ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神が創りしラジオ~
That's Why God Made The Radio
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2012年7月にデビュー50周年として発表されたビーチ・ボーイズのオリジナル・アルバム。
全米チャート3位。ブライアン・ウィルソンのプロデュース作品。
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プロデュース:ブライアン・ウィルソン
Capitol Revel 2012.7.5
曲目リスト
ヒストリー
ブライアンはワンダー・ミンツのメンバー、ダリアン・サハナジャやギタリストのジェフリー・フォスケットらの強力なブライアン・ウィルソン・バンドと共に幅広く活躍、2008年には傑作『ザ・ラッキー・オールド・サン』を発表している。 アルは「アラン・ジャーディンズ・ファミリー&フレンズ・サマー・バンド」として活動、2011年には初のソロ・アルバムを発表する。 マイクとブルースは本家"ザ・ビーチ・ボーイズ"としてライブ活動を精力的に行っていた。
ブライアンとアルは、マイクとの確執によりバンドを脱退しており、特にブライアンとマイクの溝は深く、90年代から互いに訴訟を繰り返していた。 94年には、曲の共作者としてクレジットされていないとするマイクの訴えにより、66年までに発表された作品のうち35曲に彼の名が記される判決が下され、賠償金50万ドルがブライアンからマイクへ支払われている。
このままかつてのメンバーが揃うことはないと思われていた2012年4月、ブライアン、マイク、アル、ブルース、そしてデビューから約1年間グループに在籍していた初期メンバーのデヴィッド・マークスが集結、ビーチ・ボーイズとして世界ツアーを敢行する。 8月には来日し、パワフルな公演を見せてくれた。 この年は、キャピトル・レコードから「サーフィン・サファリ」でレコード・デビューしてから50年目の節目の年で、7月5日には待望のニュー・アルバムが発表される事になった。
タイトルは『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神が創りしラジオ~』、全曲オリジナルの新作というファンにとってうれしい内容である。 純粋な新作アルバムとしては85年の『ザ・ビーチ・ボーイズ'85』以来となる、実に27年ぶりの作品となった。
この素晴らしい新作のリリースで世紀のバンド、ザ・ビーチ・ボーイズは大団円を迎えるが、ブライアン・ウィルソン、マイク・ラヴ、アル・ジャーディン、ブルース・ジョンストン、そしてデヴィッド・マークスの音楽人生は終わらない。 そして、デニス・ウィルソンとカール・ウィルソンのロック魂は、ずっと人々の心に生き続ける。
なぜなら彼らの音楽はエンドレス・サマー、エンドレス・ハーモニーなのだから。
アルバム解説
2012年7月5日にキャピトル・レーベルから発売されたオリジナル・アルバム。
プロデュースは久しぶりにブライアン、エグゼクティブ・プロデューサーとしてマイクの名が記載されている。
全12曲中、11曲がブライアンの書き下ろしで、旧ウェスタン・スタジオ系列のオーシャン・ウェイ・スタジオでレコーディングされている。 共作者のジョー・トーマスは、ブライアンの98年のソロ・アルバム『イマジネーション』の共同プロデューサーだった人だ。
あの懐かしいオープン・ハーモニーが十分に堪能できる作品で、70歳を越えた老人が作り出したものとは思えない、若々しい感性に満ちているものになった。 全体に感傷的な曲が多く、終盤の3曲は老境を迎えた彼ら自身を見つめるもので、実に感慨である。
彼らの原点ともいえるようなタイトル曲は、珠玉のコーラスが情緒的なポップ曲であり、長い間ファンが待ち望んでいた見事なものだ。 ジェフリー・フォスケットのフォルセット・ボイスや衰えを見せないアルの声も素晴らしいが、バックに徹したデヴィッド・マークスのギター・プレイも光っている。
アルバムジャケットは相変わらずかっこ良くないが、全米チャートは堂々の3位にランク。 ビーチ・ボーイズ健在を強く印象付ける事になった。
感傷的なピアノをバックに、ビーチ・ボーイズらしい美しいハーモニーを聴かせるアルバムの前奏曲。これまでも多くのアカペラ曲を披露してきた彼らであるが、このサウンドは何という悲しい響きであろうか。
ブライアンとジョー・トーマスの共作。メイン・ボーカルのアル・ジャーディンの声が実に素晴らしい。
最後のフレンチ・ホルンの響きが何ともいえない余韻を残しながら、次曲に繋がっていく。
軽快なチャド・クロムウェルのドラムで始まる、オープン・ハーモニー全開の珠玉の名曲。ブライアンとマイクがまだロー・スクール時代、互いの家を行き来し、真夜中までAMラジオから流れてくるヒット曲を聴いていた、彼らの原点を歌ったもの。
ブライアンとジョー・トーマス、ジム・ピータリック、ラリー・ラミスの作品。リード・ボーカルはブライアン、ブルース、マイク。
12年4月25日にシングル・カットされ、全米チャート16位を記録する。ディレイを効かせたデヴィッド・マークスのエレキ・ギター、ハモンド・オルガンやサックスが奏でるサウンドは、暖かく懐かしい雰囲気を醸し出している。
幾重にも折り重なるコーラスは圧巻で、ビーチ・ボーイズ・サウンドの真髄を聴かせる素晴らしいものである。 同じ年、日本でもNHK「SONGS」でビーチ・ボーイズが特集され、この曲が紹介されたのは記憶に新しい。
ブライアン、マイク・ラヴ、ジョー・トーマス、ジム・ピータリック、ラリー・ラミスの共作による、ブライアンらしい作品。ウクレレが印象的なミディアム・テンポの優しいサウンドである。
リード・ボーカルは前半をブライアン、後半をマイクが担当。サビの高音パートはブルース、続くフレーズをアル、美しいフォルセット・ボイスをジェフリー・フォスケットが歌い、それぞれ持ち味を発揮している。
あっという間に時は過ぎ去ったけど今こそ楽しもう、という前向きな歌詞。ボーカルを再録音して12年9月28日にシングル・カットしている。
共作者のジム・ピータリックとラリー・ラミスは、シカゴのバンド、"アイズ・オブ・マーチ"のメンバーで、ピータリックは映画『ロッキー3』の主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」の作者としても知られる。
心がうきうきするような春休みを歌った、オルガンの響きがちょっとゴスペル調の青春賛歌。ブライアンとジョー・トーマスが作ったメロディにマイクが歌詞を書いたもの。彼らの人生を振り返るような内容であるが、希望に満ちた前向きな思いに満ちている。
リード・ボーカルはマイク、ブルース、アルの順に歌われ、サビのパートをブライアンが担当。サビのメロディが72年の「ヒー・カム・ダウン」に似ている。
「ビルとスーの私生活」という架空のテレビ番組について歌われる、アコースティック・ギターとヴィブラフォンが印象的なトロピカル風の作品。
リード・ボーカルはブライアンとジェフリー・フォスケット。途中で「シャット・ダウン」の間奏で聴かれるようなサックスが挿入されている。
エンディングでは、ラジオから流れるビルとスーの死亡を伝えるニュースがアナウンスされるが、低視聴率のための自作自演ではないか、というブラック・ジョークの利いたもの。ブライアン、ジョー・トーマス、マイクの共作。
ブライアン、ジョー・トーマスの書いたフォーク調の傑作ナンバー。ラヴ・ソングであるが、ブライアンの安全な自宅について歌われており、名曲「イン・マイ・ルーム」を想起させる内容になっている。
非常に美しい旋律を持った作品で、トロンボーンやフレンチ・ホルンの柔らかなホーン・セクションも素晴らしい。リード・ボーカルはブライアン、美しいフォルセット・ボイスのパートはジェフリー・フォスケットであるが「I'll give you shelter from storm・・(君にあげよう、嵐から守ってくれる場所を・・)」のフレーズなどはブライアンにそっくりな声である。
アコースティック・ギターに混じってハープシコードも聴こえ、ブライアンらしい情緒溢れるサウンドになっている。 コントロール・ルームからメンバーへ「ディ、ディ、ディー・・・」のコーラス・パートを指示するブライアンは、かつてレコーディングを取り仕切っていた昔の彼の姿とダブって見えたそうだ。
マイク・ラヴが作った感傷的なラヴ・ソング。つぶやくようなボーカルもマイク。彼はこのようなロマンチックな作品を好んでおり、76年の「誰もが君に恋してる」にも通じるものがある。
もともと78年のマイクのソロ・アルバム『ファースト・ラヴ』に収録予定であったが、アルバム自体が未発表となった。04年に再録音したものにメンバーのバック・ボーカルをオーバー・ダビングしている。マイクの子供、クリスチャンとヘイリーもコーラスに参加している。
間奏の印象的なガット・ギターはビーチ・ボーイズのバックを務めるスコット・トッテンの演奏。
頑固な不良老人の健在ぶりを感じさせる、ちょっとロック色の強いブライアンとマイクの共作。夏、海、ビーチと、かつてのサーフィン・ソングを懐かしむような歌詞。リード・ボーカルはこういう曲にぴったりなマイク、サビではメンバーのコーラスで歌われる。
80年代っぽいオルガンが印象的。エレキ・ギターはデヴィッド・マークスとジェフ・バクスター。
オープニングのピアノの旋律は、前曲「心のビーチ」のサビと同じフレーズを奏でる。ティンパニーやカスタネット、アコーディオン、ベルの音など60年代のブライアン作品に多用されていた楽器を使っている。ストリング・アレンジも悪くない。
この曲や「過ぎゆく夏」などを聴くと判るとおり、本作には66年の傑作アルバム「ペット・サウンズ」のエッセンスが随所に
ブライアンとジョー・トーマスの共作で、リード・ボーカルはブライアン。エンディングでは波の音のような効果音が静かに聴こえる。
歌詞はブライアンの日常が描かれているが、人生を振り返るような一節もあり、深みがあるもの。この曲から「パシフィック・コースト・ハイウェイ」までが連作になっている。
アルのリード・ボーカルが素晴らしい、非常に美しい作品。後半のボーカルはブライアン。
フルートの調べやストリングス・アレンジなど、いかにもブライアンが好みそうなサウンドに仕上がっている。最後にお洒落でちょっと哀愁漂う情緒的なスキャットのパートがコーダとして登場するが、アルの口笛が小粋で心地いい。
歌詞中の「君が考えていたのは昔の僕らがやっていたこと」とは、マイクに対する皮肉なのだろうか?「パシフィック・コースト・ハイウェイへ逃げ出すのにぴったりの晴れた日」というフレーズが次曲との関連を窺わせている。
未だ衰えを知らない才気溢れるブライアンとジョー・トーマスの共作。
冒頭のアカペラは1曲目の「あの頃に..」に対比したようなメロディである。
ブライアンとジョー・トーマス共作の、太平洋に沈む夕日を人生の黄昏に重ねあわせたような味わい深い作品。「太陽が沈みゆく、言うべき事もそんなに残ってない」という
ピアノとストリングスをバックに歌われるしっとりとしたリード・ボーカルはブライアン。優しいフルートも実に美しい。
パシフィック・コースト・ハイウェイとはカリフォルニアの海岸に面して南北に通った州道1号線の事。絶好のドライブ・コースだそうだ。
過ぎ去ってしまった夏、老齢となった自分自身を見つめたブライアンとジョー・トーマス、ジョン・ボン・ジョビの作品。夏は終わった、もう行く時間だよ、でももう少しここにいようかな・・・ブライアンの見果てぬ夢とは何だったのだろうか。
オープニングに聴こえる繊細なタック・ピアノと鉄琴、静かに響くパーカッション、アコースティック・ギター、ダブル・ベース、かつての名曲「キャロライン・ノー」に通じる美しくも悲しい曲である。間奏とエンディングのオーボエやストリングスのアレンジは見事。さりげないフルートとヴィブラフォンもいい味わいだ。 「Na,Na,Na,Na・・」のコーラスは「フォーエヴァー」へのオマージュか。 最後は波の音でエンディングを迎えるが、雨音が別れを惜しむかのようだ。
当初このアルバムのタイトルは"Summer's Gone"であった。リード・ボーカルはブライアン、寂しいがビーチ・ボーイズの締めくくりとして相応しい内容である。ブライアンは今度はロックン・ロールっぽいのをやりたい、と言っていたそうだが、再びメンバーが集結する日はあるのだろうか?
ボーナストラック
69年のヒット・シングルでアルバム『20/20』に収録されていたブライアンとマイクの作品。2011年にメンバーによって再録音され、50周年記念プロジェクトのウォール・マート限定CDに収録されたもの。『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ』日本盤のみボーナス・トラックとして収録された。
リード・ボーカルはマイク。ディレイの効いたドラムなど、オリジナルに忠実なアレンジである。ギター・ソロはデヴィッド・マークス。「過ぎゆく夏」で迎えるエンディングは寂しすぎるから、最後はこの曲みたいに能天気なほうがいいのかも知れない。
ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神が創りしラジオ~
作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン/ジョー・トーマス/ジム・ピータリック/ラリー・ラミス
ダッシュボードのカー・ラジオから
最新のロック・スターの曲が流れると
7時のクルージングに出かけよう
ボタンを押せば天国さ
車の中では遠い思い出が蘇る
神様はラジオを創ったんだ
どこに行くにもチューニングして
主は手を振りロックンロールを与えてくれる
まるで恋におちる時のサウンドトラックさ
だから神様はラジオを創ったんだ
音楽に耳を傾けて
気持ちよくさせる曲を探すんだ
アンテナを張ればそこは楽園
君のシグナルを受信するよ
まるで祈りのように
神様はラジオを創ったんだ
どこに行くにもチューニングして
主は手を振りロックンロールを与えてくれる
まるで恋におちる時のサウンドトラックさ
だから神様はラジオを創ったんだ
今夜、皆でお祝いしよう
愛と太陽の光を広めよう
若い世代へ
だから神様は
だから神様は
だから神様はラジオを創ったんだ
恋におちるため
だから神様はラジオを創ったんだ
今夜のために
対訳:管理人
パシフィック・コースト・ハイウェイ
作曲・作詞:ブライアン・ウィルソン/ジョー・トーマス
時々悟るんだ
僕も随分歳をとったと
時々悟るんだ
進むべき時が来たと
家に帰りたいよ
太陽が沈みゆく
言うべき事もそんなに残ってない
僕の人生
ひとりぼっちの方がいい
僕の人生
僕はひとりの方があっている
パシフィック・コーストからハイウェイへ抜ける頃
日が沈みゆく
さよなら
対訳:管理人
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