタ・アナ・ウィンド

作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン/アル・ジャーディン


"ここ南カリフォルニアにはサンタ・アナ・ウィンドと呼ばれる季節風が吹く"

熱風よ、砂漠の風よ
彼女は砂漠のそよ風から生まれ
渓谷の細い道をくぐり
やがて銀色に輝く大海原へ抜ける

どの方向にも
彼女は完璧に吹くのさ
あのサン・ガブリエル山をごらん

サンタ・アナ・ウィンドはいつも僕の心に吹いている
サンタ・アナ・ウィンドはいつも僕の心に吹いている

砂漠の風よ、僕の帆を満たしてほしい
高波をおこしてほしい
そして僕の力を試すんだ
自由に吹きまくるサンタ・アナ・ウィンドの中で

意気揚々としたうねりの中で
僕の創造の世界は
無限に広がる海と一体となるんだ

サンタ・アナ・ウィンドはいつも僕の心に吹いている
サンタ・アナ・ウィンドはいつも僕の心に吹いている

僕は風、砂漠の風
海への巡礼の旅
負けることを恐れずに乗り越えてみせるさ
実り豊かな人生を求めて

僕の歌でみんなに若さと創造力を与え
汚れなき言葉を囁くんだ

サンタ・アナ・ウィンドはいつも僕の心に吹いている
サンタ・アナ・ウィンドはいつも僕の心に吹いている

対訳:管理人





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