シャット・ダウン・ヴォリューム2
Shut Down Volume 2
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64年3月にリリースされた5作目となるビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
傑作「ファン・ファン・ファン」、「ドント・ウォリー・ベイビー」、「太陽あびて」収録。
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プロデュース:ブライアン・ウィルソン
Capitol Revel 1964.3.23
曲目リスト
ヒストリー
1964年、キャピトルはビーチ・ボーイズの新作を発売する。しかし、新アルバムのチャートはそれほど振るわず、最高でも13位をキープするのがやっとであった。ビーチ・ボーイズ苦戦の原因、それは…
そう、ビートルズのアメリカ上陸である。 この年の初頭、「抱きしめたい」の大ヒットを皮切りに次々とチャートを独占。 いわゆる「ブリティッシュ・インヴェイジョン」の現象がアメリカに留まらず世界中を席巻し、それまでの音楽勢力図をガラリと一変させてしまうのだ。 マネージャーのマリー・ウィルソンの広告戦略「私はブライアンのパパを知っています」バッジもすっかり色褪せたものになった。
ビートルズのアメリカの配給会社がビーチ・ボーイズと同じキャピトル・レコードであった事、弟のカールがビートルズに夢中になった事(マリーは部屋にビートルズのポスターを貼っていたカールを裏切り者と呼んだ)など、ブライアンはビートルズに脅威を感じ始めていた。 テレビのエド・サリバン・ショーでビートルズと熱狂する観衆を見て衝撃を受けたブライアンは、既に出来上がっていたアルバム『シャット・ダウン・ヴォリューム2』を1から作り直すと言い出し、何とかマイクに説得されて思い留まったという。
自信を失いかけたブライアンであったが、やがでビートルズへの対抗意識が彼を更に成長させることになる。 ターニング・ポイントである。
アルバム解説
キャピトルは1963年6月にホット・ロッド・ソングを集めたオムニバス・アルバム『シャット・ダウン』をリリースし、これが全米7位のヒットとなる。 ビーチ・ボーイズに無断で発売されたこのアルバムには、彼らのヒット曲である「シャット・ダウン」や「409」の他、スーパー・ストックス(ゲイリー・アッシャーがプロデュースしたグループ)やザ・チアーズ(50年代半ばに活躍したボーカルグループ)などのカー・ソングが収録されている、企画アルバムであった。
64年3月23日にリリースされた本作『シャット・ダウン・ヴォリューム2』は、そのコンピレーション・アルバムの続編として制作/発表されたのであるが、中身は純粋にビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバムである。 ブライアンにとってアルバム・タイトルや曲のコンセプトなどにこだわりは無かったのであろう、ご丁寧に「シャット・ダウン・パート2」なるインスト曲も収録されている。
アルバムジャケットはメンバー5人が勢揃いしたショットで、アル・ジャーディン(一番左)が初めて登場した。
レコーディング・リハーサル風のおふざけやデニスのドラム・ソロなど曲といえないものも収録され、その点では“ゆるい”印象を与えるものの、いくつかの作品はこれまでにないクオリティーの高さを誇っている。 明らかにフィル・スペクターの影響を受けた作品が初めて登場する点は特筆すべきである。
ブライアンが「本物のヒット曲だ」と自信を持って送り出したマイクと作ったオリジナル作品で、ビーチ・ボーイズの代表作になっている。
一応ホット・ロッド・ソングではあるが、歌詞はデニスの体験談に基づいたもっと普遍的な若者の日常生活を歌ったもの。
軽快で疾走感があるチャック・ベリー風のギター・プレイはカールによるもの、間奏のオルガンと絡み合うチョーキングを多用したギター・ソロはグレン・キャンベルが弾いている。 迫力あるドラムはデニスとハル・ブレインによるツイン・プレイだ。 エンディングのブライアンによるフォルセットが特に印象的で、タムロールとともにコンサートでも一番盛り上がるところだ。
シングル・バージョンとミックスが異なり、こちらのアルバム版の方がボーカルをフィーチャーしたミックスになっている。
2013年にリリースされたボックス・セット『カリフォルニアの夢』には新たなステレオ・ミックスが登場、この曲のポテンシャルの高さを存分に味わえるサウンドを聴く事が出来る。
透き通ったフォルセット・ボイスとコーラスが絶妙な、珠玉のバラード。
黒人女性コーラス・トリオ、ロネッツが前年の8月に発表した「ビー・マイ・ベイビー」に触発されたブライアンが、その続編として作った曲。 カー・ラジオから流れてくるロネッツの新曲を聴いたブライアンがあまりの素晴らしさに驚嘆したというエピソードがある。 「ビー・マイ・ベイビー」の作者でありプロデューサーのフィル・スペクターに心酔していたブライアンは、ロネッツやクリスタルズなどをプロデュースしていたスペクターに習い、サヴァイヴァーズやハニーズなどのレコーディング・プロデュースを積極的に行っていた。
タイトルの「ドント・ウォリー・ベイビー」は当時ブライアンが付き合い始めたばかりのマリリン・ローヴェルの口癖であった。 2人が初めて会ったコーヒーハウスで、いきなりブライアンがマリリンにホット・チョコレートをこぼすドジを踏むが、このときも彼女は「気にしないで、ベイビー」と言って優しく慰めている。 ブライアンとマリリンはこの年の12月7日に結婚する。
ブライアンとロジャー・クリスチャンの共作で、シングル「アイ・ゲット・アラウンド」のB面ながら24位のスマッシュ・ヒットを記録している。
2013年の『カリフォルニアの夢』ではボーカルが異なる別バージョンを聴く事ができる。 又、同アルバムにはコーラスを左右に、リード・ボーカルを中央に配置した新しいステレオ・ミックスも収録されている。
レコードコレクター2016年7月号の人気投票「ベストソングス100」では、「アイ・ゲット・アラウンド」に続く4位に選出され、この曲がいかに日本のファンに愛されているかを裏付ける結果となった。
オープニングとエンディングにスローなコーラスを配した、アップ・テンポのカー・ソング。 内容は車のデートを歌ったもので、ブライアンとロジャーのコンビによるもの。
リード・ボーカルはマイク。分厚いハーモニーが秀逸で、ブライアンのフォルセットも然る事ながらマイクの低音が効果的である。 間奏のカールのギターが実に軽快なサウンドを響かせている。
ブライアンやマイクらがふざけた様子のレコーディング風景。「ファーマーズ・ドーター」や「サーフィン・サファリ」、「イン・マイ・ルーム」「ファン・ファン・ファン」などを茶化して歌っている。
ブライアンは味をしめたのか、この後に発表するアルバム何枚かにはおふざけナンバーが1、2曲収録され続けた。
ブライアンとマイクの共作。63年11月22日のダラスにおけるケネディ大統領暗殺にショックを受けた2人が次の日に作ったもの。
何度も転調を繰り返す不思議なコード進行、澄みわたったブライアンのフォルセット・ボイス、美しく繊細なコーラス、彼女を失った喪失感を見事に表現したバラードの傑作である。
アルペジオを奏でるギターや
このアルバムの7ヶ月後のシングル曲「ダンス・ダンス・ダンス」のB面にも収録。
ブライアンは95年のソロ・アルバム『駄目な僕』でこの曲をセルフ・カバーしている。 また、2007年のビーチ・ボーイズのベスト・アルバム『The Warmth Of The Sun(ザ・ウォームス・オブ・ザ・サン)』のタイトル・ナンバーとしても取り上げられた。 2013年のボックスセット『カリフォルニアの夢』ではリード・ボーカルをセンター、コーラスを左右に配した新ステレオ・ミックスが収録されている。
ブライアンとマイクが作ったシンプルなシャッフル・ビートのロックン・ロール曲。 ゲイリーやロジャーが書くような自分の愛車への想いが歌われている歌詞はマイクによるもの。
荒削りなダブル・トラックのリード・ボーカルはデニス・ウィルソンで、少しハスキーな感じがワイルドなこの曲に合っている。 ビーチ・ボーイズにしてはクールな印象のコーラスである。
アメリカ黒人ドゥーワップ・グループのフランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズによる56年のヒット曲。 リード・ボーカルはブライアン。
殆どがセッション・ミュージシャンによる演奏で、ジャジーなサックスやハル・ブレインのドラミングなどフィル・スペクターを相当意識したサウンドになっており、全篇に渡って非常に深いエコーがかけられている。 複数テイクをオーバー・ダビングで重ね、重厚なモノ・ミックス・サウンドを作る、というスペクターのプロデュース方法に影響を受けた結果である。 怒涛の如く連打されるパーカッションは圧巻。
「ファン・ファン・ファン」のB面に収録されたシングル・バージョンにはイントロのドゥー・ワップにコーラスが付いている。 2009年の編集アルバム『サマー・ラヴ・ソングス』にはこの曲の初めてのステレオ・ミックスが収録されているが、冒頭に30秒ほどのピアノとグロッケンシュピール(鉄琴)が奏でるお洒落な前奏曲を聴く事が出来る。
ポン・ポンを両手に持ったフットボールのチアリーダーについての歌で、ブライアンとゲイリー・アッシャーの共作。 手拍子も入った軽快なテンポを持つナンバー。
リード・ボーカルはカール・ウィルソン、一部をマイク・ラヴが担当。
リズム・ギターが「チャチャチャチャ」と刻む非常に歯切れの良いサウンドで、複雑に絡み合うコーラスも洗練されている。 エンディングのチアリーダーの声はブライアンによるもの。頼りないテナー・サックスはマイクが吹いている。
しっとりとしたサーファー・ガール調のラヴ・ソング。63年の「ユア・サマー・ドリーム」を発展させたようなブライアンとボブ・ノーバーグの共作曲。 ブライアンのフォルセット・ボイスもさることながら、工夫されたバック・コーラスのコード展開が曲に独特の表情を与えている。
ブライアンは98年のソロ・アルバム『イマジネーション』でセルフ・カバーしているが、こちらもなかなか聴き応えがある。 2014年にリリースされた64年のセッション集『キープ・アン・アイ・オン・サマー:ビーチ・ボーイズ・セッションズ1964』には、リード・ボーカルを除いたミックスが収録されていて、音質が悪いものの、素晴らしい流麗なバック・コーラスを聴くことが出来る。
カールが作ったロック調のインストゥルメンタル・ナンバー。 イントロのサックスは「シャット・ダウン」同様マイク・ラヴによるもの。
カールの軽快なギターはフェンダー・ジャガー。ハル・ブレインのドラムも歯切れがいい。70年代の角川映画で使われていそうな曲調、小生の個人的な感想である。
リチャード・ベリー58年の作品で、63年にキングスメンがヒットさせた曲。他にも様々なアーティストが取り上げているスタンダード・ナンバー。
リード・ボーカルはカールで、キングスメン・バージョンではサックスだったパートをマイクがバス・ボイスで歌っている。 グループのお気に入りで、コンサートでもしばしば取り上げられた。
デニスのドラム・ソロ。
この頃のデニスはバンドのドラマーとして、ライブ会場では女性から絶大な人気を博していた。彼の音楽的才能は60年代後半から発揮される事になる。
2014年のレア音源集『キープ・アン・アイ・オン・サマー:ビーチ・ボーイズ・セッションズ1964』には、カールのギターやアルのベースなどが加わったこの曲のセッション風景が収録されている。
ボーナストラック
「リトル・セイント・ニック」に続く8枚目のシングル曲で、64年2月3日にアルバムに先駆けてリリースされた。 ちょうどこの時期はビートルズがチャートの上位を占めていたため、全米トップ5止まりであった。
マネージャーであったマリー・ウィルソンは、この曲が“弱い”と考え、メンバーに無断でレコーディングスタジオの予約をキャンセルしたことがある。それはブライアンを怒らせる原因にもなった。
アルバム・バージョンと比べるとドラムやギター、サックスなどのバッキングに迫力があり、エンディングの演奏が最後まで聴こえる(アルバム版は演奏が早めに終わるので、最後の方がアカペラになる)。
『シャット・ダウン』のジャケット。
ドント・ウォリー・ベイビー
作曲:ブライアン・ウィルソン、作詞:ロジャー・クリスチャン
いつからだろう
僕の心に募るこの思い
自分でもわからないけど
考えてしまうんだ
とても悪いことが起きそうだと
でも彼女は僕の目を見つめ
さとすようにこう言うんだ
ベイビー、心配しないで
ベイビー、大丈夫だから
ベイビー、気にすることないの
結局すべてうまくいくのだから
ベイビー、心配しないで ※
ベイビー、大丈夫だから
ベイビー、気にすることないの
黙っていればよかったのに
自慢の車について口論さ
もう引き下がれないから
相手を突き飛ばしてしまったんだ
そんな時に彼女は僕を元気づけ
こう言ってハンドルを握る気にさせるんだ
ベイビー、心配しないで
ベイビー、大丈夫だから
ベイビー、気にすることないの
結局すべてうまくいくのだから
(※ 繰り返し)
彼女は言った
"今夜のレース頑張って
想いはいつもあなたのそば
私がどれだけ愛しているか
だから怖がることなど無いの"
あぁ、彼女は尽くしてくれる
気遣いながらこう言うんだ
ベイビー、心配しないで
ベイビー、大丈夫だから
ベイビー、気にすることないの
結局すべてうまくいくのだから
(※ 繰り返し)
対訳:管理人
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