マジカル・ミステリー・ツアー
Magical Mystery Tour

(アルバム)


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音と詩の魔術によるパノラマ・ア・ラ・ビートルズの世界

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プロデュース:ジョージ・マーティン

Parlophone Revel 1967.11.27


ヒストリー

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』発表直後の1967年6月25日、世界初の衛星放送「アワー・ワールド(われらの世界)」にイギリス代表として出演したビートルズ。全世界31ヶ国で3億人が視聴したといわれるこのテレビ番組で新曲「愛こそはすべて」を生披露、アーティストとしても高い評価を得たビートルズ絶頂期の象徴的なシーンとなった。

そんな中、8月27日にビートルズの敏腕マネージャーのブライアン・エプスタインが32歳の若さで他界する。

エプスタインが亡くなる前から企画されていたテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』。 ポールのスケッチや手書きのメモを頼りに、各メンバーがアイディアを出し合いながら開始された撮影であったが、司令塔なしのロケ現場は混乱する事態に。BBCでクリスマス特別番組として放送された『マジカル・ミステリー・ツアー』は失敗作と見なされ、マスコミからは「ビートルズも間違いを起こす」と酷評された。ポールによる前代未聞の“弁解”記者会見まで開かれる、ちょっとした騒動となった。。。

エプスタイン死後のマネージメントを収拾するため、グループの活動を管理する会社“アップル・コア”の設立が計画されることになる。


アルバム解説

67年11月27日にアメリカで発売された、同名テレビ番組のサウンド・トラック・アルバム。A面にテレビ映画の挿入曲、B面に当時発売済みのシングル曲を配した構成。 イギリスでは同年12月8日に2枚組みEP盤として発表されている。(イギリスでも約1年後の67年10月29日に輸入盤としてLPがリリースされる)

ビートルズのオリジナル・アルバムでは無いが、選曲の良さから人気を集め、87年のCD化では公式アルバムとしてライン・ナップされた。現在では正式に9枚目のオリジナル・アルバムに位置づけられている。

レコーディングは『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のセッション終了直後の4月25日から開始された。 不評だったテレビ映画とは異なり、サウンド・トラックは絶賛された。 収録曲の多くは『サージェント・ペパー』の作品群と同水準の充実した内容を誇る。又、後半(アナログB面)に収録された素晴らしいシングル曲が、このアルバムを魅力的な作品にしている事は間違いない。 彼らの全作品中、最もサイケデリック色が強いアルバムであるが、この傾向は本作で終了する事になる。

さて、当時酷評されたテレビ映画であるが、ストーリーが無く無秩序な展開は80年代のプロモーション・ビデオを先取りしており、ビートルズの貴重なMTVとしてもっと評価されるべきでは?と個人的に思う。

小生の好き度

★ ★ ★ ★ ★

「バス・ツアーを行って旅先のハプニングをフィルムに収めよう」というポール発案のテレビ映画用オープニング・テーマ曲。 ビートルズは『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のセッション終了直後からこの曲のレコーディングを開始している。

ブラス・セクションが華やかな印象を与えるアップテンポなマーチ風のポールの作品。 リードボーカルはポール、オープニングから繰り返されるフレーズはジョン、ジョージ、ポールの合唱。 印象的な「ゴー」という効果音はバスの走行音を表現している。 曲の後半はスローテンポになり、エンディングではエキゾチックでタイトル通りのミステリアスな雰囲気を醸しだしている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


ポールのピアノの弾き語りによる美しい作品。印象的なリコーダーもポールによるプレイ。 曲調はフルートが奏でられる牧歌的な主題と、幻想的でサイケデリックなパートが含まれる。 歌詞は地動説を唱えて断罪されたガリレオ・ガリレイについて書かれた哲学的な内容である。

テレビ映画ではフランスのニースで撮影されたポールが美しい風景に入り浸っているというシーンで使用された。 今ではスタンダード・ナンバーとして多くのアーティストにカバーされている。

小生の高校時代、クラシック・ギターを習う時間があったのだが、その時の教材の中にこの曲があったのを覚えている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人の共作となるインストルメンタル曲。

メロトロンとギターの響きが不思議な浮遊感を醸しだしている。 そしてリンゴのドラムがサウンドをまとめている。 歌詞は無いが、途中から奇妙なコーラスが入り、エンディングにはテープの逆回転などの効果音が挿入されている。

映画ではバス移動中の幻想的なシーンで使われ、イマジネーションを刺激する映像を見ることが出来る。

作者:J.Lennon - P.McCartney - G.Harrison - R.Starkey


ジョージの作品。彼のボーカルとドラムスはかなりフェイジングされており、テープの逆再生やストリングスアレンジが不気味な印象を与える曲である。 ここでもリンゴのプレイがとても光っている。

「ブルー・ジェイ・ウェイ」とはロサンジェルス・ダウンタウン北方の山の中腹にある住宅地の地名で、広報担当のデレク・テイラーがそこで濃霧のために道に迷ってしまいジョージが長い時間待たされたエピソードを歌ったものといわれている。

テレビ映画では、インド哲学に心酔するジョージが民族衣装を着て瞑想する幻覚的な映像を見ることができる。

作者:G.Harrison

リード:George


ポールが作ったボードビル調ピアノの弾き語り曲。シンプルでメランコリックな雰囲気漂う隠れた名曲である。 間奏におけるポールのベースとピアノに合わせた感傷的なハーモニウムはジョンのプレイ。 シングルカットされてはいないが、この曲をモチーフにしたカバーやインストルメンタルは様々なジャンルに取り上げられている。

テレビ映画ではメンバー全員が襟にカーネーションをさした白いタキシード姿でツアー客と一緒に歌い踊るエンディング・シーンで使用された。ポールだけ黒い花だった事が、後にポール死亡説の根拠とされた。

『ビートルズ・アンソロジー2』には鼓笛隊のようなドラムが印象的な別バージョンを聴く事が出来る。

そういえばテレビアニメ「うる星やつら」の雨のシーンにこの曲のメロディが使われていたのを覚えてます。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


シングル曲「ハロー・グッドバイ」のB面収録曲。

ビートルズの全作品中、最もサイケデリック色の強いジョンの作品。 レコーディングは67年9月5日から約1ヶ月間、断続的に行われた。 曲のベースになっているジョンが弾くエレクトリック・ピアノの旋律は、ある晩、彼を悩ませたサイレンの音をモチーフにしたといわれている。

ジョージ・マーティン編曲の大編成オーケストレーションやコーラス、合唱団による笑い声、テープ操作、BBCラジオ放送音声などの効果音が混沌としたイマジネーションを刺激する大作。 後のミュージシャンに多大な影響を与えた傑作曲である。

ジョンのボーカルはファズが強くかけられて歪み、ナンセンスな言葉遊びのような難解な歌詞が延々と歌われる。 後半のラジオ音声が入った部分からはモノ・ミックスになっている。

「ウォルラス」とはセイウチの事で、キャロル作の『鏡の国のアリス』からとられたものである。歌詞中の「エッグ・マン」もハンプティ・ダンプティの事だ。 テレビ映画の1番のハイライト・シーンとして、ジョンがセイウチ、ポールはカバ、ジョージはウサギ、リンゴは鳥の着ぐるみを着て演奏している。

小生はベストアルバム『ザ・ビートルズ1967年~1970年』(通称“青盤”)でこの曲を初めて聴いたのだが、ボーカルの歪みがほこりのためだと勘違いし(B面1曲目だった)、レコードを2回もクリーニングしてしまいました(笑)。

“青盤”の2023エディションに衝撃のリミックスが登場!ロック感が増し、まるで3D映画を見てるみたい!とにかく凄い!2024/3追記

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


67年11月24日にリリースされた、16枚目のシングル曲で全英チャートで1位を獲得。

大胆なストリングス・アレンジが特徴的なポールの作品。リードボーカルもポール。 この時期の作品としては珍しく非常に覚えやすいシンプルな歌詞とメロディである。 反意語を多用したシンプルな歌詞であるが、コーラスワークや楽器編成を微妙に変化させている。特に3コーラス目のメインとバックのボーカルパートの絡みは素晴らしい。 間奏のチェロに絡むリンゴの驚異的なドラミングは必聴で、この優美なアイリッシュ・ダンス曲にテンポを与えている。 曲が終わった後、「ハロー」と「アロハ」をもじったフェイドアウト部分のみテレビ映画のエンディングに使われている。

「サージェント・ペパー」の衣装を着て演奏しているこの曲のビデオ・クリップを見ることが出来る。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に先駆けて67年2月17日に発表された14枚目のシングル曲。全英の最高位第2位。

リバプールにある孤児院「ストロベリー・フィールド」をモチーフにしたジョンの作品。 66年8月29日に最後のコンサートを終えたビートルズが3ヶ月の充電期間を経て久しぶりにスタジオ入りしこの曲のレコーディングを開始する。 元々はギター、ドラムスのシンプルなアレンジであったが、当時開発された電子楽器メロトロンを加えた幻想的でノスタルジックな穏やかさが際立った“テイク7”が最終バージョンとして一旦完成する。 ところが10日後にジョンはプロデューサーのジョージ・マーティンに「やっぱり違う感じがする。もう1度録り直したい」と伝え、アレンジを変えてレコーディングを再開、ジョージ・マーティン編曲のオーケストレイションや印象的なシンバルの逆再生音などを施したサイケな狂想曲のような趣を持つアップテンポなテイクが仕上がった。ジョンも納得しこの最終“テイク28”が完成版となる。

翌日、ジョンはマーティンに「良く考えてみると前のシンプルなのもいいね。前半にテイク7を繋げられないかな?」と相談するが、2つのテイクはキーもテンポも違っていた。「無理だよ、ジョン」と言うマーティンにジョンは「君なら出来る!」と返したらしい。 ジョンの無茶ぶりに一応チャレンジしてみたところ、最終テイクの速度を落とすとキー・テンポともにテイク7と一致する事が判明した。 このテイク違いの繋ぎ目は冒頭から1分後、2番の歌詞「Let me take you down, 'cause I'm going to」の、「I'm」と「going」間に訪れる。

さまざまなサウンド・エフェクトを試みた野心作で、サイケデリック・ソングの傑作である。曲の終盤、フェイドアウトの後に再びサウンドが執拗に鳴り響く見事なエンディングもマーティンとエンジニア達のチームワークの勝利といえる。

まどろんだリードボーカルはジョン。オープニングはポールが弾くメロトロン、間奏のハープのような音はジョージが弾くインド楽器スワラマンデラ、エンディングに聴こえる民族音楽風にスウィングするメロトロンはジョンによるもの。アグレッシブで執拗なリンゴのドラムも素晴らしい。 エンディングのジョンの呟きが「ポールを埋めた(I Buried Paul)」と聴こえる事から“ポール死亡説”の証拠として騒がれたが、実際には「クランベリーソース(Cranberry Sauce)」と言っている。

アナログ版『マジカル・ミステリー・ツアー』にはジョンのボーカルに深いエコーがかかった別ミックスが収録されている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John


「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と両A面でカップリングされたシングル曲。全米1位を獲得。 ペニー・レインとはリバプールにある通りの名前で、歌詞も通りについて情緒豊かに歌われている。 作詞・作曲・リードボーカルはポール。 ポール曰くジョンが作った「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」に触発されて書いた曲だという。

ポールとジョンがピアノ、ジョージはコンガを担当。キーボードの使い方は、ビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」に影響されているという。 ブラスが効果的に使われ、間奏のピッコロ・トランペットのソロは当時ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団に所属していたデビット・メイソンによる演奏。 テレビで放送されていたバッハの『ブランデンブルク協奏曲第2番』の高音のトランペットに感銘を受けたポールの要望により、演奏者のメイソンが招かれたという。 ヨーロピアン・テイストたっぷりの幻想的な作風であるが、ポップな要素も盛り込まれた中期の傑作曲である。

67年初頭、マネージャーのブライアン・エプスタインはビートルズの新曲リリースが半年近くも無い事をひどく気にしていた。この時点で「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」を「ペニー・レイン」か「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」のどちらかとカップリングする事が現実的な選択肢であったが、ジョージ・マーティンは「超強力な組み合わせをぶつけよう」という事で「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」との両A面シングルが発表される事になったという。 しかしイギリスでは最高位第2位止まりとなりシングルの連続1位記録が途絶えてしまう。

のちにマーティンは、この曲と「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」をアルバム『サージェント・ペパーズ』に収録しなかったことを、自身の全キャリアにおける“最大の失策”と言っている。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:Paul


シングル「愛こそはすべて」のB面収録曲。

ジョンとポールの別々の曲を1つにした作品。ジョンが歌う冒頭のフレーズはジョンが作っている。サビの部分がポール作で、ポールのボーカルにジョンがハーモニーをつけている。 バグパイプのような音はジョンが演奏しているクラヴィオラインという鍵盤楽器。 たまたまスタジオに居合わせたミック・ジャガーがコーラスに参加している。

「リッチマン」とはマネージャーのブライアン・エプスタインの事だとポールは発言している。エンディングではジョンが「Baby, You're a Rich fag Jew(お前は金持ちのユダヤのホモ野郎)」と歌っているが、この曲のレコーディングの3ヶ月後にエプスタインは他界してしまう。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John,Paul


67年7月7日にリリースされた15枚目のシングル曲。

この年の6月25日に31ヶ国で同時生放送された衛星放送「アワ・ワールド」でこの曲のレコーディング風景が披露された。 日本ではNHK総合テレビで「われらの世界」というタイトルで放送されている。 その時の録音テープに幾つか追加して2週間後にシングル・レコードとして発表、全英、全米ともにナンバーワンヒットを記録した。

ジョンの作品で、リードボーカルも彼のダブルトラック。普遍的な愛をテーマにした歌詞で、4拍子と3拍子を組み合わせた変拍子が特徴的である。 珍しくジョンがハープシコードを、ポールはウッド・ベース、ジョージはヴァイオリンを演奏している。 イントロにフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を引用し、エンディングにバッハの「インヴェンション8番」、グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」のイントロ部分、イングランド民謡「グリーンスリーブス」、ビートルズの「シー・ラヴズ・ユー」、「イエスタデイ」などの1節が挿入されている。

祝福ムード漂う最後の大合唱にはエリック・クラプトンやミック・ジャガー、キース・リチャーズ、マリアンヌ・フェイスフル、パティ・ボイド、ジェーン・アッシャー、キース・ムーンらが参加している。

作者:J.Lennon - P.McCartney

リード:John





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